本日は「仮想泥棒ゲーム」の公開開始からちょうど1年なのですが、そのネタは昨日書いたので、違うことを。
先日「昔のミステリー小説」で書いたことの続きです。読み始めてストーリーがダメっぽいなと感じましたが、最後まで読んでもやっぱりダメでした。メインのトリックは「電話によるアリバイ」です。ある事件の犯人が、現場から遠く離れたところにいる人(Aさんとします)と電話をするのですが、その際にあるトリックを使って「実はすぐ近くから電話しているので、Aさんの様子が見えている」かのように会話します。「今、あなたは○○していますね」「××色の服を着ていますね」などという感じ。それをもって現場にいない「鉄壁のアリバイ」などと主張するのですが…
このアリバイはAさんのみが証言者です。そして電話の内容が録音されていたわけでもありません。あくまでも「Aさんの記憶」に基づく証言なのです。これでは現場不在証明としては、あまりにも弱すぎるのではないでしょうか。一応「物的証拠」があるにはあります。現場付近からAさんの近くへ移動したときに使ったという「指紋の付いたチケット」です。ところがそれが出てくるのが片道のみ。そしてチケットを使って乗ったという交通機関で、犯人を目撃したという人がいません。こんな弱いアリバイを偽造して無罪が主張できると思ったんでしょうか(犯人が、というよりは作者が)。
もちろん、刑事はその電話トリックを見破ります。すると犯人は、物証がないのになぜか犯行を自白してしまいます! 読んでてガッカリしました。さすがに作者もそれでは弱いと思ったのか、後で別の証言者(犯人が現場近くにいたのを知っている人)を出してくるのですが、それもやはり「証言のみ」で物証なしです。そもそも、電話をかけた場所がわかってるのなら局の記録を調べればわかるはずで、トリックを解く必要すらありません。こんな作品でも昔は売れたんだなあ、と思うと隔世の感があります。