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松本清張「犯罪の回想」

ドラマの再放送をやっていたので、録画して見ました。俳優・女優陣の演技はどうでもいいので(笑)評価しません。ストーリーも、さすが松本清張ということで文句は付けません。ただ、気になるのは架空の地名である「北浦市」の位置です。市長や市議が犯罪に絡んでくるので、架空の地名を使うのは当然でしょう。ただ、それはどこにあるという設定なのか? そこの市長は「港湾拡張計画」を進めていて、その予算陳情のために東京へ行くのですが…

ドラマではもちろんその位置がはっきりとは示されませんでしたが、原作では以下の記述があります。「(前略)北海道の南西部にある。南部は太平洋に面しているが(以下略)」。これを読んで、地理に詳しい方なら、次のように想像するに違いありません。「北海道の南西部といえば、渡島(おしま)半島を指す。南部が太平洋に面しているとなるとその先端部、つまり函館や木古内、松前の辺りのはず……」。ところが読み進めると「札幌市から出ている支線に乗って、約一時間半かかる」とあります。そこで「あれれ」となるわけです。

札幌からJR北海道の特急で1時間半のところにあるのは室蘭です。確かに札幌から見てほぼ南西(より正確には南南西)の方角ですし、北海道の中心(へそ)と言われる富良野から見るとやはり南西です。しかし北海道の地理区分によれば、その辺りは「道央」と呼ばれる地域です。加えて先に書いたとおり「北海道の南西部といえば、渡島半島」なのですから、室蘭を南西部と表現すると、少なくとも道民は戸惑うでしょう。ではどう表現するのかというと「道央胆振(いぶり)地区」が正しい。しかし胆振という地名は本州の人にはそれほど馴染みがないでしょうから、もっと簡単に言いたければ「中南部」あるいは「札幌から南へ百キロのところにあって」くらいでしょうか。

ところが、さらに読み進めると「六十キロばかり離れた栗山」とか「百キロ近く離れた様似(さまに)」などとあるのですね。栗山は札幌と夕張の間にあって、室蘭から100キロもあります。様似からだと200キロ近い。じゃあ北浦市があるのは室蘭付近じゃなかった! ではこの二つの距離に該当するところはどこかというと、むかわ町(の沿岸部)がそれに当たります。室蘭よりずっと東、苫小牧よりもさらに東にあって、室蘭からは100キロも離れてます。札幌から見ると南東です。むかわ町も「道央胆振地区」ですが、その一番東に当たります。そこを北海道南西部というのはさすがにおかしい。清張先生は地方を舞台にした小説をたくさん書いてらっしゃったのに、なぜにこんな表現をしたのか。さっぱりわかりません…

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