• 詩・童話・その他
  • 異世界ファンタジー

web小説に慣れない人間が異世界物を書こうとして


 異世界物は苦手ジャンルなのですが、やはり流行にはサーフィンしておいた方が良いと思って、非公開でちまちまと異世界物を書き進めています。しかし、苦手ジャンル克服のためといって書いた前回の異世界物がコズミックホラーになったように、今回もハイファンタジーとは到底言えないような、SFファンタジー日常物のような何かに成り果ててしまいました。

 異世界ジャンルというのは、いろいろな考察レビューを見る限り、現実で上手くいっていない人たちが現実逃避するためのジャンルであるようです。とても強い主人公がストレスレスな世界を生きる様子に自己投影する、というのが異世界ジャンルの楽しみ方だとも聞きました。

 私も現実逃避をしたいと思うことはあり、その逃避先は創作物であることも多いですが、自己投影型ではありません。むしろ、自分の存在を消し去ることによって逃避しているので、作品を書くにあたって自分に似たキャラクターを主人公にすることはできないようです。そもそも私と似たような人たちは異世界ジャンルを見ないような気がしますし、私に似たキャラクターの需要はないと思われますが。

 したがって、最もスタンダードな異世界物を私は書けません。よくあるらしい、「自分に似た不遇の身の主人公が、辛く厳しく煩わしい今の社会から抜け出した異世界という新たな環境で、秘められた才能を開花させ、多くの人から羨望の眼差しを向けられて、好みの人間に一途に好かれて、困難の無い人生を歩んでいく」という話を書けないわけです。

 好みの問題もありますが、やたらめたらと恋愛感情を向けられるのは気味が悪いです。世界一になって誰からももてはやされるよりは、親友とたわいもない話をする方が快いでしょう。優れていて人好きのする人間より、傲慢でもネガティブでも可哀想でも、どれだけ他人より劣っていようと、自分が魅力的だと思う人の日常の方が価値があると思います。
 ちやほやされて、ふふんと言っているような作品を好む気持ちも分かりますが、私個人の好みでは、夜中に死体を隠しに行くような作品も良いと感じます。そういう作品こそわざわざ自分で書いてみたいと思うわけです。

 つまり、私の思う理想は、世間の、というよりは異世界物を読む層の理想とずれているようなのです。だから、異世界物のテンプレートに沿おうとしても大幅に脱線していき、流行に乗ったつもりで滑っているのだと思います。

 それでも、異世界物を書きたいな、という思いは変わりません。この機会を逃せばきっともう手を出さないでしょうから。今のうちに我が物にしてやろうという意気込みだけで頑張っています。

 しかし、ふと息を吐いた時に思うことがあります。異世界物でランキングに乗るような方々は、一体どういう考えで、何をモチベーションにして異世界物を書いているのでしょうか。プロットだの、整合性だのを考えて異世界を構築しながら、そんなことを考える日々です。

コメント

コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する