第六章 第11話 ザイ・コウガン最後の矜持
ルシフィス外伝 暗黒神に仕えし魄 -サーティーン 更新しました。 https://kakuyomu.jp/works/16818622176604887905/episodes/16818792435580284231
おしえてエリックさん
~作者救出編:降臨、真っ黒な創造主~
――こうして、
作者救出作戦は、無事なのか失敗なのか分からないまま、泉の女神から授かった「真っ黒な塊(作者?)」を手に入れて暗礁に乗り上げたかのように見えた。
が。
ぽん吉
「……というかやな」
真っ黒な塊を指差す。
ぽん吉
「こんなメタい話考えとる暇があるなら、番組の企画、一個でも考えろやこの無能作者!!」
――その瞬間。
ボキッという、嫌な音がした。
ぽん吉
「……え?」
次の瞬間、真っ黒な塊の頭部がもげた。
そして――弾丸のような速さで、ぽん吉の尻尾にガッチリと噛みついた。
ぽん吉
「ぎゃああああああああ!! 痛い痛い! これ絶対呪われるやつや!!」
エリック
「うわっ! 取れた! 頭取れましたよ! エグい取れ方しましたって!!」
ぽん吉が尻尾をブンブンと振り回すが、頭は離れない。
その間にも――残された身体が、むくむくと巨大化していく。
それは鹿のようでもあり、人のようでもある、異様なデイダラボッチの姿へと変貌した。
触れた木々は枯れ、泉は濁り、周囲の生命エネルギーが吸い取られていく。
エリック
「まさかあれは、鹿神? ぽん吉! だからいつも言ってるじゃないですか! 余計な事を言うなって!」
ぽん吉
「そないな事言うけど、まさか泉の女神様が、鹿神そのもの渡してくるなんて思わんやろ!!」
逃げる二人。背後では、失った頭を探して彷徨う、デイダラボッチが街を飲み込もうとしている。
ぽん吉
「ヤバいヤバいヤバい!」
エリック
「この物語、どうやったら終わるんですか!?」
ぽん吉
「たしか元ネタは……頭返したら一件落着や! たぶん!」
エリック
「じゃあ返しましょう!」
ぽん吉
「いや! あくまで話や! 実際どうなるか分からんで!!」
二人は命からがら、黄泉の街へと逃げ込んだ。
だが、鹿神の闇は止まらない。街の建物すらもスライム状の闇が侵食し始める。
二人が第五裁判所前へ転がり込んだ、その時。
雅閻魔大王
「……なんじゃ、この騒がしさは」
地響きのような重々しい声。二人は同時に振り返り、縋り付いた。
エリック&ぽん吉
「説明しますから助けてくださーーーい!!」
アタフタと状況を報告し、ぽん吉の尻尾に噛み付いたままの「頭」を差し出す。
雅閻魔大王は、眉をひそめてその頭をひょいと持ち上げた。
雅閻魔大王
(……ほう。書くことに疲れ、創造の苦しみに飲み込まれて荒ぶったか。難儀な奴よの)
大王だけは、その神々しくも禍々しい姿の正体が「作者の精神の具現」であることを察していた。
大王は静かに、厳かに、迫りくる巨大な闇へと頭を掲げる。
雅閻魔大王
「鹿神よ――いや、物語を紡ぐ迷い子よ。頭を返します。どうか、静まりたまえ」
次の瞬間。
鹿神の巨大な身体が、濁流のような勢いで雅閻魔大王の手元へと収束していく。
エリック
「ひぃっ!! 飲み込まれる!!」
ぽん吉
「ケツ向けとったら助かる気がする! 大王様あとは頼んだ!!」
光と闇が混ざり合い、激しい風が吹き抜ける。
そして――。
……沈黙。
エリック
「……あれ? 静かになった?」
二人が恐る恐る目を開けると、街は元通りだった。
そこには、空の彼方へ消えていく透明な鹿の影を見送る、雅閻魔大王の背中があった。
雅閻魔大王
「ふむ。心配しすぎなのじゃ、お主らは」
ぽん吉
「いやいや死ぬかと思いましたわ……。結局、あの鹿みたいなバケモノは何やったんです?」
大王は答えず、空からひらりと舞い降りてきた一枚の紙を指差した。
ぽん吉がそれを拾い上げる。
ぽん吉
「……なんやこれ。『おしえてエリックさん、新番組構想(仮)』?」
エリック
「……えっ。じゃあ、あの恐ろしい神様が、これを落としていったんですか?」
ぽん吉
「……待て。あんな化け物が……まさか、ワイらが探してた『作者』の正体……?」
想像してゾッとする二人。
あんな得体の知れない存在に、自分たちは「無能」だの「働け」だの罵声を浴びせていたのだ。
雅閻魔大王
「くくく。正体など、どうでもよいではないか。やるべき事はやっておるようじゃしな」
大王は満足そうに頷き、再び空を見上げる。
雅閻魔大王
「じゃが作者よ。たとえ神の姿を借りようとも、裁判所清掃100年刑は免除せんからな」
空から、どことなく
「マジですか……」
と絶望するような風が、寂しく吹き抜けた。
ぽん吉
「……これから、どーしよ。作者があんなバケモノやったら、もう強く言われへんぞ」
エリック
「……とりあえず、その企画書……読んでみます?」
二人は顔を見合わせ、頼りない足取りで会社へと戻っていく。
風だけが、新番組の始まりを予感させるように吹き抜けていった。
――完?