今の家での出来事ではなく、実家に住んでいたときの話。
小学生のとき、両親への寝室や洗濯物(着替え等)が置いてある部屋へ行くのに通らなければいけない部屋が自室だった。
そのため、姉や両親が通ることは多々ある。
小学生は寝る時間が早い。姉と5つ以上離れているので一番早く寝ていた。
実家は古く、当時で築半世紀は軽く超えていて、ドアも静かに開けても軋む音が必ずするし、床も歩けば音がする。
布団の中で私は寝ようと目を瞑ってはいたがなかなか眠れない日だった。
突然、布団の中にある足を掴まれた。
驚きはしたが、どうせ姉のいたずらだろう。
2段ベッドの、上だけある形状のベッドでもちろん落ちないように柵がある。しかし腕一本くらいは通る隙間は空いている。
だから、姉だと思った。
小学生の私は末っ子で、2人の姉と歳が離れている。喧嘩になっても勝てないし、無視して寝た。
翌日、あの時物音が何もしなかったことに気付く。
どう頑張っても、静かな室内でドアの開閉や歩くとなると軋む音がする。それは家族で一番幼い私が歩いても。
怖くなり、聞けなかった。昨日いたずらした?って。
今も、あれはなんだったのかわからない。
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私は高校を卒業し、立派なオタクとなっていた。
実家を出た姉が使っていた離れの部屋が私の部屋になり、今までみたいにいつ人が入ってくるかわからない部屋ではなったため、中学の頃にはやんちゃな友達の溜まり場になっていた。
ベッドも子供用ではない普通のシングルベッドを買ってもらえて、窓辺に壁とくっつける形で置いた。
枕元には推しのクッションを多数。置けるだけ置いていた。
ベッド周辺の壁には推しのポスターやタペストリーを。
カーテンをあまり閉めずに寝るため、太陽の眩しさで目を覚ます。
バイトもない休日。二度寝しようと横になりながら背伸びをし、そのまま腕を伸ばした状態で二度寝の姿勢に入った。
腕は枕元に置いたクッションの山の中。
その時、クッションの中の腕が強い力で掴まれた。
クッションの向こうは壁だ。人が入るスペースなんて無い。
しかし、推しのクッション達の中ということはつまり推しに掴まれたのかなというクソオタク思考で怖さを感じず、そのまま二度寝した。
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ニート時代だっただろうか。家に誰もいない日が多い時だった。
自営業の父が昼にご飯を食べに帰ってくるくらいで、日中は寝て過ごすか猫と遊ぶか。
室内での熱中症が今ほど危険視される時代ではなかったため、古いエアコンしかない実家では暑くてもエアコンをつけない決まりだった。
古い家の利点というべきか、風通しの良い部屋があり、そういう場所を猫が先に見つけてくれるため私もそこで寝ることにした。
まあ、風通しが良いからと言って暑くないわけはない。汗をかきながらも、扇風機で耐えていた。
場所は仏間の隣にある納戸。襖を開けている状態だから、仏間で寝ているようなものだったが会ったことはなくても先祖だし気にしていなかった。
「●●ちゃんここにおったかぁ〜」
訛り全開で、私の近くに寝ている猫に話しかける父の声が聞こえた。
娘よりも猫かよとは思ったが、動物を溺愛している父だしまあいいやと思って目も開けなかった。
その日の夜、少し気になることがあって父に話しかけた。
「今日の昼、納戸に●●探しに来た?」
「え?納戸なんて行っとらんけど」
やっぱり、違和感は当たってた。
足音があの時聞こえなかったからだ。
父の声だと思ったが、長男の父には弟(叔父)がおり、2人は声だけ聞くと娘の私ですら聞き分けできないくらい同じ声をしている。
恐らく、祖父も。
私が生まれる前に祖父は亡くなっているため、母に「おじいちゃんって、お父さんと叔父さんの声と似てた?」と聞くと流石に覚えていないようだったが。
ほんの少し前に亡くなった祖母は、猫をすごく可愛がっていていつも寝ている場所を探して寝てる姿を見て微笑んだりしていた。
祖母があの世で、祖父に猫の話をしたのかな。
祖父も、父と同じで動物が好きだったらしいからそれで探しに来ていたのかな、そう思うとすごく微笑ましかった。
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祖母が生前使っていた部屋が、エアコンがついているという点で私の部屋にしてもらえることになった。
離れはかなり昔に作られた建物のため、現在の建築法では決められている断熱材の厚さなんて関係なく、冬は室内でも外と同じ気温。夏はサウナだ。
昼過ぎまで寝ていると、夏は脱水症状寸前レベルで目が覚める。
そのため、母屋に自室を移すことにした。
その部屋は、玄関の真ん前。
とは言っても玄関よりも同じ庭に面している勝手口の方がみんな使うし来客があってもみんな勝手口を使うので、玄関の横にある仏間に用がある客か訪問販売の人しか玄関から入ってこない。
家に誰もいない日中は、自室で過ごすことが多かった。
布団あるし、パソコンあるし。
基本的にどこのドアも閉めない家だったので、廊下の先にあるリビングの物音もはっきりと聞こえる。
そのリビングから、連日コン、コン、という机にコップやマグカップを置いたときのような音がしていた。
その音が聞こえる頻度は高く、あぁまたかくらいしか感じなかった。
一度、玄関に来客用で置いてある机あたりからも同様の音が聞こえたが特に何も思わなかった。
ただ、これだけ頻度高ければ動画とかで録音できるかなと試しに動画を撮ってみた。
2分くらいしても、いつもの音は聞こえてこない。
まあそんな都合よく撮れないか。と思っていたら、自室から身を乗り出している私の背後でトーン、トーンという聞いたことのない音がし始めた。
今までは固いものを机に置くような音だったが、それはスーパーボールのようなものを床に落として遊んでいるような、そんな音だった。
それは、ずっと私の周辺から聞こえる。画面はリビングの方を向けたままだが、音が入っていればいい。
ある程度録画できたので、もういいやとまだ音がしているが動画の撮影をやめた。
撮影をやめると、少しして音も止んだ。
普通に床上での音に聞こえたが、床の下って入れるようになってたっけ……と玄関の段差のところを確認しようと移動すると、真後ろからトーーーン!と先ほどまでより格段に大きい音が真後ろから一回だけした。
それ以降、あの音は聞いていない。
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実家に帰省したとき。
ラップ音がない生活ってこんなに静かに暮らせるんだ……と安堵していた。
だが、引っ越す前までは聞いたことのない家鳴りが度々聞こえる。家鳴りだと思いたいがどう考えても家鳴りのレベルを超えたバキッ!という2回鳴った大音量のものは本当に何かが折れた音だとしたら家が壊れていると思う。
やはりついてきているのだろうか。
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姉の体験した、不思議な話
実家に住んでいる時、猫と一緒に自室でテレビを見ていた。
突然、猫が部屋の一箇所に向かって威嚇し始めたらしい。
その場所は何も無い。ただの空間。
何が見えていたのだろう。
その部屋は、私が後にオタク部屋にした部屋だ。
子供が産まれ、実家に帰ってきている時。
仏間の隣にある納戸で寝泊まりしていた。
どの窓も閉まっている。仏間との間にある襖も閉めていた。
夜中、風どころか地震も無いのにその襖だけが揺れ続けたらしい。
姉の娘(姪)が、小学校低学年のとき。
私が昔使っていた2段ベッドの上だけある形状のものを姪がお下がりとして使っていた。
夜、寝ようとしていたとき。ふと目を開けると柵の間から黒い人影がこっちをみていた。
姪はその後、姉と一緒に寝たらしい。
姉曰く、「なんか若干霊感あるっぽいんだよね……寝ぼけてただけとか夢って言って落ち着かせたけど…」とのことだ。
姪も、実家で私と同じような音が聞こえる日もあるのだろうか。