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先輩ちゃんと後輩くん(仮)

お知らせです。

新しい小説を書いては納得いかず新しい諸説の構想を探す日々なのですが、消すのが勿体なくなって来たため、とりあえず思いついた小説の1話だけ乗せてみることにします。

一応、1話は3000字程でストックが1万字ほどある作品です。ただし、タイトル、あらすじ等一切不明。  

 反応くれると有難いです。書くモチベーションに繋がるので。

本来自分は10万字まで貯めることが出来たらその作品は投稿するって来てるのですが、それが出来ずに(という書く時間が一日1時間も作れない)消えていくものがほとんどなのですが、もし希望があれば1万字の状態からでも作品の投稿しようと思ってます。


もしかしたらひとつでも反応(良くても悪くても)あれば連載するかも。

 これからこういう投稿増えそう。


それでは、どうぞ。








|世《・》|界《・》とはクソである。それがこの|1《・》|7《・》|年《・》生きてきた俺の結論だ。





 




「ねぇ、聞いてよ〜後輩くんー」

「なんすか、先輩」

「なんで私には良い彼氏が出来ないんだぉ〜」

 はぁ。またか。これで何度目の恋愛に対する愚痴だろうか。

 俺がこの女─|白川 《しらかわ》 |白愛《はくあ》のヤケ酒に付き合い初めて約2時間が経過したが、出てくる愚痴は全て恋愛に関するもの。加えてカラミ酒。だるいことこの上ない。

「ねぇ、聞いてる?後輩くーん、本ばっか読んでないでさー」

 一方で俺はそんなだる絡みに正面から向き合うことなんてなく、彼女の声をBGM代わりに本のページをめくる。

「………」

「ねぇ、ねぇってば!|黒崎《くろさき》 |黒桜《くろう》くーん」

「聞いてますよ。なので肩を揺らすのはやめてください」

「がれじぼじぃよォー!」

 今年から20歳になった彼女は現在高校三年である俺の家に上がり込んではそこら辺のスーパーで買った安酒を喉に流しては愚痴り俺の邪魔をしてくる。

 マジで警察に通報してやろうかな?

「はーぁ、みんなさー、なーんであんなに幸せそうなんだろうね………」

「………どうしてでしょうね…」

「どっかにいい男落ちてないかなぁ…」


 別にこの人は見た目が悪い訳では無い。むしろトップレベルの方だ。今は酒を飲んでこんな感じだが、しっかりしてる時はとても目を引く容姿をしている。もちろん、いい意味で。

 艶のある銀髪は長く伸ばされているが、普段からしっかり手入れを行っているからか傷や枝毛なんて見つからない。肌もシミ一つない真っ白でツヤとハリがある。顔のパーツも凄く整っていて、10人が見れば10人が美人だと言うだろう。

 実際に彼女は高校生の頃では学校での人気は3年間で常に1番だったし、先日行われた大学のミスコンでは見事1位に輝いたらしい。

 じゃあ、性格が悪いのか?って言われるとそうではない。少なくとも高校の頃はクラスの中心人物だったし、明るい感じで世間で言うところの陽キャ。少し周りから頼られがちだが、その頼みに対して全て向き合うという割と聖人。

 こうして彼女が不良だとかヤンキーだとか学校一の嫌われ者だとか言われてる俺にも構っているのが何よりの証拠だ。

 ……最も今のこの姿を見ては誰もそうは思わないだろうけど。

 ただもし、この人の欠点をあげるとするなら……

「はぁー、彼氏欲しいー、恋愛したーい、幸せになりたーい」

 そもそも俺にとっては彼氏がいることで、恋愛することで幸せになれるとは思わないがな。

「じゃあ、彼氏作ったらいいじゃないですか。どうせ大学でも腐るほどにそういう声、かかってるんでしょ」

「そうだけどさぁー、どうせわかってるんでしょ、後輩くんも」

 あぁ、分かってる。もし、彼女の最も大きな欠点をあげるとするならば………





圧倒的な男運の無さだ。

 実は彼女には過去に3人ほど付き合っていた人がいた…。

 1人目、つまり彼女の初彼氏は同じ学年の人気者だった。俺も見たことはあるが、見た感じは彼女とは違うタイプのクラスの中心人物。どちらかと言えば彼女はクラスを活発にさせる触媒。初彼氏はクラスの意見をまとめるような学級委員的な立場だった。

 だが、そんな彼氏の目的はこの女の体だった。しかし、いつまでもヤラセて貰えない彼氏くんはキレ初めて友達を使ったり噂を流したりで彼女を自分に依存させようとした。はい、クズ野郎確定。

 まぁ、その後なんやかんやあってその彼氏くんと別れた。ちなみに彼女と俺が交友を深め始めたのもこの頃だ。

 2人目は大学生になった頃で年上(27)のバンドマンだった。何となくわかるのではないだろうか?そう。彼女は高度なヒモにされていた。うちの高校は大学の附属で、希望があればそのままその大学に進学できる。先輩もその進学組の1人で久しぶりに会った時には驚いたもんだ。見事なヒモに引っかかり、「この人には私しかいないの」みたいなセリフを吐いていた。思いっきり頭ぶっ叩いた。

 そして三人目。つい先日まで付き合っていた先輩より年上の元彼である。コイツはDV野郎だ。今も彼女の体にはソイツにつけられたアザが残っている。なんならビールを持つ右手首には強く握られたのか真っ白な肌には似合わない青い手型のアザがが見える。


 な?男運ないだろう。だからといって人を見る目までないのかと言われるとそうでは無い。本当に何故かは分からないが、人を見る目は確かで彼女は友人に恵まれてる。

 高校生までになるとクラスでもグループが出来始めたりメリットデメリットで友人付き合いを始める頃である。この女の場合、見た目はいいから男は寄ってきやすいし利用価値はあるが、多くの男に惚れられるから恨まれたりしそうなのだが彼女の友人はそういうことを考えない人が多い。

 もちろん、俺は後輩なのでその友人の枠には入ってない。

 まぁ、彼女の男運のなさの原因は色々あって理由を話すのが長いやつから短いものまで様々だ。


「幸せになりたいだけなんだけどなぁ………」


 ペラリとまた、ページを捲っては活字を目から読み込む。

「……ヒヒ……後輩くんはさぁ、|恋《・》|ら《・》|い《・》とか興味|ら《・》いの?」

 先輩はかなり酔いが回り始めたのか、呂律が怪しくなり始め、奇妙な笑い声を上げ始めた。

「……はぁ。興味無いですよ。先輩だって知ってるでしょ、俺のこと」

「ヒヒ…そうらったそうらった」

 またも彼女は奇妙な笑い声を上げて満足そうに頷く。そんなに他人の不幸が嬉しいのか…。まじでぶん殴ってやろうか。

 まぁ、そんな俺だから彼女は今も友人ではなく、俺を選んで飲んでいるのだろう。
 

 しばらくすると彼女の癇癪も終わりを見せ始めた。俺もそれに合わせてテーブルに散らかったゴミを片付ける。もちろん俺一人で。ダメ女はただ俺の布団で「うーん頭いたーい」とうなされ始めていた。

 こうなったらこの先輩は絶対に帰らない。過去の経験上叩き起すことに成功した試しがない。そのうち叩き起すこともめんどくさくなり、諦めた。

「おら、先輩起きろ。寝るならせめてメイクだけでも落とせ」

 いくら先輩が美人だと言えども大学生にもなるとメイクはする。メイクのまま寝ると肌に悪い影響を起こしてしまう。

 先輩も本能のうちではこのまま寝る訳には行かないということがわかっていたのかゆっくりと起き上がって洗面所に向かう。

 もちろんフラフラだったので俺が肩を支えながらだ。

 何とかクレンジングに成功したらそのままベッドに先輩は倒れ込んだ。

 はぁ。今日もやっぱソファで寝ることになりそうだ。だから俺はこの人を家に入れるのは嫌いなんだ。

「ねぇ、後輩くん…」

「なんすか、ダメ先輩」

「ヒヒ……後輩くんはさぁ、いい恋愛しなよ?





こんなダメな女に引っかかったらダメだよ?」




 それを皮切りに部屋にはひとつの寝息がひびき始めた。力尽きたようにだらんとベットからはみ出ている右手をベットの上に戻して布団をかける。


 俺はタオルケットだけ手に取ると部屋を出た。

 結局俺は何も言わなかった。

2件のコメント

  • NICE
  • 北風様の!お話しも!待ってますから!
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