物語を考えるとは、つまり「トンネルをつくる」ということだ。
目の前にある山を掘り、その先に見える景色を求めてどこまでも掘り続ける。
決して途中でやめてはいけない。
それではトンネルとは言えない。
あなたが山を掘っている時、なにやらおもしろそうだ、と後ろからついてくる人が現れるかもしれない。
その人はあなたが山を掘りきった先に見える景色に胸をおどらせ、楽しみにしているのであろう。
決して途中で投げ出してはいけない。
もしかしたら、山を掘った先にあるその景色は大したことないかもしれない、期待していたほど良いものじゃないかもしれない。
それでも、あなたは掘り続けなければならない。
あなたの手が止まれば、ついてきていた人は残念そうに引き返すだろう。わくわくしていた気持ちが一瞬でしぼんでしまうのだ。
あなたが山を掘り続けていても、道中で引き返す人も出てくるかもしれない。
「なんか大した景色見れなそうだな」
そんなことを考えて、あなたの元を去るかもしれない。
それでも、あなたは掘り続けなければならない。
道中多くの人があなたを見放しても、たとえ初めから誰もついてきてくれなくても、あなたは山を最後まで掘り続け、その先にある景色をその目にいれなくてはならない。
どんな景色であれ、あなたが立派にトンネルを開通させたとき、その経験はあなたの大きな財産になる。きっと次につくるトンネルはあなたをさらに素晴らしい景色に巡りあわせてくれる。
また、いつか誰かが、あなたのつくったそのトンネルの入り口を訪れ、その先に見える光を目指し、一歩を踏み出してくれるかもしれない、その景色に感動して新たな人を呼び寄せてくれるかもしれない。
だからあなたは最後まであきらめず、山を掘らなければならない。トンネルを完成させなければならない。
つまりは何が言いたいのか。
それはどんなことがあろうと、物語を最後まで完成させなければいけないということだ。途中で途切れてしまってはいけないのだ。たとえ、はじめとは大きく違う道筋をたどることになったとしても、物語を完結させなければならないのだ。とにかく最後まで書き上げることに大きな意味があるのだ。
私は今、新たな物語を書こうとしている。私は決してこの物語を途中で投げ出したりしない。なにがあろうと、必ずや結末まで書ききってやろうと思っている。
これは自分への戒めだ。自分との誓いだ。
私は必ずこの物語を完成させるのだ。