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補足



シモキタ怪譚《フェアリーテイル》作者の井上周太と申します。
この度は私の稚拙な文を毎日のように読んでくださる皆様に感謝の言葉を申し上げます。

シモキタ怪異奇譚は第二十二話にて第一章が終了予定となります。
続けて第二章も時を空けずに投稿いたしますのでこれからも何卒よろしくお願いいたします。

さて、今回は何点か補足したいことがありましてこのような場を設けさせていただきました。

本作の幼馴染ヒロインである櫛田ナガメ……櫛名田比売《クシナダヒメ》の正体が何故、八俣遠呂智《ヤマタノオロチ》であるか。しかも伝説にあるような頭が八つの大蛇ではなくただの一対の大蛇なのか。

日本神話にお詳しい皆様であれば困惑されたことでしょう。

それを説明する前に、このシモキタ怪異奇譚における神の扱いがどういうものなのかを説明させていただきます。
本作における神とは自然事象の具現化、或いは神格化されるほどの功績を残した人間が存在している、という設定です。

例えば素戔嗚尊《スサノオノミコト》は須佐彦《すさひこ》という帝の落胤、そして坂上田村麻呂の部下である荒武者が神格化された、という設定になります。(実際に田村麻呂や中国の関羽なんかは神様に祀りあげられていますよね)

八俣遠呂智は一説には水害を起こす暴れ川を治水した歴史が元となっているとされていますが、本編でも語られたように大和政権による出雲地方の独自国家・政権の征服が元となった説もあります。

本作は後者の説を取り上げており、八俣遠呂智とは八つの頭を持っているのではなく、出雲にいた数多くの王族・豪族たちの総称であり、大蛇に姿を変えられる妖怪たちであった……と解釈しました。

元々八俣遠呂智の“八”とは『数が多い』ことを意味する数字・言葉です。(“八”百万の神とか“八”重“、八”雲と言いますよね)

つまり実際に八つの頭を持っていたわけではないということです。
一般的な八俣遠呂智の想像図は名前のインパクトから誇張されて表現された、というのが本作の世界設定です。

この設定は主人公である八束脛《ヤツカハギ》、八塚繋《やつかけい》にも当てはまります。
土蜘蛛《つちぐも》、八束脛もまた大和政権によって滅ぼされた地方豪族、穴式住居に住む民族の総称でした。

実際に坂上田村麻呂が八束脛を討伐したという伝説は日本中に存在します。 
田村麻呂と八束彦が並々ならぬ関係であることはこれが元ネタです。

他にも、出雲の八俣遠呂智と八束脛に共通することとしてどちらも鉄などの鉱物資源を占有していた、大和政権とは別の王族・豪族なのではないかという説があり、調べるごとに伝承の裏側が透けて見えてきます。

古代における征服戦争の正統性を臣民に伝えるために編纂されたものこそが、今日における古事記・日本書紀の日本神話である、というのが本作の下地です。

結論として、櫛名田比売は大和政権の命を受けた田村麻呂と須佐彦《素戔嗚尊》によって略奪された出雲の王族、または土豪の姫君であり大蛇に変身できる妖怪の一族であった、というのがこれまでの補足となります。


カクヨムでは4/8の深夜0時に第二十一話が公開されます。
感想やご意見を楽しみにしておりますので、何卒これからも応援よろしくお願いいたします。

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