• エッセイ・ノンフィクション
  • 歴史・時代・伝奇

第七回自主企画

本日、7回目の自主企画を立てさせていただきます。
テーマは「思いがけない出会い」を教えて

今回は前半部分を麒麟屋が書かせていただきます。
それの続きであなたの「思いがけない出会い」を教えてください。前半部分は2種類で、この近況ノートの下の部分に置いておきます。

お好きな方を選んで、どちらか(A、あるいはB)であるか明記ください。
できればこれを1ページ目にして、2ページ目から書いてもらえるとありがたいです。勿論前半部分のアレンジOKで、全体的に短編程度の長さでお願いします。

ご参加頂きましたものは、必ず読ませて頂き、『麒麟屋さんの自主企画の本棚』で紹介させていただきます。

またこちらの近況ノートの方には、進捗状況なども記載します。
もしせっかく書いたけど、自主企画期間に間に合いそうにないという場合もお知らせください。

禁止事項は過度なエログロです。
エログロのあるものに関しては、飛ばさせた頂きます。(直接的な性描写など)

宜しくお願いします。




2件のコメント

  • A(前半部分)


     ミーン、ミン、ミン、ミィ

    蝉の声が、太陽の光と共に窓から入ってきている。蝉の声が暑さをさらにかき立てていると言っても過言ではない。

    「アチィな、おい……」

    私はTシャツの襟元を掴んでバサバサと空気をいれつつ、窓の外に文句を言った。
    本来エアコンをつけるべきなのだろうが、ここは節約、節約……

    いや、エアコンをつけなくたって、大した節約になるわけでもない。むしろ熱中症で倒れてしまう危険だってある。

    もはや気持ちの問題だ。
    というのも、私には夢があって、貯金をしている。それが目標額にあとちょっと!なのだ。
    あとちょっとだと思うと、少しでも早く達成したいという気持ちになってしまう。

    「しかし、アチィよなぁ……」

    せめて、水分補給はしっかりしようと、私は立ち上がった。
    その途端、何かに足を滑らせたのか、それとも無駄に我慢をしたのが悪かったのか、クラリと世界が回って視界が暗転した。

    「おい!おい!大丈夫か?」

    誰かが私の肩を持って揺さぶっている。
    「う、う……ん?」
    私が目を開くと、目の前に人の顔があった。

    「え?え!嘘だろう?!」
    私は叫んで思わず起き上がった。
  • B(前半部分)


     遠くで雷が鳴った。

    「梅雨の雷《らい》や。もう梅雨明けやろか……」

    簾《みす》を手の甲で軽く持ち上げると、水の香りのする風が、生温く淀んでいた部屋に吹き込んできた。
    外は厚い灰色の雲が紅に染まる夕焼けを隠して、急速に明るさを失い始めていた。

    「一雨来たら涼しうなるな。」
    そんな呟きが聞こえたように、じきに庭の土に雨粒が落ちる音が聞こえてきた。
    それと共に、雷の音が近づいてくる。
    「いやぁ、暗なった後の雷さん、恐ろしな。」

    側に置かれていた薄い紅色の衣を手繰り寄せると、あの人の香の淡い香りが立った。

    「今日の雨は虎が雨や。一晩中、大雨が降って、雷さんが鳴るんやろな。」

    そう、今日は5月28日(旧暦)、曽我兄弟の敵討の日。
    今は昔、夜半も過ぎて大雨と雷の鳴る中、工藤祐経の泊まる宿に曽我兄弟が討ち入り、本懐を遂げた後、討たれて亡くなった。
    それを聞いた、兄曽我十郎祐成の愛人虎御前は酷く哀しみ泣き濡れた。
    それから、この日はよく雨が降る。
    この日の雨は十郎の死を悼んで流す虎御前の涙雨、虎が雨と呼ぶ。

    「愛しい人を想うて、一晩中、泣き濡れる涙雨の日や。」
    私は薄闇の中で泣き濡れる、何人もの虎御前を思って、重いため息をついた。

    「いいや、夕立ちやよって、じきに通り過ぎてゆかはりましょ。」
    柔らかな笑いを含んだ掠れた声が、戸口のほうでした。
    振り返ると無彩色の薄闇のなかで、白い顔が笑っていた。手に持った燭台が、蜜柑色の小さな光を作っていた。

コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する