本日、留加事変は無事に完結いたしました。
40話という節目で完成させることが出来ましたのも、皆様の応援のおかげです。読者の皆様、誠にありがとうございました。今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。
緊急事態の発生を契機に、社会全体が緊急事態下での日常生活に合わせて変貌を遂げる。そうした中で、人々と日常がどのように変貌を遂げるのか。
自然災害、または政治による”人災”で多くの命が、いつ奪われるか分からない現代世界。先行きの見えない不安の中で、実母を失い、冷笑的になっていた青年がどのように生きる力を回復していくのか。
人間の希望と絶望は紙一重であり、何かのきっかけで、回復はしないまでも再び歩き出す。そんなメッセージを伝えたいと思い筆を執りました。
また当初は、日中戦争での社会情勢、3・11(東日本大震災)の経験をもとに書くつもりでした(タイトルが「留加事変」なのは日中戦争の影響です)が、2020年のコロナ禍に見舞われた人々や社会の動きを克明に反映させたいと思い、報道番組やNHKの緊急速報を丹念に記録して、描写した部分がいくつかあります。
最後に、この混乱が一刻も早く収束し、読者の皆様が日常を取り戻すことができますことを(あるいはコロナ前よりも、よりよい日常を手にすることができますことを)お祈り申し上げます。
《執筆にあたって参考にした文献》
雨宮昭一『戦時戦後体制論』(岩波書店、1997年)
江口圭一『十五年戦争小史』(青木書店 1991年)
笠原十九司『日中戦争全史 上・下』(高文研、2017年)
笠原十九司『南京事件』(岩波新書、1997年)
丸山真男『忠誠と反逆』(ちくま学芸文庫、1998年)
山之内靖(著)伊豫谷登士翁・成田龍一・岩崎稔(編)『総力戦体制』(ちくま学芸文庫、2015年)
*また劇中では、丸山真男「思想史の考え方について」『忠誠と反逆』465頁を引用させていただいた。
2020年6月2日
居木井丈晴