上條 一音

「よろしければ頂きたいです。貴方の初めてを」　その雨の日、私は常連客であるマスミさんの初めてを１万円で買った。

私は、旅行鞄を手に意気揚々と家を出る。人生の門出に相応しい、素晴らしく晴れ渡った日の事だった。そうしてあの人の〝元〟妻になった私は、あの人を観察し始めたのだった。

異質な髪を持つカヤは、今まさに売られようとしていたところを、国を治める美しい神官・翠様に救われる。 しかし、翠様には決して知られてはならない秘密があった――。 それぞれの立場と…

滝沢は、少しだけ顔を傾けて私にキスをした。私は息を止めながら二人のキスシーンを見つめる。切なさと静けさを具現化したようなキスだった。そして私は、とても、本当にとても、悲しくなった…

ヒロの手は私を撫で続けている。時計は進み続ける。ヒロの睫毛から、透明の雫が一粒滴っている。ヒロの唇がゆっくりと開く。

"この恋は圧倒的に不利だ"――今日もまた「幼馴染 兼 同僚 兼 片思いの相手」に、思いを馳せるだけ。