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一旦据置

「いったんすえおき」って漢字熟語にすると厳ついですねえ。
さて、こんな夜分に失礼致します。今回お伝えするネタは――こちら!

『いもうと、キミにきめたッ!』大規模推敲開始!

いや、未完結なんですけどね、これ(笑)
あとはラスボス倒して、ちょっとしたドラマ(と呼ばれる寸劇)を描いて終了。

せっかくなんだから完結まで書いてから、新しいフォーマットで書き直せば……。
おっしゃる通り。
ですが立ち止まってもいられないのです。あんなネタやこんなネタがポンポン浮かんでくる状態では。

だってつまんないじゃないですか、この話(汗)。
逆に言えば、まだまだ改善の余地が見られ、しかもその具体案まで相当数上がってきているということなのです。

そりゃあ書き直したくもなりますよ。それこそ、こんな夜中でもね。
というわけで、ページごとの文字数バランスは崩れますが、よりよいモノとして提供させていただきたく存じます。

誰に許可を取られるものでもないですが、わたくしめの我儘、どうぞお聞き入れくださいませ<(_ _)>

なお、登場人物と大まかなストーリー展開には変更ありません。
最初にこの拙作をご覧くださった皆様、お目汚し大変失礼致しました。

7件のコメント

  •  お久しぶりです、あじさいです。

     とりあえず、第4話までは読ませていただきました。第5話も一応目を通しはしたのですが、内容については吟味できていません。
     岩井さん自身が問題を感じていらっしゃるとのことなので、細かい話はしなくていいと思いますが、全体的な印象の話をさせていただきますと、たしかにこれはあまり良くないですね。同じ現代日本が舞台で、主要人物がティーンエイジャーの作品でも、『ガールズ・カルテット!+俺』はもっと面白かったと思います。岩井さん、精神的に病んでいらっしゃるのでしょうか。人間は負の感情があるとパフォーマンス全般が下がるらしいですが、技術的にも数段下がった印象を受けます。

     以前、おそらく『She Loves You…Absolutly』についてお話させていただいたと思いますが、純文学で自己満足を目指すのでないなら、小説とはエンタメ性を追求しているはずで、エンタメ小説であるからには、それぞれの場面や描写で読者がどんな印象を受けるかということを意識していただかなくてはなりません。そうでなれば、読者にとってただ退屈なだけの文章になるんです。情景にも展開にも読者の興味を引く部分がなく、主人公の魅力はおろか人柄さえも一切描かれず、作品としての方向性や課題も見えてこない。そして、1ページも終わらない内に主人公が寝て、起きて、にもかかわらず何も状況が変わった感じがしない。スマホに電話がかかってきたシーンから始めた方が良かったんじゃないかとか、電話のシーンも地の文で軽く説明すればそれで済んだはずだから、外出中に声をかけられたところから描けばそれでいいんじゃないかとか、色々考えてしまいますが、僕が岩井さんに申し上げたいことは要するに、冒頭のシーンの大部分が無意味であり、読者にとっては退屈な読書経験を強いられるだけではないかということです。
     なぜこんなことになっているかという話ですが、もしかして岩井さん、漫画やアニメ、もっと言えば映画の冒頭シーンをイメージしながら本作の冒頭をお書きになったのではないでしょうか。小説や意味の観点からではなく、映像やコマの観点から何かを積み上げようとしているような印象を受けます。さらに言えば、僕が第4話まで読んだ感覚としては、形式上は一人称の地の文なのに、着眼点や情報提示は三人称の地の文なんですよね。主人公による一人称の地の文なんですから、主人公が意識していないことについて、下手に客観的なことは書かなくていいし、書かない方がいいんです。読者に状況を伝えるためにそれが必要だと判断したにしても、それを書くなら主人公の目、主人公の耳、主人公の思考回路で書いてほしいです。そうでないと、主人公がただの設定、そして、設定を説明するためのスイッチに成り下がってしまいます。
     主人公の意識が窓の外の景色にあるなら、まずはそこから話を始めるべきだと思います。何を考えるともなく窓の外を眺めて、クリーム色の家があるとか、赤い屋根が目を引くとか、毒々しい紫色で点滅するネオンに胃がムカつくとか……。景色に飽きて自室に目を移すと、カバーのアニソンを流しっぱなしにしたパソコンがあって、クーラーをガンガンに効かせた部屋の中でブランケットにくるまる自分がいて……。とはいえ、これだけでは読者としては退屈です。「何を読まされているんだ?」という気になる。ですから、できればここまでの描写で読者の興味を引く何かが欲しいですし、読者の興味を引く余地がないなら、こんなシーンは描写する意味がありません。
     本作の年代はまだ確認していませんが、仮に2020年が舞台の設定で、主人公が浪人も留年も経験していない大学生なら、中高生だったのは2012~2018年の間でしょうから、主人公がその頃にハマったアニメの曲を聞いているなら、ここで言うアニソンは、『進撃の巨人』、『魔法科高校の劣等生』、『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』などと同世代の主題歌である可能性が高いことになります。充分ではないにせよ、どんなアニメにハマっていたかを描写すればそれだけで、主人公の人柄をある程度は察せようになります。また、窓の外の街を眺めるだけのシーンにしても、そこでパワフルに働いている人たちをうらやましく思うとか、お金のために提げたくもない頭を下げている様子を想像して見下すとか、栄枯盛衰・諸行無常を感じて虚無感に浸るとか、主人公の姿勢については色々な可能性があります。そもそもが主人公の気持ち・人間関係・物理的な状況のいずれも動かない退屈なシーンですが、描くからには、せめてこれくらいの具体性や手触りは欲しいと思います。
     でね、「岩井さん、乗り切れてないなぁ」と感じるのは、第1話からずっと、地の文の一人称が「僕」と「俺」で(おそらく無意味に、無自覚に)揺れていることです。地の文は尊大な「俺」で会話文は謙虚な「僕」なら、何もおかしくはありません。でも、主人公の独白に等しい地の文の内部で揺れがあるのはおかしいでしょ。筆が乗らなくて継ぎ足したのかな、と思います。作品としても問題なのは、主人公の人柄や価値観はおろか、その時々のテンションも分からないことです。

     一人称だけの問題でもないですが、部屋にいるとき、朝食をとるとき、外に出たとき、外で人に会ったときのそれぞれで、主人公の機嫌が良いのか悪いのか、気持ちが前向きなのか後ろ向きなのか、気力が湧いているのか湧いていないのか。そういう基本的な部分さえ、よく分からないんです、本当に。一応、2週間ぶりの外出だとは明言されていますし、おそらくそれは主人公の自発的な決意のようには思いますが、(僕の見落としでなければ)主人公のモチベーションは不明なままに見えます。豪邸に住んで執事に世話されているとなると衣食住には困っていないようですし、将来のことを心配している様子もありませんし、外出したからと言って特段やりたい事があるわけではなさそうですし、大学生という割に大学の研究や友人のことが気になるふうでもありません。外出前に「喫緊の課題は他にある」と言って何かと思えば、「外出時の衣類を選ぶという任務」というだけで、主人公自身にも特にこだわりがあるわけではない、サークルに好きな女性がいるにもかかわらず、その人に会う可能性を想定して最低限の身だしなみを整えておこうというものでもない。はっきり言って、読者にとってはどうでもいい話、「好きにしろよ」以外の感想を抱きようがない話だと思います。

     清水先輩を前にしたときの様子も、慌てているのは分かりますが、見ていて何も面白くありません。あえて古いジェンダー観を出しますが、創作物なんですから、男が女を好きになると言ったら、どんな苦労も苦じゃなくなるとか、自分でも予想しなかったパワーが湧いてくるとか、何を置いても彼女の笑顔を見たくて奔走するとか、あるものじゃないですか。もちろん、現実的には無茶できなかったり財布が苦しかったりしますが、大それたことじゃなくても、たとえば、今は引きこもりの主人公がまともな大学生に戻ろうと2週間ぶりに外出した理由が、好きな女に釣り合う男になれないまま大学を中退するのは嫌だったから、という話でもいいでしょう。引きこもっている最中、彼女の愛読書と聞いた本を自分も買って読んでいて、もし彼女と再び会えたら感想を語り合いたいと夢想していた(でも予期せぬタイミングで彼女と会ってしまってみっともなくあたふたしてしまった)、とかでもいいでしょう。ささやかなことでも、主人公の一途さや真剣さが伝われば、それを見た読者が主人公をちょっと見直すみたいな、そういうことってあると思います。アリバイ作りみたいにキャラが出されてプロフィールを紹介されるだけじゃなくて、主人公の熱量や関係性についての描写が欲しいんです。そういうのをください。

     その後、意味不明にチンピラが出てくるじゃないですか。この辺はなろう系ゲーム的ファンタジーと同じと考えて、「これがそういう作品なら、そういうことでいいかな」って場面ですが、問題なのは主人公の反応の意味不明さです。殴りかかること自体は別に構わないのですが、このとき先のことを何も考えていないのは単純に(頭が)おかしいと思います。たとえば、自分の身長は180cm以上あるし昔は運動部で鍛えていたからこんなチンピラくらいその気になれば、と思って殴ってみたら、引きこもり生活で意外と体力が落ちていてノックアウトできないし、チンピラからの反撃に太刀打ちできなかったということなら、主人公としては勝機を見出していたんだねという話になります。逆に、勝ち目がないのは自覚しつつ、劣等感をこじらせて殴られてもいいやと思って試しにこちらから殴ってみたら、チンピラが本気で反撃してきて困惑した、ということなら、主人公が精神的に相当参っているということが分かります。ポジティブでもネガティブでも、突飛な言動をするからには行動原理があるはずで、小説であるからには、全てを明かさないまでも、ある程度は納得できる形で提示してほしいと思います。あくまで僕個人の感覚ですが、原文ではどうにも説明不足です。

     それから、摩耶と美耶に出会ってからのシーンですが、正直、ぐんにょりします。ナンパされている美少女をイケメン男子の主人公が通りがかりに助けるよりは個性的な筋書きかもしれませんが、チンピラに襲われてから美少女に助けられるまでのこの流れに、必然性や主体性が一切感じられません。こういう筋書きって、どこかに主人公の善良さを織り込むものだと思うんですよ。たとえば、主人公が清水先輩と一緒にいるときにチンピラに絡まれて、主人公は清水先輩を逃がすためにチンピラに立ち向かおうとするも、反撃にあってボロボロ、しかしその間に清水先輩は警察を呼ぶつもりでその場を離れており、その清水先輩に助けを求められた摩耶・美耶姉妹が、チンピラを止めに入って主人公を助ける、みたいな。あるいは、主人公が清水先輩抜きでチンピラと殴り合うのは同じにしても、そこに摩耶・美耶姉妹が通りかかり、チンピラが挨拶したのをカツアゲだと勘違いした主人公が、満身創痍ながら姉妹を守ろうと頑張ったところで気絶、その気概を買った姉妹が主人公を助ける、みたいな。読者からすれば、主人公が体を張るのは美少女のためだし、チンピラはカタギに手を出す下道という印象になるでしょうが、何もない現状よりは良いと思います。それに、仮にそれらの印象を避けたいなら、チンピラが借金まみれの小汚いおっちゃんを恫喝しているところに、雨宿りしようと走ってきた主人公が出くわして、おっちゃんを助けるためにチンピラに奇襲を仕掛け、殴り合いになったところに姉妹が止めに入って……という筋書きでも良いでしょう。美少女に恩を売れなくなりますが(笑)

     最後に、第4話以降の主人公のスタンスですが、初対面の怪しい姉妹相手にしては、警戒心がない上に距離感が近すぎると思います。この点は岩井さんの作品では度々見る傾向ですね。男性主人公が女性キャラたちに対して、妙に馴れ馴れしい。もしかすると岩井さんは女性の扱い方に慣れていたり、女性にモテたりして、それで距離を詰めるタイミングが早いのかもしれませんが、主人公たちのような陰キャや引きこもりの男子・男性は普通もう少し線を引きたがるだろう、というのが僕の感覚です。根拠がある話ではなく、経験則の話ですが、ご検討いただければと思います。
     本作の場合、目覚めてすぐの段階で、姉妹がチンピラを仕切っていることや、妹の美耶が危険人物であることが分かっているわけですから、主人公は美耶だけでなく摩耶のことももっと警戒し、恐怖や不安の対象にするのが自然だと思います。とりあえず敬語を使っておくとか、余計なことを口走らないよう気を遣うとか、ちょっとした言葉選びの違いでも主人公の心情を(読者に対して)示唆できるはずです。

     長文失礼しました。
     ちょっと変な話をします。タイトルから考えると本作はいわゆる妹萌え系列の作品だと思いますが、個人的には、岩井さんが妹という題材で何を書くのか、少なからず興味があります。僕は中高生の頃、あだち充のマンガ『みゆき』が好きでしたし、大学時代にも『干物妹!うまるちゃん』が結構好きでした。ただ、妹モノには恋愛についての一般的な感覚に反するような、自己完結的な閉塞感があるものです。つまり、一般的に恋愛というものは、元々は他者である男性と女性(あるいは同性同士)が、その垣根を踏み越えてお互いの、人間的に繊細な部分に踏み込むものであるのに対し、兄弟姉妹を「異性」の座に置いてしまう作品は、主人公の恋愛対象を最初から垣根の内側に設定しており、主人公が何も踏み越える必要がないところに特徴があります。ここでくり広げられるドラマは、本当の意味での他者(根幹部分で価値観を異にする人間)を相手にしない傾向にあるように思います。だから、自己完結的であり、閉鎖的なのです。実際、少なくともあだち充『みゆき』のラストは、主人公たちが大人になることを拒否したとも解釈できるものです。本作が岩井さん自身にとってひとまず納得できるものに仕上がることが喫緊の課題ではありますが、もしそれが実現するなら、岩井さんがこの題材をどう料理するのか、見届けさせていただきたいと思います。
  • >あじさい様

    こんにちは。大変ご無沙汰しております、岩井です。
    今回もまた、とても端的かつ丁重かつ建設的なコメントをくださり、心より御礼申し上げます。

    ううむ、やっぱり心身共に疲弊している感は否めないですね。早く作品を世に出したい、という自己顕示欲が、自分の本格初挑戦となる現代ドラマ的な部分と、悪い意味でダブルブッキングしたものと想定されます(^^;

    そうですね……。今はまだ、あじさいさんから頂戴したコメントを数回ゆっくり拝読させていただくのが精一杯で、『ヨム』作業に注力した方がよろしかろうとは思うのですけれど。

    ただ、「悪かったところ」というより「今後良くなるところ」に自分の好奇心、創作意欲的なものが持ち上がってくるのを感じています。

    いっぺんにお伝えできず、誠に畏れ多いのですが、現在(今朝~)考えられることとして、

    〇コメント・レビューの拝読
    〇妄想

    の二点を挙げさせていただきます。
    復旧・創作再開までしばしお待ちを<(_ _)>
  •  こんばんは。
     リメイク版1~3話を読みました。最初の2話はかなり良くなったと思います。場面に動きがあるし、地の文による説明と描写がちゃんと一人称の視線からのものになっているし、どんなテンションで読めばいい場面なのか分かりやすい。岩井さんの他の作品くらい面白いです。厳しい言い方をしますと、主人公がボコボコにされているシーンから始まって僕が第一に思ったのは「『バッカーノ』みたい」ということでしたが、たぶん他にも似た作品は多いでしょう。とはいえ、僕個人としては、この時点で投げ出すほどひどい書き出しではないと思います。ありがちかもしれませんが、理由も語られないまま誰とも知らない相手に暴力を振るわれている場面から始めるのは、主人公の置かれた状況がどん底で、惨めで、救いようがなくて、いわゆる「男らしさ」の対極にあることを象徴した、効果的な演出だと思います。
     しかしながら、第3話に関しては、率直に申し上げてつまらないと思います。
     おそらく第1話から順を追って、文章的に細かいところまで踏み込んで検討した方が良いのですが、僕のコンディション的にそれだと時間がかかりそうなので、ひとまず第3話の何がそんなにダメなのか、全体的なことをお話ししたいと思います。

     第3話は主人公の「邸宅」の話から入りますが、「まず門構えからして凄いもん。和風建築はこうあるべし! って豪語しているみたいで」と言われて「ふーむ、実際そうなのだろうか?」と思う人間が、自分で自分の家を「邸宅」と呼んでいるのは矛盾です。手順としては、
    「あまりにも見慣れているし、長いこと住んでいるから、意識したことなかった」
    →「改めて考えてみると、この一帯ではいちばん大きな家かもしれない」
    →「でも、敷地が広いだけで2階も地下室もないし(屋根裏部屋はあるけど)、物が多いわけでもない。普通の家には車があって、大きなテレビがあって、ペットもいて、入り切らないものを物置に仕舞ってるらしいけど、うちにはそういうものが何もない」
    →「いや、先輩、立派なのは門と玄関だけで、ただの見掛け倒しですよ」(金持ちゆえの認識のズレ/ボケ)、「えー、何言ってるの!?」(世間の一般的な認識/ツッコミ)
     みたいな流れじゃないでしょうか。

     それから、広さを強調する割に、どれくらいの豪邸なのかという肝心な部分について、読者に判断基準が提示されていないように思います。家屋・邸宅のランクを考えるとき、絵を描ければ早いですが、もちろんそれはここでは論外です。小説の表現として手っ取り早いのは、不動産としてどれくらい金がかかるのかを提示することだと思います。物理的な判断基準になるのは、作品の舞台がどれくらいの田舎/都会なのか、そして、その上でどれくらい広いのかです。たとえば、『涼宮ハルヒの憂鬱』では朝倉涼子がひとり暮らししているマンションが高級物件だという話が出てきますが、これは来訪者の主人公がマンションそれ自体を見て抱く感想です。詳細が分からなくても、読者は「はいはい、そういうものなのね」と納得できます。というか、納得せざるを得ません。また、『僕は友達が少ない』のヒロイン・柏崎星奈は豪邸に住んでいますが、作品の舞台が田んぼの多い田舎で、宮殿のような彼女の邸宅も山の中にあります。その上で、初めて来訪した主人公が廊下を歩きながら、「この家、何部屋あるんだ……?」みたいなことを思います。「なるほど田舎の豪邸なのか」、と読者は思います。そして、ラブコメ系マンガ『ハヤテのごとく』だと、主人公が大きな屋敷や学校を目にして、「ここ、東京だよね……?」と呟きます。豪邸であることを描写するからには、せめてこういう描写が欲しいと思います。
     本作では、ライトノベルの多くと違い、語り手がその豪邸に住んでいて当たり前だと思っていますが、難点というほど難点ではありません。家がA県B市と言わなくても、「この辺は田んぼも多い田舎だから、地価は安い」とか、「たしかに首都圏でそれなりに都会の住宅地にあるけど、駅や市役所から遠いから、そこまで便利ではない」とか、適当に謙虚なことを考えて、それを反映した発言をした後、おかしいところは話し相手にツッコミを入れてもらえば大丈夫だと思います。広さについては、先輩という世間一般の視点から凄いと示唆されていますし、何坪とか東京ドーム何個分とかではなく、「とにかく広い」ということが伝わればいいはずなので、主人公が付け加えるにしても断片的な情報として、「門から玄関まで、車ならたったの3分」とか、「あの頃の練習はハードで、晴れの日は庭で、雨の日は和室で、毎日竹刀を振っていた」などと書けば、それで充分だと思います。

     続いて、主人公がチンピラから暴行を受けるくだりの話をします。
     第1話からのつながりで言うと、読者として気になるのは、どうして主人公がボコボコにされるのか、その理由と経緯です。第1話冒頭で「ひょんなことから、暴力的な不良の気に障ることをしてしまったらしいのだ」と書かれているので、読者としてはその詳細――主人公はまともな人間なのか、それとも、無自覚にチンピラの地雷を踏み抜くバカなのか――の解説(種明かし)を期待して第3話を読むと思います。ですが、いまいちすっきりしません。
     もちろん、主人公は精神疾患で、学生生活に支障を期待しているということは何度も強調されているので、思考や記憶に欠落があるのは別に構いません。ここまで深刻ではなくても、考え事をしていてふらふらと知らない場所に来てしまうのは、一般的にもあり得ない話ではありません。客観的な状況把握が困難ということであれば、次に読者が気にするのは、チンピラたちがケンカを売ってくる理由を主人公がどう認識しているか、ということです。ところが、それが描かれるはずの場面を読んでも、「いい服着て、頭よさそうなツラ」をした主人公が、鬼羅鬼羅通りなる場所に迷い込んだというそれだけの理由で、チンピラが主人公に因縁を付けているように見える……。種明かしだと思ったら再び同じマジックを見せられた気分です。
     岩井さんとしては「主人公には何の落ち度もない」という状況を作っておきたいのかな、という気はしますが、チンピラが主人公に目を付ける動機は欲しいです。主人公がうっかり私道に入っていたなら別ですが、チンピラが公道の通行人に因縁をつけまくっていたらすぐ警察のご厄介になるはずですし、公道でも私道でも、暴力団に対する締め付けがどんどん厳しくなっているので、暴力沙汰はおろか怒鳴りつけただけでも、すぐ警察が飛んできます(恐喝罪)。それに、ヤクザやチンピラの世界にも任侠道という倫理観のようなものがあって、カタギや無関係の人間にはむやみに手を出さないのが美学ということもあります。いくらチンピラでも、ふらふら歩いている人間に手当たり次第に声をかけるわけではないのです。
     本作のチンピラ自身の言葉で言うと、主人公が「いい服」、つまり、いかにも金を持っていそうな服を着ていたのが、因縁をつけた理由として最有力になりそうですが、仮にそうだとすると、「どうせ大学生じゃなく、社会人の大人を襲いなさいよ」という話になります。それに、どうして主人公は何年も住んできた家(?)の近所にそんな危険な場所があるのに無警戒だったのか、という新たな疑問が出てきます。いや、「新宿駅前の洗練されたビル街を歩いていたつもりが、ふらふらと歌舞伎町に入っていた」みたいなことはあるかもしれませんが、だとすると、近隣住民はそういう暮らし方をするはずです。主人公としては、意中の女性と別れる前に、「この辺は物騒ですから」などと言って彼女を駅や大学まで送っていくような気遣いを見せてもよいのではないかと思います。「10年前まで鍛えていたから、自分はいざとなれば頼りになる男だ」と心のどこかででも自負しているなら、なおさらね。

     そう、最後に言うことでもありませんが、細かい言葉選びで気になることが2つあるので、そこにも触れておきます。
     1つは「ニート」。ニートとは「Not in Education, Employment or Training」の略、つまり教育にも仕事にも職業訓練にも従事していない人を指す言葉です。不登校だろうが休学中だろうが、「大学生」という肩書を持っている(大学に在籍している)主人公は、ニートではありません。ただの引きこもりです。もちろん、地の文の語り手である主人公が勘違いしているなら別に構いませんが、にしても、紹介文は訂正しておいた方が良いかもしれません。
     2つ目はそうですね、「十年前」。現在20歳の大学生の10年前となると、10歳のときです。ピアノでもサッカーでも、他のものに置き換えると分かりやすいかもしれませんが、10歳までその界隈で優秀だったからと言って、その後10年間何もしなければ、「腕」は落ちていて当たり前です。僕自身は格闘技も剣術も習っていたことがないのでただの想像ですが、ああいうものは他のスポーツ以上に、体作りや日頃の所作から違いが出てくるもので、打ち込んでいたならそれだけ、自分の格闘センスがどれだけ衰えているか、主人公にも分かりそうなものだと思います。もちろん、10年前からの習慣で早寝早起きが身についているという描写があるので、主人公としてはまだそういう技能が体に残っているつもりで、実際にチンピラを相手にしてみて予想以上の衰えに驚いた、ということならそれでいいでしょう。スポーツに限らず勉強などでも、現実問題として、そういうことはあるものです。ですが、それならそれで、殴られ蹴られている最中、主人公自身によるツッコミとして、「考えてみればそうだよな」みたいな自嘲的な独白が欲しいように思います。

     とりあえず今夜はこんなところで。
     苦言にめげず、執筆と再投稿、頑張ってください。
  • <追記>
     チンピラの件ですが、それが(主人公にとって)全く理不尽なもので、主人公がモノローグで、
    「俺の人生にはどうしてこんな理不尽なことばかり降りかかるんだ」
    「たしかに俺は品行方正な優等生じゃないし、公明正大な聖人でもない。しょうもない失敗で人に迷惑をかけたこともあるし、人に言えない秘密もある。でも、人並みには真面目に、真っ当に生きているはずだ。どうしていつも俺ばっかり、こんなに不幸なんだ……」
     などと考えるなら、それはそれでありだと思います。チンピラに理屈があって、その場で暗示されるか、後のエピソードで明かされるのが望ましいとは思いますが、痴漢から通り魔に至るまで、誰でも良かった系の犯罪が、「見た目が弱そうだった」、「抵抗されないと思った」、「そのときふと魔が差した」、「たまたまムシャクシャしていた」といった具合に理由なく行われるのはよくある話です。小説というメディアは言語化可能な説明を求められる宿命にありますが、この世が理不尽ということは読者の多くも分かっているはずなので、あとは作者の意図やご都合主義を感じさせないように細かい部分の描写を固めるのが、腕の見せどころですね。
  • >あじさい様

    ありがたいご助言をこまめにくださり、本当にありがとうございます<(_ _)>

    『一旦あじさいさんのご提案を文章に入れてみる』➡『後に、馴染ませることができるかどうかを判断』という感じでやってみようと思っております。
    明日(パート休み)で切り返すか、それとも創作から離れて映画を観まくるか、悩ましいところではありますが(笑)

    やれることはやってしまおうと思います。
    重ね重ね、御礼申し上げます<(_ _)>
  •  こんばんは。

     第1話について、細かめの批判と改善点を書いてみました。文章の書き方についての話に終始していて、話の流れや段取りについては触れていませんが、この第1話に関してはそこまで退屈だとか読みにくいといった印象はないので、流れや段取りを大きく変えることは考えなくていいと思っています。
     形式は「 」で原文を引用し、→「 」で修正案を提示します。改善点だの修正案だのと偉そうに言っていますが、「こういう書き方もあるかもしれません」というくらいのものです。「俺様の言うとおりに書き直せ」というものではありません。このコメント自体に誤字脱字があったらすみません。意味不明な箇所や疑問点があればおっしゃってください。

    「アスファルトに横たわっていた僕は、何の抵抗もできずにゴロゴロと転がされた」
    →「できずに転がされた」。
     僕の感覚ですが、仰向けあるいはうつ伏せで横になっている人間を蹴ってもひっくり返るだけで、ゴロゴロ転がりはしないと思います。主人公が20歳の男性なら身長165cm前後と考えても体重55kgくらいはあるでしょうし、筋肉質で重いなら標準より少し重くなります。蹴って転がすのは意外と難しい重さではないでしょうか。

    「ひょんなことから、暴力的な不良の気に障ることをしてしまったらしいのだ」
    →(「ひょんなことから」を削り)「理由はよく分からないが」。また、(「不良」ではなく)「チンピラ」。
     辞書によると「ひょんな」は「思ってもみなかった。妙な」。ただ、僕の感覚では、「ひょんなことから」と言ったとき、本人はその理由や経緯を一応把握していることが多いと思います。第3話までを先取りで見た限り、チンピラが因縁をつけてきた理由について主人公はほぼ何も把握できていないので、ここでは修正案のような表現の方が妥当だと思います。
     辞書によると「不良」は「性質・品行が悪く、常習的に非行を働く・こと(人)。〔多く、少年少女にいう〕」とのこと。本作の彼らは主人公を「学生さん」と言っていて、おそらく彼ら自身は学生でも少年でもないでしょうから、「チンピラ」という言葉に置き換えることを検討しても良いと思います。ちなみに、辞書によると「ちんぴら」は「①一人前でないのに、えらそうな言動をする者。小物の悪党。②不良の少年少女」とのことで、あまり変わらないと言えばそうかもしれません。

    「一人目の不良に殴りかかったところで、爪先で引っかけられ転倒。続けざまに二人目が、僕の腹部を思いっきり蹴り上げた」
    → 1文丸ごと削る。
     ここにこの1文があると時系列がごちゃごちゃしますし、第3話で説明することなので、ここでは削って良いと思います。

    「そう言うなり、僕は再びアスファルトに投げ出された」
    →「そう言うなり」を削る。
     文の主語が「僕は」なので文法的には「そう言われて、僕は再びアスファルトに投げ出された」だと思いますが、言葉が発されたことは言及するまでもないので、削って「僕は再びアスファルトに投げ出された」で良いと思います。

    「咄嗟に腕を回し、自分の頭部を死守せんとする」
    →「咄嗟に腕を回し、頭を守る」(「とする」を削る)。
     辞書によると「死守」は「必死に守ること」なので、間違いではありませんが、文脈によっては「命がけで守ること」、「命と引き換えにでも守ること」を指すと思います。たとえば軍の司令官が「この砦は絶対防衛線だ、死守しろ!」と叫んだ場合、単に「何が何でも守れ!」と言っているだけではなく、「砦を守るために俺たちはここで死ぬぞ!」という意味合いがあるように思います。このとき、砦は軍人の命よりも優先度が高い。「死守」というのはそういう言葉だと思います。本作の場合、たしかに頭は守らなければ死にますが、命を落としてでも頭だけは守らなければ、というのでは本末転倒ですね。そのため、個々の言葉選びはシンプルに「守る」で良いと思います。
     また、原文では「自分の頭部を」となっていますが、直前に「腕を」と書いているので、臨場感を出すためにも、ここは短く「頭を」だけで良いと思います。

    「そうして防御体勢を取る隙に、今度は連続で踏みつけを喰らいまくった」
    →「そうしている隙に、今度は背中に踏みつけを喰らいまくった」。
     頭を守っている隙に頭以外のところに踏みつけを喰らいまくったという話なので、いっそ「その隙に」でも良いと思います。「喰らいまくった」とあるので、「連続で」は要らないですし、どちらも書いたのでは表現がしつこくなると思います。修正案ではひとまず「背中に」としましたが、頭を抱えているなら横向きに寝ている可能性の方が高いので、脇腹が踏みつけられている可能性もありますね。この場合、背中と違って相当痛いはずなので、主人公が呑気に「腕が鈍ったなぁ」なんて考えていられるかは謎ですが。

    「父さんが存命だった頃は、いろんな格闘技やら剣術やらの訓練をさせられたものだ。父さん曰く、『これぞ日本男児の在り方』なのだそうだ」
     初見でも伝わらなくはないですが、冷静に考えると『これぞ日本男児の在り方』は「これ」という指示語が入っていて少々ぼんやりしています。『日本男児の在り方』という部分も「あるべき姿」の方が適切かもしれません。言い換えとしては、『質実剛健こそ日本男児のあるべき姿』、『日本男児は文武両道であるべき』、『強さあっての日本男児』などが考えられると思います。個人的には「日本男児本来の在り方」みたいな言い方は嫌いなのですが(「本来」って何だよ……と思うので)、直後に主人公が「今の時代にそぐわないことこの上ないと思うのだが」とツッコミを入れてくれるので、古いタイプの男性の言葉としてはありかもしれませんね。

    「警察が示すような物的証拠『だけ』に注目すれば、話は早いだろう」
    →(a)「警察が説明するような物理的な因果関係『だけ』で済めば」、あるいは (b)「警察のように物理的事実を確認しただけで納得できれば」。
     直前の文の「どうして」に対応するので、「物的証拠」よりも「物理的な因果関係」が妥当だと思います。率直に言えば、「物理的な因果関係」という言い方はあまり聞きませんし、僕が思うに、因果関係は物理的な事実そのものではなく、人間が個々の認識力に基づいて観測するものなので、その点でも修正案としてあまり良いものではないかもしれません。ただ、直後に「心理的に」、「精神的に」という話が出てきてそれとの対比になっているわけですから、多少不自然でも「物理的」という文言を入れてしまって良いと思います。不自然に感じられるようなら、「物理的事実」という言葉を使った(b)案をご検討ください。

    「だが、心理的に――もっと言えば精神的に、運命的に考えると、その事実が不可解なものに思えてならない」
    →「運命論的に考えると」。
     これは我ながら少し微妙です。「××的に」という言葉は使い方が色々あって難しいですが、この場合、「運命論という観点から考えると」という意味合いのはずなので、「運命論的に」の方が正解に近いような気がします。それに、「運命的に」というと形容動詞「運命的な××」を副詞化させて、「運命的に必然」、「××は運命的だった」という意味合いになるとすれば、「運命的に考えると」の意味は、文法的には「運命の導きに従って考え始めると」になるような気もします。

    「もしかして、そんな雑念が僕の戦いを妨害しているのだろうか?」
    →「僕の動きを鈍らせて」。
     読者というか僕の印象としては、主人公はすでにチンピラとの戦いに負けてしまっており、あとは痛みと戦っているくらいの場面だと思います。あまり動いているようにも思えませんが、反撃するのが二の次で、逃げることが先決な状況と考えると、「雑念が動きを鈍らせて、チンピラの隙を突いて逃げることもできない」という意味だと解釈できるかもしれません。

    「そもそも、今のような戦うべき時に何もできないことこそが僕の弱みなのだろうか?」
    →「そもそも」を削る。また、「僕の弱さ」。
     前後のつながりを考えても、おそらく、この「そもそも」は要らないと思います。「弱み」は辞書によると「他よりおとっている点。また、弱いところ」という意味なので採用しても良いかもしれませんが、僕個人としては「弱さ」の方が良い気がします。大多数の人は日本男児だからと言って格闘技や剣術を習った経験などないでしょうし、物理的に「戦うべき時」にも直面しないはず(直面したら警察沙汰)なので、その点でも「他よりおとっている」系の言葉は使いづらいと思います。
     ところで、「戦うべき時」という表現についてですが、まだ主人公がチンピラに暴行を受けることになった理由や経緯が明かされていませんし、第3話を先取りしても、主人公がどうしても誰かを守りたかったとか、どうしても盗られたくない物を持っていたとかではなさそうなので、本当に「戦うべき時」なのか少し疑問です。自分の身を守るために戦うのも大事ですが、逃げられるなら逃げた方がいいという状況なら、「戦うべき時」ではないはずです。いわゆる正当防衛が成立するのも、逃げられず、反撃しなければ命を落とすおそれがある状況に限られますから、殴られたり怒鳴られたりしたからと言って、それがすぐに「戦うべき時」になるわけではありません(昨今は法律の解釈にシビアな読者・レビュワーが増えているので、現代日本を舞台にするならその辺りの目配りも求められます)。
     ちなみに、1文丸ごと書き換えるなら、「そもそも、僕はいざという時に何もできない、(人一倍)弱い人間なの(ではない)だろうか?」、「僕はそもそもが弱くて、いざという時に何もできない人間なのではないだろうか?」などの書き方も考えられるかもしれません。

    「自分の生い立ちを顧みるのは大事だろうが、戦闘中に考えるべきことではなかった」
    →「自分の生い立ちを顧みるのは大事だろうが、今はそんな場合ではなかった」、あるいは「いや、自分の生い立ちを顧みる(べき)ときではない」
     原文「顧みる」と「考える」で同じ意味の動詞が重複しているのが気になります。また、先述の通り「戦闘中」という表現も、読者にはしっくりこないと思います。

    「その思考の間も、僕は殴られ、蹴られ、踏みつけられた」
    →(「その思考の間も」を削り)「そんなことを考えている間も」、あるいは「こうして考えている間も」。
     意味的に間違いではありませんが、文体が不自然に硬いと思います。

    「チッ、こいつしぶといな……。おい、あれを出せ」
     ここで「しぶとい」と言うからには、チンピラが主人公に何かを要求していて、主人公が頑としてそれに応じないという状況に思えるのですが、その割には、チンピラは主人公が応じる暇もないほど暴力を振るい続けているように見えます。何かの理由で気絶させたいとか、誘拐したいということなのでしょうか。まさか殺す気……? そんなことあります?

    「踏みつけられた状態のままで首を捻ると、不良は片手に小振りなナイフを、もう片方の手にライターを握り、火でナイフを炙るところだった」
     文章ではなく内容の話ですが、火で炙ったナイフを肌に当てるのは、サバイバル中に大ケガをしたときに消毒・止血する手段だとか聞いたことがあるような……。もし主人公が父親やその影響でサバイバル術も学んでいたなら、後になって「あの時のあれを見てもああ思ってたんだよね」と回想するよりは、すぐにそうだと思い出した方が良いと思います。まあ、それは冗談半分ですが、よく分からないのは、顔に押し当てるだけなら、ナイフを火で炙ることに意味があるのかな、ということです。直接ライターの火で主人公の無精ヒゲや鼻毛を燃やした方が早くないですか(そういうのに躊躇があるようにも思えませんし)。拷問が目的なら、ナイフを目に近づけるとかね。この場合、火で炙らなくても、尖っているだけで脅しになります。どちらにせよ、主人公が悲鳴を上げたり病院に担ぎ込まれたりしてしまったら、警察に見つかりやすくなる上に、言い逃れや情状酌量も難しくなるので、合理性を欠いた過度の暴力だと思いますが。
     ついでに言うと、「ナイフを火で炙る」とネットで検索すると、「(乾燥させるためにする人がいるが)なまくらになるからやめろ」と出てきます。チンピラは知らないかもしれませんが、過去にもやったことがあるなら、そのとき教訓を得ているかもしれません。

    「その顔には、耳まで裂けていそうな歪な表情が浮かんでいた」
    →(「その顔には」を削り)「俺にはその顔が、口が耳まで裂けているような歪な表情に見えた」。
     口裂け女的なことかなと思って修正案を書いてみましたが、「その顔が」と「口が」の二重主語が読みにくいですし、わざわざ読みにくい表現を使うほど大事な描写でもなさそうですし、何より、あまり緊迫感がない気がします。「笑顔が不気味だった」とか、「僕を痛めつけることが楽しくて仕方ないという顔だ」といった別の表現を検討していただいた方が良いと思います。

    「かといって、戦いを続行できる状態ではないし、逃れるだけでも困難だ」
    →「反撃できる状態ではないし」

    「せめて、何があっても無様な悲鳴など上げるものか」
    →「せめて、何があっても無様な悲鳴だけは上げてなるものか」
     何があってもというか「何をされても」という状況な気はしますが、それは良いでしょう。「せめて……悲鳴など上げるものか」と「せめて……悲鳴だけは上げてなるものか」の違いは僕自身うまく説明できませんが、後者の方が対応関係的にしっくりくると思います。

    「それだけを胸に刻み、じろり、とナイフ持ちの不良を睨みつける」
    →「そう決意し、精一杯の気迫を込めて、ナイフ持ちのチンピラを睨みつける」
     原文「それ」は前の1文の決意だと思いますが、「それだけ」と限定する必要はないと思います。悲鳴を上げない以外にも大事なことはあるでしょうから。ただ、もちろんそれだと表現が弱くなるので、修正案では「そう決意し」としています。「じろり」は第三者が見たときの表現なので、主人公自身の目線の表現としては、「……という気持ちで」、「……のつもりで」といった心情にフォーカスするのが良いと思います。

    「思いがけない助けが入ったのは、まさに次の瞬間だった」
    →「まさにその瞬間」あるいは「まさにその時」
     副詞「まさに」は英語のjustやright のはずですから、「まさに次の」はよろしくないと思います。

    「不良の姿が、まるでアニメの残像のように消えた」
    →「アニメのコマ落ちのように」
     辞書によると「残像」は「外部からの刺激が去ったあとも、感覚が残っている現象。おもに視覚についていう」。つまり、消えるのが残像ではなく、消えたはずなのに目に残っているのは残像です。ちなみに、「コマ落ち」をネットで検索したところ、「動画を再生する際に、転送されたデータの単位であるフレームの一部が何らかの理由で再生されず、音声や画像が一瞬とぎれる現象のことである。 本来再生されるべき連続画像の枚数が欠ける、例えば秒間30枚必要であるところが25枚しか再生されなかった場合、5枚分のコマ落ちといい、そのぶんだけ画像は滑らかでなくなる」とのことです。

    「僕はより防御性を高めつつ、自分の頭部を抱き込んだ」
    →「僕はさらなる脅威に備え、自分の頭部を」
     この場合、「防御性(→防御力?)を高める」のと「頭部を抱え込む」のとは同じ動作を示しているので、記述の順番としては「僕は自分の頭部を抱き込んで、より防御力を高めた」になると思いますが、「何だ、それは?」という感じがしますね。修正案には少し迷いがあります。直前に「助けが入った」と言ってしまっているので、読者から見るとここで主人公が頭を守る必要自体がないからです。ただ、状況的には、さらなる強敵の出現に備えた(主人公が頭で考えたというより、父親との訓練で培った感覚の残滓がそうさせた)というふうに読めなくはないと思います。

    「その時脳裏をよぎったのは、今朝起床してからの一日の始まりだった。今日は何時に起きたんだっけかな……」
    →(丸ごと書き直して)「そもそもどうして僕がこんなことになっているのか。それを語るには、今日の出来事を順に振り返る必要がある。えーっと、今日は何時に起きたんだっけかな……」
     小説としてはここで引きを作りつつ、過去の回想につなげたいのだろうとは思いますが、読者の関心は謎の助っ人に向かっているはずなので、いきなり主人公が今朝のことを考え始めるのはあまりにも不自然でしょう。話の転換としてそうする必要があるなら、朝起きてからチンピラに会うまでの出来事が、助っ人の登場に関係していることをほのめかし、それを説明するという方針で行くのが順当なところという気がします。まあ、僕はまだ先の展開を把握していないので、今はひとまず、主人公の思考をあっちこっち飛ばすのは得策ではありませんよ、ということだけお伝えしておきます。

     ひとまず以上です。
     第2話は少し長かったと思いますし、場面転換も何度かあったので、同じように改善点を書くにしても今回以上に時間を頂くことになると思います。
  •  こんにちは。
     第2話についてコメントさせていただきます。

     先に全体的な批判を述べますと、現状、第2話を起床の場面から始める必然性は感じない構成になっていると思います。流れとしては、チンピラに袋叩きにされていたところに謎の助っ人が現れ、そこで主人公が今までの経緯を回想する。それによって、話がどんどん進んでいく前に、主人公の状況を読者に理解してもらう、という場面だと思います。読者の関心は「どうして主人公はチンピラに暴行を受けているのか」ということですから、回想シーンも漫然と近況報告をするのではなく、そこに向かっていく話になることが望ましいはずです。これを踏まえて、それでもなお回想シーンを起床の場面から始めるのであれば、日中に起こる出来事について何かしらの予感や前兆があった、という要素が欲しいと思います。
     たとえば、
    「毎朝、目覚める瞬間がいちばんつらい。夢の世界を自由に飛び回っていた魂が、安らかな無重力状態から引きずり降ろされて、現実の自分という檻の中に閉じ込められる。特に今朝は、自分の体が重かった。今日1日、何もかも上手くいかないに違いない。そう直感した」
     あるいは逆に、
    「今朝は嘘みたいにさわやかな気分で目が覚めた。普段は無気力な僕にも、たまにはこんな日がある。こんな日は、気分が上向きになって、余計なことに手を出して、自分でも自分を制御できずに空回りして、恥をかき惨めな思いをする。それが毎度のパターンなのだが、起き抜けの僕はそこまで頭が回らず、根拠なき全能感に囚われていた」
     最初をこんな感じにして、主人公の気分のトーンを示しておくと、この後のエピソード、弦さんと話して朝食をとったり、散歩中に瑞樹先輩と出会ったりという何気ない話でも、読者が主人公に寄りそって物語を追いやすくなるように思います。仮にダウナーなところから始まったなら、主人公は自分が憂鬱なときも他者に対してマナーを忘れない(人間関係で緊張感やストレスを溜め込みやすいのかもしれない)人間、ということが示せます。反対に、アッパーな気分で始まったなら、主人公が束の間の平和を享受しているのを見て、読者は(チンピラと出会う未来を知っているので)この平和がいつ、何のきっかけで破綻するのだろう、とハラハラしながら見守ることになるでしょう。

     以下、細かい点について。

    「冗談かと言われそうな熱波によって、日本列島は照り焼き状態を強いられている」
    →「冗談みたいな熱波」あるいは「冗談のような熱波」。また、「照り焼きにされている」。
     ライトノベル独特の文体を意識なさっているのかもしれませんし、単に岩井さんの癖かもしれませんが、文章が回りくどく妙に硬い印象になることがたまにあります。少なくとも僕は違和感を覚えるので、よりフラットな書き方も選択肢に入れていただければと思います。

    「俗にいうアホ毛が立っている。/早く直さなければ。/そんな義務感を覚えるのもまた、父さんの影響かも知れない」。
     引用・修正案の「/」は改行を示すものとします。
     神経質かもしれませんが、この描写はあまり意味がない気がします。寝起きで寝癖がつくのは別に主人公の人柄と関係ありません(しいて言えば、主人公の髪がスポーツ刈りより長いことは分かりますが)。また、寝癖を直すというか、起きて顔を洗ったり身だしなみを整えたりすることについて、父の影響がなくてもある種の「義務感を覚える」のは当然だと思います。
     アホ毛はマンガの表現で、僕個人としては小説向きではない(書くなら「寝癖がひどい」、「髪が凄いことになっている」などだ)と思いますが、軽い小説を目指されているということなら、許容範囲かもしれません。

    「父さんが存命だったら、ニートなどという生活を許しはしなかっただろう」
    →「父さんが存命だったら、息子が引きこもり(生活)に甘んじることなど許しはしなかっただろう」。

    「が、実際に精神疾患として認定されるだけの心理状態に陥ってしまっているのだから仕方がない」
    →「精神疾患と診断されるだけの(心理)状態に」。
     具体的な病名は伏せられていますが、精神疾患は「心理状態」というより「精神状態」ではないかな、という気がしました。とはいえ、僕も自信がないので、修正案としては単に「状態」あるいは「状況」とすることをお勧めします。

    「彼の名前は上村弦次郎、通称は弦さん。僕の身の回りの世話をしてくれる、いわゆる執事である」
    →「世話をしてくれるハウスキーパーである」。
     アホ毛に続き、執事もライトノベルらしさを感じさせる用語ですが、この後「自称・執事」という言い方が出てくるので、作中世界や主人公の感覚を現実世界の常識に近づけるなら、弦さんは第一には(雇用関係的には?)「ハウスキーパー」になると思います。あえて日本語にするなら(「執事」より先に)「お手伝いさん」でしょうか。「使用人」や「下男」は少し違う気がします。

    「それでも信頼できるのは、やはり彼の人柄のおかげ、としか言う外あるまい。」
    →「それでも信頼できるのは、彼の仕事ぶりに人柄の良さが表れているからである。」あるいは「それでも僕は長年の付き合いで、彼を全面的に信頼している。」
     考えている内に僕自身もよく分からなくなってきたパターンです。修正案の方が日本語として正確な気はしますが、原文でも言いたいことは伝わるので、考えすぎかもしれません。まあ、仮に僕が書くならこの原文とは違う書き方にしたくなる、というくらいの話です。

    弦さんの台詞「朝食は既にご用意させていただいております」
    →「ご用意してあります」。
     原文は間違いではありません。世の中には、「……させていただく」という表現を嫌う人もいますが、僕は文脈に合っているならむしろ良い表現だと思っています。修正案を提示したのは、文字にすると少し長々しい印象になると思ったからです。現実でも会話中の敬語はやや過剰になりがちですが、小説とはいえ、それをそのまま文字にすることに固執する必要はないと思います。くり返しますが、原文のままでも問題ありません。

    「それは出来立ての朝食でも、外出に合わせて準備してくれている弁当でも変わらない」
    →「準備してくれる弁当でも」。

    「ダイニングのテーブルの上にあった朝食を平らげた僕は、ご馳走様でした、とはっきり述べて手を合わせた」
    →「居間で朝食を」あるいは「ダイニングで朝食を」。
     準備してあると弦さんが言っているのですから、「テーブルの上にあった」という情報は要らないと思います。普通、それ以外の状況を想定する読者はいないでしょう。
     後の場面で、主人公の邸宅は由緒正しそうな和風建築と明かされるので、それを先取りするならここは「居間」だと思いますが、最近はおしゃれのために「ダイニング」と言うものかもしれないので、そこはお任せします。

    弦さんの台詞「今日も大学の方はお休みになられますか?」
     8月上旬なら多くの大学は夏休み中ではないかと思います。主人公の大学は違う、弦さんは大学のことを把握していない、弦さんの認識では主人公は夏季の集中講義に参加する(あるいは大学図書館で自主的に勉強しようとする)はずだった、などと言われればそれまでですが。免疫を付けるため、あるいはリハビリとしてキャンパス内を歩くという選択肢があるなら、それを提案するシーンにしても良いかもしれません。

    「訊かれ慣れた質問だ。事実、僕は大学に通えていない。/何故かと言われても困るのだが、一言で言えば精神疾患のせいだ。/僕の場合は、やっと大学に合格したまではよかったものの、厄介な病態に陥ってしまった」
    →「訊かれ慣れた質問だ。事実、僕は大学に通えていない。/やっとの思いで大学に合格したまではよかったものの、入学式を待たず、厄介な病気を発症してしまった」
     精神疾患のこと自体は第1話でも言及されていることで、読者にも分かっているので、「何故かと言われても……」から「僕の場合は、」までの箇所は削ってよいと思います。また、これは内容に関わる話ですが、主人公に注意力散漫などの症状があるなら、それで交通事故に遭ったことにして、そのとき精神疾患と診断された、みたいな話にしても良い気がします。ケガは軽くても重くてもいいですし、ケガはせず事故に遭いそうになっただけでもいいですが、それで自分の異常に気付いて心療内科や精神科を受診するというのが、現実感のある流れだと思います(というか僕はそうでした)。

    弦さんの台詞「どこかお加減でもよろしくないのですか、坊ちゃま?」
     これも内容の話ですが、弦さんは主人公が精神疾患ということを知らないのでしょうか。知っててこれを言っているなら白々しいと思います。弦さんが主人公の父親と同じく古い人間で、精神疾患など気合いで直せという考えだとすれば、理解してもらえない立場の主人公が弦さんの人柄を手放しで評価しているのは、少し引っかかります。

    「このまま大学に行けばいいんじゃないかって? 冗談じゃない。/あんなに多くの人間が一部屋に集って、効きの悪い冷房の下で頭を使う。/今の僕には、とても真似できない。/なんというか、心が圧潰されるような気分になってしまう。ぐしゃり、と握り潰される音が聞こえるようだ。/冷暖房に限った話ではないが、どれだけ好条件が揃っても、この心理状況は変わるまい。/まったく、精神安定剤の処方もなく生きている人々の気が知れない。皆、どうやってストレスケアを行っているのやら」
     主人公の精神疾患を信じるなら、嫌なのは冷暖房より「あんなに多くの人間が一部屋に集まって」という部分の方だと思いますが、原文の印象は逆になっているように思います。

    「瑞樹理沙。僕と同じ、文学部古典研究科の先輩だ」
     ライトノベル的な仕掛けとして、部活や学科の名前を現実には存在しない名前にするのはありだと思います。ただ、現実に近づけるなら、「国文科」や「史学科」(古典文学というより歴史学)などになると思います。念のため。

    「だから僕は、副部長やら会計やら書記やらを兼任することにすることになってしまった」
    →「兼任することになってしまっていた」
     誤植で「することに」が2回重なっているので、片方削ってください。原文「なってしまった」だと過去形なので、修正案では過去完了の「なってしまっていた」にしています。

    「しかしそんなことは、僕にとっては些末な問題だった。」
    →「そんなことは些末な問題だ。」
     直後に理由が明かされるので、「僕にとっては」は不要、「だった」も「だ」にした方がテンポが良くなると思います。

    「大学という一種の檻の外で、僕との交流を持ってくれる」
     オリエンテーションや新入生歓迎会では、友達を作らねばというプレッシャーが強いかもしれませんが、高校や予備校に比べれば、大学は言うほど「檻」ではない気がします。というか、主人公は1年目でこの状況なので、大学のことをほぼ知らないはずです。そして何より、この表現だと、主人公ではなく瑞樹先輩が、檻に閉じ込められて不自由という話になってしまうと思います。

    主人公の台詞「み、瑞樹先輩! 今日の活動場所はどうしますか?」
    瑞樹先輩の台詞「えーっと、そうだね……」
     釈迦に説法ですが、解釈違いだと思います。主人公は社会との関わりに消極的、瑞樹先輩は(一般的な学生として)社会や主人公との関わりに積極的という構図なので、先に「今日の活動場所」の話を振るのは主人公ではなく瑞樹先輩のはずです。主人公に話を振られた瑞樹先輩が(自分から主人公に話しかけたのに)活動場所を決めかねているのも、もったいない描写だと思います。

    「これだけで十分魅力的だと言ってもいいが、何故かファッションセンスがないところがまた麗しい。いや、センスの問題というより、先輩は無防備なのだ。/この人、大学に通うのにどうして純白のワンピースなのだろう?/僕は外見で人を判断することを良しとしない。だが、今の先輩の服装では、いくらでもファンがつくだろう」
     前半では「ファッションセンスがない」のが魅力と言いつつ、後半は今日の服が瑞樹先輩によく似合っている、先輩はおしゃれだという話になっていて、話がつながっていないと思います。

    「それからは、特になんとはなしに会話が続いた」
    →「それからは、たわいのない会話が続いた」

    「先輩は巧みに学内の情報漏洩を防いでくれる」
    →「学内の話題を避けてくれる」

    「ふーむ、実際そうなのだろうか?」
    →「う~ん、そんなこと初めて言われた……。」あるいは「う~ん、そんなこと初めて言われたぞ……?」

     ひとまず以上です。

     今回、瑞樹先輩の描写はとても良かったと思います。いきなり外見の話から始めず、彼女が自分から主人公に話しかけたり、苦しい状況にある主人公をさり気なく気遣ったりする様子、さらに主人公が先輩を慕っている様子などを描きながら、自然に外見にも言及し、しかもそれを人柄の魅力の話に落とし込んでいるところが素晴らしいです。下心ではなく、ちゃんと好きになっているのが分かります。主人公の語りも、単に「良い女だから好き」というだけでなく、世間的には欠点かもしれない部分も魅力だと言っているところに主人公自身の人柄が見えますし、その着眼点には一読者として好感が持てます。主人公と先輩がどのタイミングで仲良くなったかは謎ですが、説明不足が不満になるのではなく、今後それが明かされることを楽しみにできる、良い場面だと思いました。

     第3話以降についてですが、すでに第3話に対して大まかな批判は述べましたし、岩井さんはひとまず続きを書いて完結させることが最優先でしょうから、当面のところ細かい話はしなくてよい、申し上げても邪魔になるだけだと思っています。しばらくは静観させていただくつもりなので、先日申し上げた通り、ひとまず岩井さんには、本作をご自身で満足できる作品に仕上げられるよう、頑張っていただければと思います。
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