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コレクション『年を取ると記憶は一枚の画に近づく』

「老いはてて彼も汝も誰か薄れ去りいずれ消ゆらし吾の誰かさへ」―。

 認知症と言えば、むかし誰かの本で「年を取ると記憶は一枚の画に近づく」と読んだ気がする。あるいは、誰かの話だったかもしれないが思い出せない。いずれにしても、記憶の老年変化についてだった。
 ◇テレビのマラソン中継などで「縦一列に…」という表現を耳にする。画面には、大勢の選手が前後にぴったりと続いて走っている。すぐ抜けそうなのにと思うが、バイクカメラに切り替わると数十メートルも間隔があったりする。レンズのマジック。―アナウンサーの乗る中継車には望遠レンズのカメラが搭載されており、これで先頭から後続の選手を撮影すると距離感がおかしくなるのだ。
 ◇二十歳の時に人生を振り返る1年間と、古希過ぎてから思い出す青春の1年間が同じ長さではないはず。「光陰矢の如し」というが、時の流れは老若男女に皆等しい。つまり、実際の速さではなく、個々の感じ方である。極超望遠レンズで現在から70年間を振り返れば(一年毎の幅など誤差範囲、と言うか)前後が入れ替わるのは当然だろう。
 ◇こういうことを誰かが「年を取ると記憶は一枚の画に近づく」と言ったのではないだろうか、と愚考してみた。

#1『でぃめんしあ』
#2『コクリツ病院は永遠に(R-70)』
#3『爺医の矜持』

https://kakuyomu.jp/users/hyakuenbunko/collections/16817139558511788852

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