茂木英世

各人が持つ布団哲学。各布団の上で広がる布団宇宙。広大無辺の温かく柔らかい、時折腐る宇宙で起こる物語の一つ。

〈織田作之助青春賞三次選考通過作〉 溶接工場の事故で右腕を失った男は、全身が燃えている男と出会うようになる。 ただ見つめ合うだけの邂逅の中で、隻腕の男は炎と灰の幻想の中に取り込ま…

《カモガワ奇想短編グランプリ一次選考通過作》 人は皆頭の中に運命があり、それはつむじという形で現れる。しかし枢エンタにはつむじがない。運命の輪から外れた少年を中心に喋る自転車、魔…

全宇宙の最速を求める者達の魂が集う場所、〈赤い土のサーキット〉。これはそこに轍として遺された走行記録、その一部。

夜間の学校に通う北条昴は、ある夜、吸血鬼を名乗る少女に出会う。 「吸血鬼は、心の熱を得る為に血を吸う」 彼女は心の熱を求めて、空に、月に、宇宙に夢を見る。 その様に魅せられた昴は…

人が死ねなくなった世界。 葬儀屋をクビになった高垣は、とある事から自分の住むアパートの上の階を尋ねることになる。 そこで見たのは、首を吊ったままテレビを見ている女と、一つの死体だ…

僕は洞窟に空の絵を描く。 僕の一筆で、彼らは笑顔を浮かべた。 僕の一筆で、彼らは感嘆の声を上げた。 そして僕の一筆で、彼らは死ぬのだ。 これは、空の青さに呑まれた僕と、翡翠色に…

　彗星が近づく中、少女たちは平凡な高校生活を送る。平凡な授業、平凡な休み時間、そして平凡な教室の風景。 　どこまでも平凡な毎日の中で、セーラー服の少女だけが遠い空を見ていた。