星月から直々に、特別授業をしてくれと頼まれてここに来たのだけれど。
ええと、初めまして、の方もいらっしゃるかもしれないわね。
光北高校で国語科の教員をしております、藤枝櫻子と申します。
せっかくだから琴葉も聞く?
内容としては、貴女は答えられるはずの内容よ?
だって中学国語と高校古文の内容ですもの。
ふふふ、前振りはこのくらいにして早速始めましょうか。
星月が書いております、
『恋を知らない女子高生は女教師に恋をした』その第25話の題名、
『愛の言葉は花と咲く』
これ、皆さんはどういう意味で捉えましたか?
では、この題名を単語に分けてみましょう。
愛/の/言葉/は/花/と/咲く
キーになるのは「花と」の「と」。
この「と」、さてどの「品詞」かしら、清永さん?
はい、よくできました。
「格助詞」よね。
じゃあさらに進むわよ。
この格助詞の「と」、今回の例では2つの用法で使われているわ。
1つ目は「相手」
「~と共に」の意味ね。
だから「愛の言葉は花 "と共に" 咲く」と取れるわよね。
2つ目は古典文法での「比喩」
「~のように」の意味よ。
♪春のうららの 隅田川~ から
"櫂(かい)のしづくも 花と散る" の一節が有名な例かしら。
だから「愛の言葉は花 "のように" 咲く」の意味になるわよね。
中学と高校の内容が混ざっていたけれど、いかがかしら?
なんかそんなの習ったなー、って人もいると思うわよ。
今日の授業はここまで、聞いてくれてありがとうね。
ねえ、琴葉。
恥ずかしいから特別授業では言わなかったけれど、このタイトル、もう一つ掛詞が隠されてるのよ。
『愛の言葉は花と咲く』、貴女も気づいてるでしょう?
「言葉」、琴葉、そう、貴女のことね。
貴女がいるなら私もいるわ。
「花」、私は桜と藤だから花よね。
貴女の言葉、私と共に花のように咲かせましょう?