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寝手場架莉五作目 ミニ小説第四話

紅茶花伝はロイヤルミルクティー派。
こんばんは、中の人です。

ちょっと間が空きましたが、
とうとう初の連載モノに手をつけてしまいました。
「失恋回路はどこですか?」

これも実は2016年頃に書いた過去作です。
ちょっと手は入れましたが。
長編をいくつも書いては投げ出していた時期で、
これも途中で止まったままでした。
「深刻な話が多いのが、うつりとの良いところ」
ではありますが、
まあ、寝手場架莉はくだらない担ですから。

問題はセンスが古いし、ありがち設定過ぎること。
だからお蔵入りしてたのですが。
それと、最後までたどり着くかどうか。
ぬるく見守ってください。




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ミニ小説
「文芸部的な、余りに文芸部的な」
寝手場架莉

「腹が減った」
二畳の部屋に寝転び、カビた天井を見ながら寝手場は呟いた。
もう二日、もやししか食べていない。
もやしは一袋三十九円。
これに醤油をかけるだけ。
ガスも止められているから生のまま。
「いや、腹の虫より本の虫」
そう言いながら上半身を起こす。
「ジャンプを買いに行こう」
もやしで我慢して二百九十円のジャンプを買う男。

根津駅前に書店がないことを嘆きつつ、コンビニでジャンプを買う。
店から出て、家まで待ちきれずにムフフなページを探す。
「きっと漱石だってまずはムフフだろう」
ページをめくる指先は、真っ白な原稿用紙に向かう指とは違う高速タッピング。

ふと、耳に雑音が。
見ると二人組みの老人がギターを奏でている。
「こんな地味な駅で弾き語りとは」
好奇心に引き寄せられ、近くで聴く。
演歌とヒップホップとお経とヘヴィメタルを足して500で割ったような音楽だった。
「あんたたち、いい年してそんな音楽やめて明菜ちゃんをやりなさい」
無理矢理ギターを止める。
「うるさいな。俺たちは世界に向けて魂の音楽をやってるんだ」
ガラの悪そうな男が言う。
「何を言う。明菜ちゃんは世界レベルなん……」
「聖子ちゃんならやってもいい」
もう一人のガラの悪そうな男が言う。
「どういう線引きなんだ。いいからそれを貸しなさい」
寝手場は触ったこともないギターを奪う。
「私が世界レベルの歌を歌うから、君たち演奏しなさい」
寝手場の無茶苦茶な歌とギターに合わせ、ガラの悪い二人がギターと段ボールドラムを始める。

気持ちよく歌っていると、どこかで見た老人が来た。
「エレキとアコギってどっちがどっちだい?」
寝手場は自分も割って入ったくせに、老人を無視して歌い続ける。
「教則本を買ったんだけど、弾けないんだよ」
この老人は教則本の前にギターを買ったのだろうかと、歌いながら寝手場は思った。


なつかしい痛みだわ
ずっと前に忘れていた
でもあなたを見たとき
時間だけ後戻りしたの


今日はもやしだけでなく、エリンギも買うか。
しいたけは高いから。

1件のコメント

  • 待ってました!シュールな老人キャラが大好物なんです。
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