現代日本で卓越した知性(理系大学生)を持ちながらも孤独に生きていた「僕」は、突如として魔法と魔物が存在する異世界へと転移する。
言葉も通じず、行き倒れて「乞食」にまで身を落とした彼は、出会った魔女と戦闘に巻き込まれ、死を覚悟したが、逆に魔物を倒してしまう。彼女の所属するラザ達の冒険者パーティに拾われることとなる。
この世界で彼は、前の世界の名残から「ウメサン」と名乗った。ウメサンは前の世界の高度な科学知識(300年後の物理や化学、数学)を隠し持ちながら、目立たず平穏に生きる「隠居生活」を望んでいた。しかし、世界は彼を放っておかなかった。
パーティには、過酷な運命を背負った2人の魔女と出会い、深く関わっていく。
一人目は、一族を魔物(ポドやローゼ)に滅ぼされた、鍛冶集落ルテニ族のニール。
二人目は、ニール同様一族を魔物に滅ぼされた、高知脳集落ハフニ族のディラ。ディラは襲撃の際、ポドの呪いで声を失い、顔に醜い痣を生じた。そのせいで「白衣の悪魔」と蔑まれながらも、科学(理)を信じて生きてきた。
ウメサンは、前の世界の感覚で彼女たちの美しさや価値を認め、ニールの「過去」を受け入れ、ディラの「痣」を偶然身についていた治癒魔法で治療する。
さらに、ウメサンがもたらす「現代科学の概念」は、2人の魔法体系を劇的に進化させた。
南部地域の脅威であった魔物達との死闘において、ウメサンはニールやディラと心身ともに結ばれ、自らもセリグナイト(ダイナマイト)を再現して戦場を支配。民衆から、絶望の世界を救う救世主「ミロク(弥勒)」として熱狂的に崇められるようになる。
魔物との決戦を終え、一行はガウス商会のある街「ヒフガ」に帰還する。ウメサンが目利きした鎧のおかげで命を救われたウメサンに対し、商会の店主は涙を流して感謝し、彼らを「親戚」として迎え入れる。
しかし、ウメサンの超常的な功績は、ヒフガの統治機構(領長やモフ師団長、そして商会の息子リュード)をも動かしていた。
ヒフガ政府は、ウメサンの技術と人気を独占・管理するため、わずか数時間で軍直轄の研究所設立を決定し、彼の背後に公安警察をつけて監視を始める。
さらに、研究所の所長として、帝都からディラの元同僚である物理学の権威ピエル博士が招聘される。
ピエルは当初、冒険者であるウメサンを侮蔑するが、ウメサンがディラを名誉を守るために披露した「微分積分」の数式を目の当たりにし、驚愕。彼を「世界最大の金脈」と称賛し、ヒフガに留まって共に科学を発展させようと激しく引き留める。
本音では魔物との戦いを嫌い、研究室での平穏な生活に心が揺らぐウメサン。しかし、かつて日本で交際していた理想主義のディラ似た彼女「由樹」の面影を脳裏に浮かべながら、彼は現在の婚約者たち(ニールとディラ)に深い傷を負わせた魔物(ポドとローゼ)への「私的な復讐」を遂げることを冷徹に決意する。
自分の体力が日々低下していることを自覚しつつも、ラザたちの恩に報い、ニールの母親が待つ「帝都」への任務を全うするため、ウメサンは政治の渦中へと自ら踏み出していく。
高度な知性ゆえに己の破滅を予感しながらも、愛する者たちのために牙を剥くウメサンの、新たな戦いが幕を開けようとしていた。
(一部修正・加筆)