『ダイヤのバッジ』裏話

本日完結いたしました『ダイヤのバッジ』。本作についての裏話をいろいろ綴っていこうと思います。

さて、本作が『ヒロインは男の子』とある繋がりがあることをお気づきの方はいらっしゃいますか? 最後まで『ヒロインは男の子』を読んでくださった方にはわかるかしれません! 紡や航平が新たに演じることになる新作の舞台『ようこそ、BL学園へ!』と筋書やキャラクター名が同じであることに気付いた方、いらっしゃいますか?

そうなんです。本作は、『ヒロインは男の子』で紡たちが演じることになる作品を小説化したものなんです。とはいえ、『ヒロインは男の子』では、『ようこそ、BL学園へ!』はコメディ作品であったはず。『ダイヤのバッジ』はコメディではなく、切なくも美しい作品にしようと、構想を練る内に考えが変わりました。というのも、風景描写や心理描写がとても美しい作品がカクヨムで読んだBL作品に多く、こういうものを書きたいという欲が出て来たからなんです。また、『リーベストロイメ』の美しい表現が好きだとおっしゃってくださる読者さんにたくさんお会いしまして、だったらコメディは前作でやったのだから、今回は思い切り真面目に切ないストーリーを書いてやろうと。

なので、学園の描写やキャラクターたちの心の機微を繊細に描こうと心掛けました。まだまだ拙い部分はありますが、これが私の精一杯ではあります💦

また、「聖紫学園」という名前ですが、あまりにも「BL学園」とするのは安直だなと思いまして、何か別の学園名をつけようと思いました。コメディ作品でもありませんし、よりこの作品を引き立てる学園名は何かといろいろ思案したところ、この名前になりました。何故「聖紫」というのか、ということですが、「紫」というのは昔、男色を象徴する色だったのだそうです。そこで「聖なる紫」、つまり、「聖なる男の子たちが恋する」学園という意味を持たせています。後、これは真面目ぶった今までの話からするとズッコケられると思うんですが、「聖紫学園」と書いて何と読むことになっていますか? そういうことです(笑)ここで下ネタかよ、と突っ込まれそうですが、すみません(笑)でも、男の子たちは下ネタが大好きな人種ですから、こんな頓智が効いているのも一つの興として許してください(^-^;

更に、タイトルを『ようこそ、BL学園へ!』から『ダイヤのバッジ』にした理由としては、『ようこそ、BL学園へ!』であればコメディタッチなBL物だなと一目でわかるタイトルではあるのですが、内容的にコメディをやめたことでタイトルを変えることになりました。それに、『ようこそ、聖紫学園へ!』と書いても、なかなか「聖紫学園って何?」ということがイメージして貰いにくいと。「BL学園」の方がこの場合は効果的です。そこで、何か別にいいタイトル名はないかと思案した結果、本作において重要な意味を持つアイテム「ダイヤのバッジ」をタイトルにしようと思いつきました。

また、本作は私初の異世界ファンタジーになります。基本的に私は、現実に即した小説を書きたいのと、ファンタジーの設定を考えるのもあまり得意ではなかったのですが、ルビー小説大賞に応募するため、ファンタジックな世界観の方が受けがいいのかもしれないと思ったので、頑張って異世界を描いてみました。テンプレ展開ではないので、これで受けがいいのかと言われると、「うーん」と思ってしまいますが、それでもファンタジーという分野で一作の長編小説を完結させることが出来たのはよかったなと思っています。

そうそう。この作品のもう一つの初めての試みは三人称小説であるということです。今までは基本的に一人称小説ばかり書いて来ましたが、今回三人称視点を選択した理由。それは、『ヒロインは男の子』の読者の方から多角的な視点がほしいと言われたことです。私は一人称小説に主人公以外の視点が入るのはおかしいと思うので、『ヒロインは男の子』で多角的視点から描くことをしませんでした。しかし、主人公以外の視点も入れたいなと思っていたことは事実。特に、ラブストーリーにおいては、主人公の恋人側からの視点が入ることで、より物語に深みが増します。ただ、三人称で書くのに慣れておらず、どれだけうまく扱えたかはわかりません。ただ、希空だけでなく、祐真からの視点も描けたことは自分としてはよかったなと思っています。

ということで、もしまだ読んでいないという方がいらっしゃいましたら、こちらのURLからぜひお越しください。
https://kakuyomu.jp/works/16816927861491663895


*以下ネタバレを含むので、まだ読んでいない方はブラバを!

















最後は泣かせるエンディングにしたかったので、ハッピーエンドでありつつも、何処か切なさも感じさせる余韻を出そうと思いました。ということで、魁と怜生は希空たちとの再会を果たすことなく、物語が終わります。また、君江はひたすらに正雄の幸せを願いつつも、聖紫学園で暮らす正雄と会うことは最後まで出来ません。この後のストーリーがどう展開していくのか、後は読者の皆さんにお任せしたいと思います。

学園の世界観についてですが、割とスピリチュアルな雰囲気を醸し出していると思います。私、実は冝保愛子さんなどの霊能者の番組が好きで、YouTubeなどでよく見るんです。冝保愛子さんなどが語られている「死後の世界」というのは、本作を執筆する上で一つの参考となりました。

また、聖紫学園という世界は、聖書のモチーフもよく用いられています。学園の美しい庭園は、エデンの園がモチーフ。希空を禁じられた学園の外の世界へと誘惑するのは、アダムとエヴァを誘惑したのと同じヘビ。第三章第17話で嫉妬に駆られた祐真が悔しさをぶつける木は、エデンの園の真ん中にそびえる「知恵の木」がイメージです。といっても、私はキリスト教徒ではないので、信者の方からすれば「不敬者!」と怒られかもしれませんが💦

本作で何度か触れられる宝石言葉と花言葉。これは、プリキュアシリーズで一番人気のある『ハートキャッチプリキュア』で、「心の花」がモチーフになっていましたが、そのアイデアから着想を得ました。「心の花」って、文学的で素敵だと思いませんか? そもそも「花言葉」や「宝石言葉」という概念自体、文学的でいいなと思ったのです。宝石と花に込められた意味を、キャラクターの心情にリンクさせることで、風景描写に必然性を持たせようと思いました。

そうそう。風景描写といえば、この聖紫学園という場所。折角、角川ルビー文庫のコンテストに応募するということで、着想は『タクミくんシリーズ』から得ています。また、荘厳な洋館のイメージは、十年前にテレビドラマでやっていた『メイちゃんの執事』で用いられたセットや、明治期の旧制小学校として有名な旧開智学校をイメージしました。あんな時代を感じさせる荘厳な造りの建物と、異世界感溢れる美しい風景に囲まれた学園という感じです。明治期の旧制学校の洋館建築を参考にしたのは、矢張り、正雄や龍之介が生きた時代を意識しています。とはいえ、流石に明治時代というのは、お祖父さん世代としてもあまりにも古すぎるでしょうか。そこは、「イメージ」として、古い時代を象徴するものとして考えています。

というのも、こういった古い建築物の中で、美少年たちが戯れる描写が好きなんです。長い時間を経て埃がたまり、黒ずんだ古い建物で、真っ白な肌を輝かせて美少年たちが戯れている。古いモノと新しいモノが交錯する感じが、何だか心をくすぐるな、と思うんです。私は、そこはかとないエロスをそこに見出すんです。だから、古めかしい建物とBLを併せて書きたかったんです。

また、本作を書き上げ、完結させることが出来た今、新たな課題も見つかっています。まずは、所々、描写が走っているなと感じる部分があること。ただ、描き過ぎも逆にくどくなってしまうため、くどい部分もあるのではないかと危惧もしています。ただ、これは何度も読み返す中で見えて来るものですし、恐らく数か月後にもう一度見返したら更に見えて来る部分があるかもしれません。

それに、希空と祐真が互いへの恋心をもつきっかけについては、もう少し説得力のある理由付けが出来たのではないかという反省点もあります。ただ漫然と相手を好きになり、恋愛を展開するような筋書はダメだと、例年の講評にも書かれている通り、やはり、恋愛に展開していく必然性をもっと効果的に描くにはどうすればいいのか、勉強が必要であるように感じます。

二人の恋人関係についても、あまりにも希空と龍之介との仲に祐真が嫉妬する場面が多く、希空と祐真の信頼関係自体をもっと描くエピソードが欲しかったと思います。そうすれば、希空が龍之介に心が傾きかけた時の祐真のショックがより読者の心を打つように出来たと思いますし、希空と祐真の恋人関係が危機に陥った時、それでも尚、恋人同士でいたいと二人が思う必然性もより明確になったのではないでしょうか。

また、登場するキャラクターに過不足があってはならないとも講評でよく言及されていますが、魁と怜生についてはもう少し掘り下げることが出来たのではないかと思わないでもないです。希空や祐真と友情を深めていく様子をもっと描くことが出来たら、また、彼らの過去話ももっと掘り下げることが出来たら、彼らが学園に残ることにした理由もより効果的に見せることが出来たのではないかと。より彼らとの交流を描くことで、彼らとのかけがえのない友情を築いていくもう一つの「愛の形」を大きなテーマの一つに出来たかもしれないと思うと、ちょっと残念。二人共、私としては結構重要なキャラクターたちなのですが、審査員の目から見て「余計な」キャラクターに分類されてしまわないか、少し心配ではあります。

ただ、これらの要素を全て詰め込んだ時、果たして18万字以内で収まりがつくのかという問題も生じます。短い字数でこれらの要素を詰め込んだ結果、かなり「くどい」印象を読者に与える危険もある。展開が走り過ぎてしまう可能性もある。そこのバランスの取り方がとても難しいと思いました。

以上の反省点を生かし、次作ではよいよい作品を生み出せるように頑張りますので、また応援いただけると嬉しいです。もし、ご指摘の点などありましたら、何なりとお申し付けください。

ですが、本作については今までの作品の中で一番自信があります。『リーベストロイメ』の終盤で展開が走ってしまったこと、『居場所』と『リーベストロイメ』のエンディングが被ってしまったこと、『ヒロインは男の子』でストーリーが間延びし、キャラクターが多すぎて関係性が複雑になってしまったこと。等々、今までの作品で私が感じていた課題を本作では気を付けながら書きました。伏線も散りばめたり、風景描写については本作が一番であると思いますので、ぜひ楽しんで読んでいただけたらと思います。

今まで応援、ありがとうございました。

2件のコメント


  •  ちなみに西園寺さんが航平くんを「あざといでしょ!」と叱るシーン。

     こういう細かな積み重ねでコメディ要素になるんだなぁとか感じた次第です。
     
  • YTさん
    めっちゃ『ヒロインは男の子』読み込んでくださってる!
    ありがとうございます(*^^*)
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