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【月の記憶(アーカイブ)】の企画趣旨とあとがき

この作品に関しては確認して問題なかったのですが、それでもバランスの問題もありますし、許容、というレベルだったので、近況に移させていただきます。(前後してすみません)

以下、コピペ


【企画趣旨】


こちらの作品は、「【急募】月の清掃隊」という企画による小説です。

たねありけさんから提示された下記の要項を守り、短編を描くという条件で書かせていただきました。

(企画内容より引用)


【募集要項】
・掌編を応募ください。5,000字以下の作品とします。
・作中に必ず『月が綺麗ですね』という登場人物による台詞を入れてください。
・下記の【必須台詞の判定】を遵守ください。
・なお、この言葉で純文学的な純愛を目指すのか、台無しなシーンを描くのかは自由です。
・どなたでも参加いただけます。
・できれば他の方の作品を読んで、コメント等してあげてください。

【必須台詞の判定】(少し追記しました!)
■許容される例
・「フヒ、つ、月、が……き、綺麗でででで、すね」 (どもり、沈黙、前後の言葉)
・「月が、そこはかとなく、綺麗ですね」 (ニュアンスを濁すような言葉の挿入。ただし否定や反語など意味が大きく変わるものは不可)
※できるだけ原文のままでご利用ください
・電話、ビデオ通話等の遠隔でも、リアルタイム発言は許可されます

■不許可の例
・「月は綺麗ですね」 (助詞の置き換え)
・「綺麗ですね、月は」 (倒置法などの語順の変更)
・「The moon is beautiful !」 (多言語による言い換え)
・「月が綺麗だべや」 (方言等による言い換え)
・「月が綺麗だな」 (人物の口調によるもの。あえて原文での発言に意味を見出してください)
・「十月が綺麗ですね」 (別の単語として扱う)
・ネットワーク上の文字だけでの発言


【以下の場合は主催者による退場となります】
・作品が5,000字を超える場合
・上記【必須台詞の判定】の不許可例に触れる場合
・当該台詞が地の文である場合、または書かれていない場合





【あとがき】


今回は文字数制限5000字以下というルールがあったので、またまた補足を少々。

本来規定内で全てを表現しきる、というのが小説のあるべき姿なのですが、この言い訳じみたあとがきをお許しください笑

まずは主催者である、たぬありけさんに感謝を。そして、たまたまXで見かけたこの企画を知るきっかけをくださったMaya Estivaさんにも重ねて感謝を。


今書いている長編に疲れた時の息抜きに、全く角度の違う作品を書くというのはかなりリフレッシュになって、かつ、みなさんと交流できて2度美味しいです笑

また見つけたら参加したいので、知ってる方は教えてください
開催する方も教えてください笑



はてさて、あとがき本題にいきましょう。


前提条件にも記載しましたが「月が綺麗ですね」という文学に精通していない人ですら知っている超超有名なセリフですね。
これを使っていかに面白い作品を作るか?というか課題です。

まず最初に思いつくのは、現代の恋愛物で使う、あるいは夏目漱石の時代を舞台にする、そして「実は別の意味でした」的なひねり、だと思います。

もちろん王道で素敵な物語は描けるでしょうけど、きっと他の皆さんも同じように良いものを書くと思うので面白味がなく、埋もれてしまうかな、って避けました笑


あと陥りやすいのが、「月が綺麗ですね」というセリフをそのまま「好きです」と入れ替えたってなんの支障もない物語にしてしまうパターンですね

あるいは本当に月が綺麗という事実をいうだけだと今回の企画の意図に反してしまうパターン。

これはとりあえず避けたいと思いました。


僕も「月」という単語をまたダブルミーニング的に利用しようかと考えたのですが、前作「すのうどろっぷ」でやったのでつまらないかなと思って今回は別の角度で考えました。

それが今回の、月の記憶(アーカイブ)になります。

あえて、古風な言葉を現代より遥か未来と融合させることで新しくなるかなぁ?みたいな安直な発想です笑

古典的モチーフを現代的に再解釈したら面白いかなと。

この物語は、夏目漱石の時代から受け継がれた「言葉の力」が、未来においても人の心を動かし、世界を変えうるのだという、希望のメッセージを乗せました。


「月が綺麗ですね」

という言葉に、秋兎は三つの意味を込めました。

一つは、この偽りの月が浮かぶ世界への、最大限の皮肉。

一つは、君と共に新しい世界へ行きたいという、真摯なプロポーズ。

そしてもう一つは、答えを君に委ねるという、覚悟。


本編ではあえて提示することなく、読者の方それぞれに想像してほしいと余白にしています。相変わらずひとつの言葉に多重の意味を持たせるのが好きですね僕は笑



そして、流れが前後してしまいますが、本当の月を見つけた際の秋兎の葛藤のシーン。


「僕らの穏やかな時間は終わる」の意味。

これは、ルナとの「共犯者ごっこ」が終わってしまうという意味です。

今までの二人の関係は、

秋兎・システムが〝ノイズ〟と判断した古い詩やおとぎ話を見つける。
ルナ・システムの守護者でありながら、それを黙認し、密かに楽しむ。

という、ルールの中で行われる、危険で知的なゲームのようなものでした。

報告会という名目のもと、監視の目をかいくぐりながら、二人だけの秘密の時間を共有していました。それはスリリングでありながらも、まだ「見つかったら怒られる」程度で済む、ある意味で「穏やか」で「安全」な関係だったんです。

しかし、秋兎が見つけたのは「本物の月」と「外に出られるエアロック」という、この世界の根幹を揺るがす物理的な真実です。

最初にルナが警告してましたよね「あまり面白いものを見つけても、騒がないでくださいね。世界の平穏を乱す不秩序は、速やかに除去するのが私の仕事ですから」って。

これをルナに伝えた瞬間、彼らの関係はもう「ごっこ」ではいられなくなります。知的で安全なお遊びは終わり、現実世界のルールを破壊する、本物の「共犯者」になるかどうかの選択を迫られる。もう、ただ詩について語り合うだけの穏やかな時間には戻れない、という意味です。


そして、「世界のすべてを捨てるかどうかの選択」の意味

これは、ルナに「世界の守護者」か「一人の人間」かの選択を強制してしまうという意味です。

この情報を知ったルナに残される選択肢は、基本的に二つしかありません。

1.システムの守護者として、秋兎を「ノイズ」として処理する。秋兎の報告を受け、彼を反逆者として拘束し、エアロックを完全封鎖する。


これは彼女の職務であり、世界の平和を守るための「正しい」行いです。しかし、それは秋兎と築いてきた関係を完全に裏切ることを意味します。


2.一人の人間として、秋兎と共に世界の「嘘」を壊す。秋兎の言葉を信じ、自らが守ってきたシステムを裏切り、外の世界へ出る手助けをする。


これは彼女が今まで生きてきた意味、信じてきた正義の全てを捨てることを意味します。


どちらを選んでも、彼女の人生は決定的に変わってしまいます。もう何も知らなかった頃には戻れない。

秋兎は、自分が心惹かれている女性に、そんな過酷で「取り返しのつかない」選択を強いることになる、という罪悪感と責任を感じているんです。

まとめると、このセリフは「彼女との穏やかな関係を失いたくない」という個人的な想いと、「それでも彼女と本物の世界を見たい」という願いの間で揺れる、秋兎の深い葛藤と、ルナへの思いやりを表しているんです。


わかっていただけたでしょうか笑


そしてみなさん。
かの有名な「月が綺麗ですね」に対しての返答として「死んでもいいわ」がセットになっているのをご存知でしょうか?

これは、二葉亭四迷の小説訳(ロシア文学『片恋』)で登場する一節で「Yours(あなたのもの)」を「死んでもいいわ」と文学的に訳したのが、あまりにも夏目漱石の「月が綺麗ですね」と親和性が高くセットになってしまっただけなのです。

時代も作品も全くの無関係がくっつくなんて、それもまた詩的で素敵ですよね。


それを今回、「死んでもいいわ」ではなく、あえて真逆の「ここから、始めましょう」という返事に変えています。

こちらもまた秋兎とは全く違う、ルナなりの三つの意味が込められています。

1. 告白への、最も誠実な「YES」
一番わかりやすい意味は、秋兎の「月が綺麗ですね(愛しています)」という告白に対する、彼女なりの「YES」です。ただ「私も好きです」と返すのではなく、「あなたとの関係を、この瞬間から始めたい」という、未来を見据えた非常に誠実な受諾の言葉になっています。


2. 「死んでもいいわ」との対比。受動的な愛ではなく、能動的な誓い
古典的な返事である「死んでもいいわ」は、「あなたと結ばれるこの瞬間が幸せの絶頂で、もう思い残すことはない」という、ある意味で受動的で完結した愛の表現です。
しかし、ルナの「ここから、始めましょう」は正反対です。
これは、「この瞬間がゴールじゃない。ここが私たちのスタートラインだ」という、能動的で未来志向の誓いの言葉です。
偽りの世界を知った今、困難が待ち受けているかもしれないけれど、未来を二人で能動的に築いていきたいという、彼女の強い意志が表れています。

3. 世界への革命宣言
この言葉は、二人の恋愛関係の始まりだけを意味しているのではないです。
彼女が自らの手で《空幕》を終わらせた、まさにその場所で、その瞬間に言っているのが重要です。

つまり、
「偽りの平和と、管理された嘘の時代はここで終わり。この真実の月の下で、本当の世界を、本当の人生を、私たち二人から始めましょう」
という、世界に対する革命の宣言でもあるんですね。


秋兎の個人的な愛の告白が、世界を大きく変える引き金となり、それに対してルナが「新しい世界の始まり」を宣言する。

この言葉によって、二人の恋物語が、人類の新たな一歩と重なる壮大な物語になることでしょう。


はてさて、二人はどうなるのか、楽しみですね。


ちなみにですが、最初この企画を見た時は「ずっと前から月は綺麗でしたよ。」と返事させる気満々で書き始めましたが、気付けば変わってしまいました笑

またどこかで使えたらなと思います。

余談ですが夏目漱石の「月が綺麗ですね」という言葉は、「あなたも同じ気持ちですか?」という意味で発していると僕は考えています。同じ感性を持ち、同じ感想を述べ、同じ気持ちになっている。

「私はあなたが好きですが、あなたも同じですか?」

その遠回しの言葉が「月が綺麗ですね」なんだと勝手に解釈しています。きっと偉い学者さんたちが色々解説してくれているだろうし、僕の解釈も誰かのと似ているかもしれませんが笑

夏目漱石が暗に伝えたかった意味を踏まえた上で、「死んでもいい」を超える返事があると良いですね笑


すみませんまた長々と。

(あんだけ告白だの失恋だの書いといて、ストレートな恋愛モノ書かないんかい!って自分でも思っております)

ではでは〜。











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