エピローグ5話マリソフィ②(その後)
没ではないのですが入れるタイミングがなかったので。
エレノアが蹴り出したあとの二人。
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「――――おや、聖女殿。私になにか用かな」
おずおずと近づいてきた少女に、蔓薔薇の神フォッセが名の通り薔薇のように華やかな顏をほころばせる。緊張に強張る少女は、その笑みにさらに体を固くしながら、真っ赤な顔で挨拶の言葉を絞り出していた。
そんな姿を横目に、トゥールは少女とともにやってきたもう一人。選んだ覚えのない聖女に目を向ける。
勝手に聖女を名乗り、勝手に部屋に上がり込んで掃除をし、今はその図々しさの欠片もないほど緊張した偽聖女。小狡いようで存外律儀、意地が悪いようでその実正義漢、保身に走りながらも思いがけず無茶をする。どうにも放っておけない聖女未満の彼女を前に、トゥールは待ちわびたように口端を持ち上げた。
「やーっと話をする気になったか、お前」
トゥールが言えば、彼女は緊張しながらも、顔を上げて気丈な目を向けてくる。
さて、『未満』はいつか取れるだろうか。気の強い少女の視線を受け止め、人好きの神は期待を込めて目を細めた。
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二人の話はここがはじまり。