小説投稿サイト「ノベルアップ+」の表紙用に作った画像を紹介しがてら、作品について振り返りたいと思います。
※ネタバレあり。注意!
※画像は「写真AC」様からお借りしたものを加工しています。
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『森の孤独』
https://kakuyomu.jp/works/16816700426599344902お題:宿題
ジャンル:日常ファンタジー
夏休みに補習を受ける敦(あつし)は、教師から不思議な話を聞く。
その夜、彼は奇妙な夢を見た。一面の雪景色と、耳慣れない言葉を話す男。
行方不明の父を追い、敦は山へ向かう。
父親代わりの教師との交流の日々、そして、その終わりが来る日。
【主人公】
名前:敦(あつし)
あだ名:あっちゃん
みんなの兄貴分。面倒見がいい。
中学三年生のときに父が行方不明になる。
家が農業を営んでおり、高校を卒業すると同時に家を継ぐことを決める。
農家特融というか、離れていても聞こえるように少し間延びした話し方をする。
そして声が大きい。日に良く焼けている。たぶんお父さん似。
1話目にもゲストキャラとして登場し、4話にも名前が出てくる。
農作業をしていると、たまに茶太郎を散歩させている建人と会うことがあり、そのときに茶太郎の写真を撮らせてもらうことがある。
【執筆裏話】
あっちゃん(敦)と宿題。
このふたつが結びつかず苦労しました。真面目そうだから、普通の状況では宿題を溜め込むことはなさそうだなと。
お題の扱いとしては、作中にちらっとキーワードを出すだけでもOKなのでしょう。
でも、1~4までお題をメインに据えた作品を書けていたので、できれば5もそうしたいと粘りました。
あっちゃんというキャラを掘り下げていくうちに、しっかりしているのは父親がいないせいかもしれないと思うようになりました。また、修一の絵日記にあっちゃんの弟の名前が書かれていなかったことから、弟は体が弱いのかもしれない、とも考えました。そこから「弟が塞ぎ込む」というストーリーに繋がりました。
悩んでいるうちに、夢を見ました(またかい)。
足元は一面の雪に覆われ、見知らぬ男性が立っていました。物音は聞こえず、雪の冷たさも感じません。男性と話した気もしますが、意味のある言葉は受け取ることができませんでした。
夏に雪山という組み合わせが面白かったので使うことにしました。
が、どう組み合わせるか悩みました。「真っ白な雪山=真っ白な状態の宿題」と取ることもできます。
考えているうちに、もしかしたらあの男はあっちゃんのお父さんなのかもしれない、と思いました。
A4コピー用紙にボールペンでぐりぐりと情報を書き込み、話の案もいくつか書き出します。
そのメモの内容がこちら。
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1.雪山
気がつくといつの間にか雪山にいた。見知らぬ男がいて、何か言われた。
→知ってる場所?
→夏なのに雪?
→見知らぬ男は誰?
1-①
冬に雪山で死んだ父の夢→宿題とどう繋げるか?
1-②
祖父の夢→どういう話にするか?
1-③
雪山=やってない宿題の暗示
2.教師との交流
敦は夏休みに学校で補習を受けさせられる。
2-①
教師は敦に子どもらしい時間を与えたかった。
2-②
教師は子どもを失くしており、敦を自分の子どものように見ていた
3.体の弱い弟と雪山
――――――――――
1話で出てきた「山に取り返されるときはあっというま」という言葉を再度使おうと思い、「実はあっちゃんの父の口癖だった」という設定が浮かびました。
私の話の作り方は、たくさんの情報をすべて頭に入れ、脳内で再構築するというものです。
敦。宿題。夏休み。雪山。父親。夢。弟。教師。交流。子どもらしい時間。口癖。
それらのキーワードが出そろった瞬間、頭の中に物語が浮かび、気付けばコピー用紙に物語を書き始めていました。まるで最初から用意されていたかのように、最後の一文まですらすらと書き終え、あとから音声入力、推敲をしました。
書き終えてみると、いろいろな要素がぎゅっと詰まっていて、そのわりに長さもちょうどいい作品が出来上がりました。勢いで書いたので二か所ほど矛盾点があり、そこを修正するのにやや苦労しましたが、話づくり自体はスムーズにいったので、いつもこうだといいなと思いました。
エピソードタイトルになっている「Waldeinsamkeit(ヴァルトアインザムカイト)」はドイツ語で「森の中で孤独に過ごすゆったりとした寂しさ」という意味合いの言葉だそうです。他の言語には翻訳できない言葉を紹介するサイトを参考にしました。
この言葉は、作中で関口先生が披露してくれた雑学でもありますが、同時に、敦の父がずっと独りで森の中にいる様子も表しています。
最初に表紙を作ったときは「森の中の孤独」というタイトルにしていましたが、「森の孤独」という曲があると知り、タイトルを変更しました。
表紙画像は他の作品のものよりもかなり時間をかけて作りました。
教室の窓の向こうには、敦の父が亡くなった雪山が広がっています。
人の指は夢の中で敦の父が指していた様子を表しています。本来は下(沢)に向かって指しているはずですが、上向きにしたのは「未来へ進みなさい」という敦へのメッセージを込めています。
また、作中では話の区切りとして「☟」マークを使っていますが、これはこの画像の指をイメージしたものでもあり、地域によっては葬式の案内として使われる図案でもあります。
このように、最後の作品はいろいろと含みの多いものになりました。
5作目をうまくまとめられるか不安でしたが、読んでくださった方からの反応も良く、ほっとしています。
(*´ω`*)