うちの息子・大輝は6歳。今秋から小学生になった。
通学を見守ってくれているメイドさんの話では、毎日モテモテで女の子に囲まれているらしい。
特に年上の美人な女の子が大好きで、いつも手を握ってもらっているらしい。
「まったく、誰に似たんだろうな……」
呟いた瞬間、背後から冷たい視線を感じた。……おかしいな、リビングには妻しかいないはずなのに。
今は勉強の時間。文系は妻の担当で、理系は俺の担当だ。
「パパ、この問題わかんない」
「ちょっと変形して考えてみようか。まずは式をド・モルガンの法則で変形するのが大事だよ。」
少し考えて何か思いついたように手を叩く大輝。
「あっ、変換するとここの補集合と同じになるんだ!」
「よしよし、気づけて偉いぞ!」
アメリカの学校は数学のレベルがあまり高くないので、家庭で少し進んだ教育をするようにしている。
我が子ながら数学が得意なようで、スポンジのように吸収していくのが面白い。
この問題集は少し小学生には難しいかなと思ったが、心配なかったようだ。
コツを掴んだのか、スラスラと問題を解く息子。
我が息子ながら優秀で素晴らしい。気が早いかもしれないが、将来は我が母校・UCLAに入れてあげたい。
大学というのは大きな経験になる。会社の事業を広げる時も、同級生とのネットワークが本当に役立った。
俺もドラフト指名の関係で何年か休学していたが、オフにコツコツ単位を取り、なんとか卒業できた。
そんな経験もあって、息子にも努力の楽しさを知ってほしいと思っている。
妻は「楽しく通えればそれでいい」派だが、俺は「どうせやるなら頂点を目指せ」派だ。
大輝が数学の問題集を解き終えたので採点する。満点。我が息子ながら優秀だ。
「次は理科の勉強しようか! まずはキルヒホッフ則を使った電流計算の復習からだよー」
「あれ、難しいから苦手……」
「そんなこと言わないの! 知らないと中学校に上がった時困るからね」
俺は笑いながらも、つい真剣な口調になっていた。理系の教育レベルの低いアメリカにいるからといって、教育に手を抜きたくはない。
今月中にマクスウェル方程式くらいは理解してもらう予定だ。コンピュータの基礎は何といっても電気工学。
大輝は少し理科が苦手なようで、俺の教育計画に支障が出ている。俺の後継者たるもの、論理ゲートを使った簡単なCPU設計くらいは一人でできるようになってもらわないと困る。
大輝には野球をするように誘導しているんだが、なかなか乗ってくれない。
最近では小学校のテニスクラブに通っている。テニス好きなのは母親譲りかもな。
俺はテニスがあまり得意ではないので、最近はたまに息子に負けることもある。
まぁ、「俺もメジャーリーガーになれ」なんて無理強いはしない。子供に過剰な期待をかけるのは良くないことだ。
大輝は楽しく学校に通ってもらい、最低限UCLAに行ってウィンブルドンに出場するくらいになってくれればいい。
自分で言うのもなんだが、俺は子供思いのいい親だなぁ。
そんなことを思いながらコーラを飲む昼下がりであった。