『君のために用意する家』
『身近にあった【本当にあった怖い話】を集めてみた』
たくさんの☆をありがとうございました!!
以下、『君のために…』の番外編ショートショートです。
興味のある方は、どうぞおつきあいください。
◇◇◇◇
多紀「佐方さんは通信のお仕事をしてるんですか?」
佐方「通信のお仕事もしとるんです」
渋谷「有線もするんですよね」
佐方「あれなー……。嫌いやけどなー……」
多紀「難しいんですか?」
佐方「難しいっていうか……。有線やから。ケーブルが届かへんかったら、こう、途中でつなぐんやね、ケーブルを。そうやって付け足していくねん」
多紀「あ。なるほど」
佐方「それがもう、面倒くさい。教育隊におったときは、もう、教官とか助教に急かされて急かされて……」
多紀「あー……。映画やドラマで見るやつですか。周囲を取り囲んで、『ハリアップ!』とか言う感じの……」
佐方「圧がすごいねん。なあ、渋谷」
渋谷「ですねー……。『バディはどうしたっ。手伝ってやらないのか。見捨てるのかっ』とか言われますけど……。もう、取り囲まれたら、助けようがないですよねー……。あの囲みに入っていけない……」
佐方「ほんで、せっかくこう、ケーブルつないで、がーーって走って……。機械にとりついて、聞こうとしても、聞こえへんねん」
多紀「へ? なんで?」
佐方「途中で、定期的に教官が切るねん、ケーブルを」
渋谷「当然やるでしょうね、ええ」
多紀「なんで切るんですか!?」
渋谷「つなぐ練習でしょうし」
佐方「わざわざ、『よっしゃ!ようやくここまで来た!』ってところで、切る」
多紀「………」
佐方「『早くつながんかっ! 情報が届かないだろうっ』とかってまた怒鳴られて……。切れたケーブルをつないで必死に走るんやけど、また、どっかで切られて……」
多紀「……賽の河原状態」
渋谷・佐方「「まさにそれ」」