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江戸のシノワズリ~リバティとアントワネットとセクシーランジェリー~

最近は時間ができると国会図書館デジタルコレクションで黄表紙などの古典書籍を漁っております。

浮世絵っていうか、錦絵はカラーで見ていて楽しいのですが、なんかオモロイことないかな、と探すのは、草紙モノが今のところ良い感じです!

時代も1800年代に入ってくると、崩し字のスタイルが安定してきてなんとな~く読めますし(゚ω゚)ミエル、ミエルゾ……

本日ご紹介するのは桜月浮世雛形、文政9年(1826年)第11代将軍徳川家斉の時に発行された黄表紙です。

……さすが現代語訳が無いとなんも手掛かりが無くて読めないのですが、カラーでなくても挿絵が豊富で見ていて楽しいです。字が読めない子供でも、字が読める身近な年上の読書のお伴をしつつ物語を追う事が出来たのではないでしょうか。

現代に生きるわたくしは、そんな子供以下に崩し字は読めないんですけどね!根性です!!(゚ω゚)

で、ご注目していただきたいのが右側。
作中の舞台の一つとなっているのが、中国からの輸入の品々を扱うお店となっているのですが、右側の図にはその店頭商品が描かれています。

いろいろありますね。大きい筆とか、中国の風景を描いたお盆とか、天体儀とか。今も中華街の土産物屋の店先、こんな感じですよね。店の看板は「華夷産物奇品」と書いてあって、いよいよ土産物屋です。赤く塗りたいです。

その店の中、売り子の娘でしょうか、髪の結わえ方もどことなく中華風ですね。ぜったい雰囲気中華風なんですけど、日本人のなんちゃって中華好きは昔っからという証拠をこの絵で突き付けられましたね!女乱馬がいちばん可愛い!(゚ω゚) ←ドサクサ

ちなみに画面右下に娘さんのセリフ「ハテ、がてんのあらぬしるしではあるぞいのう」とあります。相手がこちらの申し出に同意してくれないのではないか、と腕組みをして心配しているようですが、なんのことでしょうね。私はここしか読めないので何が起きているのかさっぱり。

この絵の中華なところは、娘さんの髪型だけではありません。
長火鉢の脇に茶器が用意されているのですが、この茶器の様式は大陸のものです。「台湾茶器」でググって頂ければ、この絵に描かれたような茶器の画像が出てきますよ!

茶器以上に中華風を主張しているのが実は、暖簾です。

この暖簾、更紗です。印度更紗の文様の特徴が良く描き出されています。更紗は鎖国下にあっても大陸からの輸入品として、日本国内に持ち込まれました。
『翠雨』でも加ヶ里さんがセクシーランジェリーに仕立てております。ええ、遊郭で重宝されたらしいですよう。

この印度更紗ですが、17世紀にはヨーロッパにももたらされています。

かのフランス王妃、マリー・アントワネットも更紗を愛好した一人で、プチトリアノンで田舎娘に扮した時に更紗のドレスをいつも纏っていた、という逸話が残っています。

イギリスの貿易商だったLibertyは、輸入した綿花を原料とする西洋更紗のイギリス国内生産規模を拡大し、Liberty print といういまでも人気の根強い木綿生地のファブリック・シリーズを作り出しました。ヴィクトリア女王もこの Liberty print を好んだと伝えられております。

そんなことを頭に入れてもう一度、黄表紙の絵を見てみましょう。
看板娘がマリーアントワネットやヴィクトリア女王に、……見えんて。

この黄表紙が発行されたのが先に示したように1826年、マリー・アントワネットがフランス革命で落命したのが1793年、リバティは1875年の設立となっています。

さあ、世界地図と年表で確認しよう!今すぐにだ!!(゚ω゚)圧力

そんなことを面白がって調べているとうっかり日も暮れて参ります。集めた情報の行き場を失っているわたくしの脳ミソ、応援コメントを頂きますと時として壊れた蛇口のように放出いたしますので引かんといて下さいお願いします(´;ω;`)

『千鳥シリーズ』執筆のための調査で引っ掛かってくるこんな諸々の情報のアウトプットを、『翠雨』の連載後もぽつぽつ続けて行こうかと思っています。

……そろそろ本編を書き始めるか。

では!

*資料は国立国会図書館デジタルコレクションから引用しています。
桜月浮世雛形 https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/9893166

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