『BOOK』の主人公ことよっくん(本人が嫌いなあだ名)ですが、彼は開始早々大好きなおじいちゃんを亡くして悲しみに暮れています。場面は葬儀からの納骨から始まります。
今年初めから、いくつかの感想・批評企画に参加させていただいているのですが、その中で得た他者からのオープニングの印象は……よっくんの感情語りがくどい、でした。
感情はもっと衝動的なものである。読者に想像させるぐらいのちょうどいいのかと、自分では気付かなかった点が見えてきました。
が、それを受けて改稿するって訳でもないです。週刊誌・月刊誌で連載が始まった作品の1話目が、ちょっと批評受けたから書き直すって事がないように誤字脱字以外は極力書き直しはしないようにしています。
ただ、企画で得た“くどい”から、よっくんの姿が鮮明に見えて来ました。彼は割と頭でうじうじ考える。
何で悲しいか?→大好きなおじいちゃんが亡くなったから
おじいちゃんのどこが大好きだった?→厳しくとも可愛がってくれたから
そんな風に、頭の中でQ&Aをして祖父を亡くした悲しさを自分に納得させようとしていたのかも。気分でも気付かない内に。
それに対し、最近の更新の中で自分が産まれる前に亡くなった伯父の死が明らかになりました。想い出とアルバムの中でしか知らない人の死に、無念に、悲しくなった。
何で悲しくなったんだろう?と頭の中でQ&Aをしても、その答えははっきり出て来ない。血が繋がっているけれど、自分の中には想い出がない人の死で得た喪失感……感情って、悲しみってそういう事だよ。理由がなくても、文字にして納得させなくてもただ悲しめば良いんだよ。
と、“死”が身近になかったよっくんにとって、本当の意味で“死”と遺された者の感情を理解したように表現してみました。
誰かの読んでもらって批評してもらうって、やっぱり良いですね。自分では気付かなかった事も理解できるし、主人公にも物語にも新しい厚みを作れる。私の場合は、よっくんの人物像をより深く探る事ができた経験でした。
という、ちょっと長くなった裏話。