まさか、こんなことで炎上するなんて。
人気アイドルグループふぁにふぁにのココアは頭を抱えていた。
芸能人が新たな芸術的センスを披露するバラエティ番組『センバト』
色鉛筆、スクラッチアートと順調に出演したココアは、先日の放送で消しゴムハンコへと挑戦した。
結果は「才能なし」
意外な結果にスタジオは盛り上がり、出演時間も少し長かった。マネージャーも「これから上手くなって定期的な出演を目指しましょう」とほくほく顔だった。
SNSで炎上するまでは。
ココアの作品が、SNSで人気の消しゴムハンコ作家、ケッシーの構図とそっくりだというのだ。作家のファンとココア擁護派による「パクった」「パクってない」論争が勃発し、一夜にしてキャンプファイヤーさながらの様相だった。
収集をつけるには、ココア側もしくはケッシー側からの発信が必要な状況だろう。
センバトに出なければよかった。
昨夜から何度も浮かんでは消える言葉だ。マネージャーの熱意に根負けしたあの日の自分を恨むしかない。いや、ファンをなめていた自分を恨むしかない。
消しゴムハンコ作家ケッシーはココア自身だ。
学生時代からの趣味でこつこつ作成しては投稿していた。
グループでは事務所が管理するもの以外のアカウントは禁止されているものの、ココアはこっそり続けていた。ケッシーアカウントはココアにとって、鬱憤の捌け口だったからだ。
グループ最年長、ふぁにふぁにのココアはいつも笑顔で等しく優しい。
メンバーのどんな失敗も許すし、芸人のどんなギャグにも笑って対応する。ファンの間では「お母さん」や「聖母」と呼ばれることさえある。
対してケッシーの人気は、ただ消しゴムハンコの上手さだけじゃない。その作品の繊細さと本人のガサツさのギャップが受けているのだ。机の上には空き缶が乱立し、パックご飯とウインナーをこよなく愛する。口癖は「ばか」と「うんこ」
第二の炎上待ったなしだ。
それ以前に事務所からお𠮟りを受けるだろう。優等生イメージの崩壊も免れない。
あと数分でマネージャーが来る。どう考えても今後の相談だろう。事務所はケッシーと連絡を取ろうとするはずだ。
人気アイドルグループふぁにふぁにのココアは頭を抱えていた。
来週の物語が始まらないシリーズはお休みです。
次回は11月11日を予定しております(*_ _)