※※本作は記念SSです。本編とは伏線やらに矛盾が生じる場合もありますが気にしない方向でお願いします※※
『教えて祖王先生』
まだ、『ゲーム』の真価に気付いていなかった頃のこと。
異世界チートといえばマヨネーズだろうと考えた。
だが残念。すでにそれはあった。
それならリバーシだと思ったけれど、それもあった。
すぐにぱっと思いついたり実行できたりできそうな現代のアイディアで大儲けパターンは大体潰れていた。
世の中そんなに甘くないなぁと思っていたんだけれど……。
「先にできる人がいたらそうなるよねぇ」
目の前で美味そうにカレーを食べている祖王を見て呟いた。
祖王リョウ。
ベルスタイン王国を起こした人物で、大国にまで育てた有能な人物で、そして異世界転生者。
マヨネーズだってリバーシだってそれ以外だって知っている。
「いやいやいや」
俺のつぶやきを聞いて、祖王はカレーから目を離した。
けっこう質のいいこちらの服を着ているのだけれど、彼といると不思議とあっちの世界の飲食店にいるような気分になる。
なんか、ドライブインとかショッピングモールのフードコートとか、そういう雰囲気。
ファウマーリ様が一緒だとそういう空気感はかなり減るんだけどね。
減るというか、わけわからない感じになるというか。
「俺がなにかする前に、もうマヨネーズはあったから」
「え?」
「卵も酢も集落が発展しないと安定供給できないし、いまでも贅沢品だが、レシピは開拓団の頃からあったらしいぞ」
「ということは、もっと前から転生者はいた?」
「って、いうことだろうな」
「けっこういるんだね」
「ていうかそもそも、この世界が人間に優しくないからな。人間側はチートがなきゃ、いつ滅んでもおかしくないくらいだ」
「そうかい?」
そこまでやばいかな?
どうもピンと来なくて首を傾げていると、祖王にやれやれと首を振られた。
「お前はこの国が育ってから生まれたからわからんのだろうなぁ。まぁ、金等級になりたかったら魔境開拓経験は必須だからな。いつかわかるだろ」
「え?」
そうなの?
「ああ、冒険者の社会貢献としてはダンジョンでの魔石収集と魔境開拓が花形だが、魔境開拓の方が国家への貢献という意味でデカいからな」
「国家への貢献……」
「知らんのか? 金等級への昇級認定権は冒険者ギルドではなく国家が所持しているんだぞ」
「なんと」
知らなかった。
「冒険者ギルドは国家をまたいだ組織だが、そもそも世界がそこまで情報で繋がっちゃいない。ここらだって王国と小国家群以外はまったくだしな。それに、国の中に国の意向に従わない組織の存在なんて、普通は許さないと思わないか?」
「ああ、まぁ?」
「有能な冒険者は欲しいが、国内に言うことを聞かない自由戦力なんてポンポン出てきてもらっても困る。だから、最高の冒険者の証である金等級を認める権利は国家にあるってわけだ」
「なるほどねぇ」
「まぁ、そんなわけだ。アキオーン君」
君?
「そろそろお前も魔境開拓とかやらないか?」
「は? え?」
「カレーもなぁ。レシピはあるんだが香辛料が足りんのだよなぁ。あと米だ米。稲の種はいまのところお前しか持っとらんわけだよ」
「ええと……?」
「新しい開拓地で水田と香辛料の生産。やってみたいと思わんかね?」
「思わないですよ」
空になった皿に名残惜しい視線を落とし、スプーンを齧る祖王の提案を俺は断った。
現実でまで領地経営はちょっと……。
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☆20000、フォロワー30000人突破記念のSSです。
いつかやろうと思っているシーンの先取りみたいな感じですが、本編で使う場合は状況やら会話の流れやらが微妙に違っていると思います。
それでは、これからも『底辺冒険者おっさん~~』をよろしくお願いします。
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