※143話までは既読推奨
「お前は今日限りでパーティ追放だ」
「は?」
いきなりのリーダーの宣言に、俺は意味がわからずに首を傾げてしまった。
「え? 俺たち、いつからパーティを組んでたんだっけ?」
「言ってみたかっただけだ」
そう答えてブスっとした顔で酒を煽ったのは、バシフィール……通称バッシュ。
小国家群で活動している金等級冒険者だ。
彼はいま、ザルム武装国の開拓団を指揮している。
なのでリーダーだ。
だが、俺のリーダーではない。
俺はいま、商人としてやってきているのだから。
ルフヘム崩壊の影響はいまだ抜けきっておらず、小国家群は油断するとどこもかしこも食料不足となってしまう。
いつもはドワーフ王国まで売りに行っていたんだけど、どうもそこからきれいに分けられるということがなかったみたいだ。
そうなってくると国同士の外交力が問われたりするんだけど、ザルム武装国はそこら辺が弱かったらしく、ご飯が取っても高くなっていた。
ザルム武装国の相場の半値で売っても、王国相場基準なら大儲けという有様。
なのでしばらくは、ここでお野菜を売ることにした。
ここの商業ギルドを通すと普通に高値で売られてしまうので、自分で店を持って売るという有様。
お野菜屋さんですよ。
買い占め転売とかやって来るところがあるから、一人で買う量を制限したりとまぁ大変。
暴力とかで潰しにくるようなタイプの方がまだ楽。
初日に対応したら、それ以後、そういうのはいなくなったけど。
そんな苦労を終わらせた後の酒場で、バッシュが変なことを言う。
いったい、なんなんだか。
「それで、なんでやさぐれてるんだ?」
「うるせぇ」
「今日は開拓が終わった宴なんだろ? 俺のところから食材も酒も出したんだぞ」
「それは素直にありがとう」
「おう」
「それはそれとして……お前は気に入らない!」
「うーん、謎だなぁ」
「アキオーン、酒を持って来た」
「あ、ありがとう」
ソウラが木製の大ジョッキを二つ持って隣に座る。
一つは自分の分だったみたいだ。
バッシュが切ない顔で自分のジョッキを見下ろし、グギギ……と唸った。
うん、さすがにわかる。
そういえばソウラに惚れていたんだっけ?
いまは仮面もなにも付けていないしなぁ。
かつては鉄面皮みたいな無表情だったのに、いまは表情豊かだしね。
子供が生まれたからかな?
「ていうか、俺が開拓を終わらせた頃合いにお前が食料売りに来るってなんだよ? そんなに俺が英雄としてちやほやされるのが嫌か? あ~ん?」
「いや、そういうつもりはないって」
「いいや、信じられないね。お前にはそういう計算高いところがある! だって商人だからな!」
「ううん、商人への熱い風評被害」
「うるせぇ、ああちくしょうちくしょう」
「ええと、じゃあ、他行こうか?」
「待て待て待て! それは許さん!」
「なんでだよ」
「どっか行ったらそのままソウラとしけ込むだろう! そんなことは許さんぞ」
「……バシフィール」
と、いままで黙っていたソウラがバッシュの名を呼んだ。
「はい」
「うるさい」
「はい、すいません」
素直に頭を下げた。
弱い。
金等級冒険者、弱い。
※フォロワー5万人突破記念に書いてみました。
これまでの応援ありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。