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地名・人名について(注・第14話に記載したものと同じ内容です)

 この作品は、戦記物のつもりで書いております。ために、これからもいくらでも地名や山の名、河川名、城や砦《とりで》などの名前が出てまいりますが、先に出てきた『伊勢盛時の興国寺近くの館』、後に必ず出てくるであろう『小田原城』などのように、
 「この名称を出さなければ、話が成立しない…」
 というような歴史的に有名な名称以外は、架空の名称で通したいと思います。先述の『登谷』、今回出てきた『柳河原』『遠井川』も、架空の名称です。
 血なまぐさいエピソードが出てくる話です。その好ましくないイメージを、実際に存在する地名、建物などに付与することを避けたく思うのです。
 人名も、同様です。『出端可米之介』のような役まわりを、実在の人物にさせるなど、とてもできません。
 じっさいに出てくる地名に関しては、たとえば『川越』という地名が出てきたときに筆者は、北条氏康の卓越した采配や、この戦の後の上杉氏がどのように動いて後世に影響を与えたか…それに思いを馳せます。あの時あの土地に生きた人々を敬う心しか、抱きません。
 小田原城の前に立った時の、胸にわき立つ深い感慨ときたら!
 実際に小田原の街を歩きながら、史上名高い『小田原城の惣構《そうがま》え』がどれほど広大であったかを想像した際、そのスケールに、心の底から、
 「すごいなあ」
と、讃嘆したことでした。
 ――天正18年(1590)の小田原合戦のあった、数百年後のその土地に、いま、自分は立っている!
 ――この小田原に、北条氏政・氏直はいて、豊臣秀吉や徳川家康も来た。後からは、伊達政宗まで来たのだ…
 その事実は、とんでもない感動を筆者に与えました。
 そうした土地・そこに住まう方々に、この作品でご迷惑をかけないよう、心《こころ》して書きたい、と存じます。
 なにとぞ、よろしくお願いいたします。
 

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