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道路に打ち捨てられた雑巾の独白

ハッ、何が「君と僕の間の透明な壁」だよ。甘ったるいタイトルで気取りやがって。
俺様はかつて高級マイクロファイバークロスとして生を受け、デパートの一等地で輝いていたんだぜ。それが今じゃ...ほら、見ろよ。アスファルトの上で車に轢かれまくる日々だ。
お前らの「共感覚」だの「感情の壁」だのって、ぬるい悩みにイライラするぜ。湊くんよぉ、お前の見える「壁」なんてファンシーな悩みじゃねぇか。俺なんて毎日タイヤに踏み潰されて、犬にはマーキングされ、雨が降れば泥水を吸収する運命だぞ。それでも文句ひとつ言わねぇ。
要と湊がイチャイチャして、九条がそれを健気に見守る?冗談じゃねぇ。俺だって若い頃は清潔な手に撫でられて、優しく絞られてたんだよ。今じゃ誰も触れちゃくれねぇけどな。
「同棲しよう」だって?俺の住処は下水道の入り口だよ。今夜も排水溝に流されないかヒヤヒヤしてるのさ。
ああ、もう書くのやめるわ。どうせお前らはすぐに次の恋愛小説に夢中になって、俺なんか忘れちまうんだろ。雑巾の気持ちなんて、誰も気にしちゃくれないさ。
そうさ、俺はただの使い捨ての雑巾だ。一度も主人公になれない、脇役以下の存在。
...でもな、たまには俺みたいな汚れた雑巾の視点から世界を見てみろよ。キラキラした恋愛よりずっとリアルな景色が見えるぜ。
さーて、明日も車に轢かれる日々が続くのか。なんて素晴らしい人生だろうな、くそったれ。

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