冴木君が活躍する探偵シリーズも早くも六章目。もう一章ぐらいで締めていきたいと思ってます。
以下、ネタバレを含みます。
さて今回のカプチーノ編では瀬名みどりの視点で物語が進行していきますが、実は瀬名みどりというキャラは二章目のスイーツと謎解きはいかが?に登場しています。しかしまぁそんなちょっと出ただけのキャラなんて誰も覚えていないだろうということで、今回は彼女を軸に叙述トリックをしかけています。
彼女からは一貫して『冴木くん』として描かれており、ここまでこのシリーズにお付き合いいただいている方からしたら、『冴木賢』の学生のときの話なのかな?と考えるかな、と思います。
副題もDetective awakening、探偵の目覚めという意味で彼の探偵たる所以が描かれているのかな、とおもわせつつ、最後に貸出カードの名前を見て、あっ、と思わせたかったわけです。とはいえ、弟の瞬のことを少なからず覚えていないと「はて?」となるところですが、そこはまぁ大目に見てやってください……。
ちなみに冴木家は子供に漢字一文字で命名すると決めているようで、賢、凛、瞬、という順番になっています。特に深い理由はないですが、今回の作中で登場した朱莉、というのもみどりが緑だから赤っぽい名前にしようか、という安直さですので。
そしてトリックに使われた生石灰ですが、実際に真似しようとすると火傷の危険などがありますのでお気をつけください。本当は表彰式の舞台を文化会館などにして、お手洗いにあるハンドドライヤーなんかを使ってインクを消そうと思っていたんですが、ハンドドライヤーはインクが消える六十度近くにはならないようです。(そりゃそうだ)
最後に、瞬が言っていた「優しさとは矛盾を許容することだとおもう」といった部分について。みどりはゴーストライターを断ればよかったのに、結局は朱莉に従い、それでもどこか抗いたい部分があってフリクションペンで書いた原稿を消すという矛盾ともいえる行動をとりました。彼は失望しただろう、と思う刹那、瞬君は「またね」とまた会うことを前提とした別れの挨拶を告げます。瞬にとってそれは矛盾を許容したことになり、気付いたみどりは涙したわけです。うーん、小学生にしてはちょっと大人びていたかも……。
少し書きたいものがたまっているので次作はいつになるかわかりませんが、次のシリーズもお楽しみに。