僕は最近になって知った。
ひよりが“女子校の図書館の暗黒面を担っていたことを。
ある休日。
ひよりが部屋を片づけていて、古びた『源氏物語・若菜下』を見つけた。
「そういえば私、古典めっちゃ好きだったんだよね〜」
へえ、意外。文学少女だったのか、と一瞬思った。
しかし次の瞬間。
「だってさ、源氏物語って大人なシーンもBLシーンも合法で読めるじゃん?」
……合法の概念どうなってる。
「授業のたびに“今日の光源氏は攻めかな受けかな〜”ってワクワクしてたの!」
先生の想定外の読み方だよねそれ……。
***
「私、中学から高校まで6年間図書委員だったの♡」
真面目ポイントかと思いきや、
「新刊で官能描写のある小説が入ると、貸し出し前に“内容確認”って名目で真っ先に読んでた」
名目の意味とは?
「そのあと、その本を借りた子の貸出記録を見てあ、この子は受けだな”“この子は絶対攻めだな”って妄想するのが最高に楽しくて」
知らんわ。
ひよりの暴走は続く。
「その本……今日だけで3回読み返してません?”って委員仲間に指摘されて、微妙に距離置かれた(笑)」
そりゃそうだ。
***
「図書委員のカウンター業務って暇でさ〜。つい官能小説読んじゃうんだよね。そしたら顧問の先生に覗かれちゃって“白石さん? 何を読んでるの?”って」
地獄。
「“秘密です♡”って答えたら、急に作業めっちゃ任された」
隔離だよそれ。
***
「顧問の担任の先生がね、“読書家ですね”って褒めてくれてさ〜」
そこまではいい。
「それ聞いたお母さんが“どんな本を読んでるんですか?”って言っちゃって。先生、めちゃくちゃ目泳いでた(笑)」
そりゃそうだ。
僕は静かに悟った。
この女……昔から珍獣だったんだ……。
⇒【エッセイ番外編続き②中高でBLに目覚めた理由】はこちら
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