【言葉を聴かせて】
無事に完結しました。
今まで書いた作品の中で一番長くなったのですが、最後までお付き合いいただきまして本当にありがとうございました。
言葉を飲み込む梨紗と、言葉を誤魔化す奏が、言葉を通じて向き合う。
そんなお話でした。
普段は読んでいただいた人の心に残ってくれたものが全てだと思っていて、あまり作品について自分から色々と言うことはしないんですけど、せっかくのこのテーマなので少しだけあとがきのようなものを綴ろうと思います。
読まなくて全然大丈夫です。震
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自分の言葉で誰かに不快な思いをさせてしまうとか、状況がややこしくなるとか、そういうことを懸念して言葉を飲み込むのは、多分誰しもあるんじゃないかなと思います。
梨紗は片親で、日々忙しくしている母を見て言葉を飲み込むことが多かったので、言葉を飲み込む癖がついていました。そんな彼女が自身の言葉を吐き出すためには、色々な懸念を取り払ってくれる人や、きっかけが必要なんじゃないかと思いました。
対して奏なんですが、家族の末っ子というのもありかなり自由に物事を進めて育ってきました。そんな子が言葉を誤魔化すようになったきっかけが中学校の頃の出来事です。回想なんかで書きたかったのですが詳細には書ききれなかった部分ですね。
親友に恋をして、また親友も奏をそういう風に見ている瞬間もありました。手を繋いだし、キスをしたこともあります。でも、ある日突然その親友には恋人が出来ました。そして親友は奏に言うわけです。奏は親友だと。
それがきっかけで、奏は殊更恋愛に関しては予防線を張るようになりました。遊びだとか、暇つぶしだとか、そういう言葉で逃げていたわけですね。
でも、奏は言葉を諦めているわけではありません。その部分を音楽として表現していたわけですが、これがとても難しかったです。伝えきれなかったかも。
物語を書く上で、出てくる子たちが魅力的で、出来る限り人間味のある、そんな部分はいつも気を付けている部分です。
この部分と、奏というキャラクターの相性がかなり悪いのだなと物語が進むにつれ痛感しました。
奏のことをちゃんと表現できているか、奏がどういう経緯でごまかすのか、ただ逃げているように見えてしまわないか、常に苦慮したような気がします。実際に逃げてしまった部分もあるかもしれないけれど、彼女は彼女なりに頑張ってくれたとだけ、弁明させてください(?
誤魔化してきた奏ですが、言葉の大きさを知っているのもまた奏の方です。だからこそ、言葉を聴こうとしてくれたのはいつだって奏の方でした。梨紗もそんな奏だからこそ、言葉を伝えることが出来たのだと思います。そんな二人の物語を感じてもらえたら幸いです。
最後に、言葉が完全とは思いませんが、人生の中で必ず言葉が必要になる瞬間はあるんじゃないかと思います。そういう時に、怯まずに向き合えたらいいな、という祈りを込めます。
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次回作は頭の中にはSFの百合作品があるんですけど、如何せん暗いのでどうしようの気持ちです。また決まったら近況ノートに書きます。
改めまして、本当にありがとうございました。