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【KAC20248】レンズの奥に見えるもの SS①

「【KAC20248】レンズの奥に見えるもの」のSSを書こうかと思います!
まーくんさんからのご提案です。
すみません、面白おかしくはありません…ごめんなさい、まーくんさん!!
短いですが、お付き合いよろしくお願いします! ( `・∀・´)ノヨロシク


――これは、高校生の僕が、記憶を遡って、今の視点で語る、短い初恋のお話。

小学4年生になった春。
田舎にある小さな小学校で、僕は出会った。
「あ…」
図書室に本を返し終わった時。その場で止まってしまったのを覚えている。
図書室がある本校舎3階は、音楽室と5年生と6年生の教室だけが存在した。
東校舎に3年生と4年生の教室があり、本校舎2階に1年生と2年生の教室がある。実質、5、6年生に会えるのは、音楽の授業の時か、図書室に来るときくらいだった。
たまたま僕は、今日返そうと思っていた本を返して、階段を降りようとしただけだった。

だけだったはずなのに。

僕の隣を、友達と共にすり抜けて行った女の先輩は、声が明るくて、友達と仲良くしていて、元気だった。
チラッと胸元を見ると、そこの名札には…うーん、名前は思い出せない。
このころ、僕はめがねをかけていた。だから、容姿もよく見えたし、顔も髪もちゃんと見えた。
決してスタイルはいい方じゃなかったけど、我ながら小3にして大人っぽい考えだと思うが、女は外面より内面だと思っていた。
性格への一目惚れ? というものを、その人に、僕はしてしまったんだ。
その日から、その休み時間、その場所で、あの先輩が来るのを待ちわびていた。時々、教室をチラッと覗きに行ったりした。もちろんその時だって、僕は自己主張がなかったから、一人で行くはずもない。
僕の女子の幼馴染が好きな先輩を見に行きたいと言っていたから、それについていっただけだった。たまたま、クラスは同じだった。
でも、僕の幼馴染の好きな先輩とその先輩がよく一緒にいるのを見て、僕も幼馴染もドアの影から少し、口を尖らせていた。
それで、やっと、僕は初恋をしたんだと気づいた。
これだけあの先輩のことを思っていて、他の男と仲良くしていると決していい思いではなくて、でもあの人の近づくなんて到底無理で、教室や図書室の前で眺めているだけだった。
でも、少しだけ、あの先輩と目が合うことが多い気がした。

ある冬の日だった。
先輩の友達が、こう言った。
「修了式でてんこうするなんて、寂しいなー」
と。あの先輩に向かって。
てんこう? 天候? 転向?
その文字を思い浮かべたくなくて、他の漢字について考えるけど、
転校。しか、答えは無かった。
「大丈夫、手紙もちゃんと送るし!」
「えっ本当? うれしー!」
あの先輩が…転、校?
僕のキラキラした初恋は、目の前で崩れ落ちた。

転校するなら尚更だ、と気分を入れ替えて、次の時からまた同じ場所に立った。
いつも通り、先輩は目の前を通り過ぎて行った。でも、日に日に寂しげが増している気がした。

そして迎えた修了式の日。
今日はいつもの休み時間は無いけれど、修了式が終わってから、同じ時刻に同じ場所に立った。
来るはずないよな、と思いながら。
でも、奇跡は訪れた。
彼女が、この場所に来たのだ。
いつもの友達と一緒に、涙を流しながら。
やっぱり、今日転校するんだ、という苦しみを改めてかみしめて、もらい泣きしそうになった。もうあの人の姿は見られないんだ。
最後の最後まで表情を目に焼き付けた。
そして、彼女がこっちを見た時に、僕は。
微笑んだ。
あの人に少しでも、僕の爪痕が残せるように。
びっくりした顔のまま、彼女は通り過ぎて行った。

…いいんだ、これで。
彼女にとって、少しでも、他の学校でやっていく勇気になれば。
あの先輩が、どこかで、幸せになれますように。
そう、静かに、願った。

2件のコメント

  • 外見よりも内面は、私もそうだと思う。付き合うなら、いかに、趣味やフィーリングが合うかだと思う。
  • そうですよね!
    話が合う合わないは大事です。それが会話が進むか進まないかの分かれ目になりますしね。
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