僕の各種短編を読んだ友達が、以前言っていたことがあります。
「◯◯くんの作品というか文章というか、穏やかに不穏だよね」
最初は全然ピンとこなかったんですよ、この言葉。
ただ、僕の思想のひとつに「不穏は穏やかな日常の中にこそある」というのがあります。穏やかに過ごしているときこそ、不穏さを感じることが僕はよくあるんですよ。
慌ただしくしているときは、不穏さを感じ取る余裕がなくて、穏やかにしているときにばかり不穏さを感じます。
そういう思想が無意識に影響しているのかもしれないけれど、ピンとこなかったんです。
だけど、言われて読んでみるとちょっとわかりました。なんかこう、怖いタイプの不穏さじゃなくて真綿で首を少しずつ締められるような、弱々しい冷たい手に肩をソフトタッチされているような不穏さがある感じが……。
それで、過去に言われたことを思い出したんです。
元カノに。
「穏やかな顔をして、いつの間にかふっと消えてしまいそうな人だった」みたいなことを。
それかもしれない。僕自身がそういう人間だから、僕が出力する文章がそういう色を帯びるのかもしれない。
『ダウナーお姉さんと二人で駄弁るだけ』のお姉さんなんか、本当に穏やかに消えちゃいそうな感じがする。病んだところがある人なのは設定上からもそうだから多少は意識した部分もあるんだけど、意識せずに書いた部分にまでそういう気配がするんです。
ただ、恐怖はないんですよ。不穏だなあとは思うんですが、恐怖はなくて、むしろ柔らかな安心感のなかにちょっぴり不安感があるというか……。
なんなんですかね? これね。
あと……光の描写の仕方が不穏なんですよね。
まあ、あとは単純に僕の書く物語とキャラクターの傾向もあるかもしれません。元気です! みたいな登場人物あまりいないしね。
精神的な病み要素みたいなものをテーマに入れ込みがちというのも、単純に大きいですよね。『染まって染められる春』も、エロさで誤魔化している部分があるけど、意外と病んでますし……。
そう思うと、僕が書く物語とキャラクターはどっか欠落していて、どっか壊れているのかもしれません。静かに壊れている、病んでいるタイプの登場人物が多いんですよね。そこに穏やかな不穏さがあるのかも。
……と、自分の作品の傾向を分析してみたりする夜。