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最近読んだ小説のひとこと感想④

㉛あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。 (スターツ出版文庫)
現代の中学生女子が過去にタイムスリップして、戦時中の貧しい生活、言論統制、爆撃、そして「特攻」という時代の理不尽に直面し、自分を見直すというストーリー。東京の空爆シーンは真に迫っていて、ウクライナやガザが問題になる昨今、読まれるべき小説だと思った。


㉜プロペラオペラ (ガガガ文庫)
圧倒的なディティールの細かさ。ばい煙のにじむアメリカでの空、株式のやりとり、戦艦、軍人を取り巻く環境についての描写は微に入り細を穿つよう。そして戦艦の戦いは設定の細かさを全面に出しつつ白熱のシーンを描く。ライトノベルではなくヘヴィノベルと呼びたい。


㉝オタク同僚と偽装結婚した結果、毎日がメッチャ楽しいんだけど! (電撃の新文芸)
自分の趣味を貫きたい男女同士が偽装結婚してしまえば、世間体も守れるしお互いメリットあるんじゃね……そんな空想を実際にやってみた偽装夫婦の話。ふわふわした二人の生活のなかに、蛇のように伏流するヒロインの毒親の気配。そこがピリッとしたスパイスを与えている。

㉞薬屋のひとりごと (ヒーロー文庫)
作品の面白さを概略すると、『舐めてた娘が薬学知識マシーンでした』という感じ。平凡を装うも、観察力と知識で、問題の渦中にある人を助けたり出し抜いたり見殺しにしたりする。中華歴史ロマンという舞台がいい味出しているし、背景描写も抜かりなく濃厚な中華世界が堪能できる。


㉟奥ノ細道・オブ・ザ・デッド (スマッシュ文庫)
実は「奥の細道」は忍者である松尾芭蕉がバトルしながら書いたものだった。表紙絵とタイトルをみれば、これはとんでもない作品になりそうだと誰もが予感を覚えるだろうが、それは大方当たるだろう。江戸の街にゾンビこと〈屍僕〉が溢れ出し、大混乱を生む。密命を受けた松尾芭蕉は曽良を連れて仙台藩を目指す。芭蕉の句を無理やり解釈するところは爆笑もの。ブラックでナンセンスな笑いが込められている。


㊱京都寺町三条のホームズ : 4 ミステリアスなお茶会 (双葉文庫)
骨董品を鑑定する探偵という異色探偵作品。作者は説明がうまい。骨董品の鑑定のシーンは必然的に説明ばかりになる。説明は基本的に退屈なものであるが、これがなんと面白く読める。キャラクターが愛らしい。作中にはミステリーならではなの一筋ならぬ人間の業をのぞかせてもいる。


㊲くだものナイフと傷だらけのリンゴ1 モテすぎる彼女は、なぜか僕とだけお酒を飲む (HJ文庫)
自己否定的に生きる主人公の心情に共感する。「大人」のお酒の飲み方、というよりは学生ならではの自己破壊的な飲み方。それもまたよい。酒でむちゃしてた頃にノスタルジーを感じられるだろう。


㊳ビアンカ・オーバースタディ (角川文庫)
大御所作家がライトノベルを書いたというので、発表当時界隈は大いに盛り上がったが、フタを開けてみれば気が狂ったとしか思えない小説がブチ込まれてきていた。「時をかける少女」か「七瀬ふたたび」なんかで御大の姿しか知らないヒトには衝撃を持って迎えられ、従来のファンからはやっていることが変わっていないと呆れられたという。カエルと人間の受精卵を孵化させたらどうなるかといった倫理的に問題があるけれど、好奇心を覚えてしまう内容に取り組んだり、ヤクザの陰嚢を切り取ったエピソードを毒たっぷりに展開する。


㊴俺のお嫁さん、変態かもしれない―ゼロ距離だった幼馴染、結婚したとたん即落ちして俺に夢中です― (富士見ファンタジア文庫)
主人公とヒロインは宝くじで十億当たる。共同の財産とするためには、主人公とヒロインは結婚するしかなくなり、両者もともと気があったため穏便に結ばれる。愛の巣を借り、先走らないようにいちゃいちゃしてすごす。ときにヒロインの妹の邪魔がはいったり、主人公が勉強で思うような成績をとれなかったり、初めてのデートするにあたり悩んだりするが、二人の生活は概ね平穏だ。


㊵救世の背信者 (講談社ラノベ文庫)
「錬金術師」「輝石」「星喰い」など興味深い設定が盛りだくさん。主人公はセクハラ男であちこちの少女に色目を使い、ボディタッチもするコンプライアンス違反男で、今の時代はちょっと合わないかもしれない。作品に通底するのは心の奥底に秘められたヒロイズムで、男子の共感を呼ぶこと間違いなし。

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