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コメントを読んで。私がしきりに欲しがる「才能」について

新作をあれこれ悩みながら下書きを続けています。荒川馳夫です。

本日、私の作品『ムカデを束ねる女王様』の最終話を読んでくださった四谷軒様からコメントを頂きました。その全てを挙げることは失礼かと思うのでここには乗せませんが、私には「ある言葉」が特に心を激しく動かしたので、少し紹介します。

「ギリシア悲劇のような……」

世界史の履修者ならば一度は耳にしたことがある(と思われる)三大悲劇詩人。彼らが創り上げた完成されたシナリオは……今の私には絶対に書けません!! 断言できます。古代ギリシアの創作の偉人に対抗できるわけがないのです。

以下、その理由となる私の昔話を語りますがご容赦ください。

高校で世界史の授業を受けていた時のことです。担当の先生が古代ギリシアの文化史について授業の際、特に熱弁を振るって語ってくれたのが、悲劇詩人ソポクレスの作品『オイディプス王』でした。その詳細を先生は少しだけ話すと、

「途中までは教えてやるけど、結末はお前たちが本を買って読め。きっと度肝を抜かれるから」と告げました。

こんなことを言われた私は、急いで本屋に向かい岩波文庫版『オイディプス王』を購入し、そのままの勢いで読破(ページ数が百ページと少しだったので、読むのは苦になりませんでした)。そして私は、

「こんなで短いページ数で、読者を驚愕させる結末を描くソポクレスすげー!」

と感嘆したものでした。そして、先生が言った言葉の意味がその時になってよく分かりました。

「この作品、結末が分かってたら面白さが激減するやつじゃん」

ここに『オイディプス王』のストーリーをネタバレすることはしません(私はネタバレされるのが嫌な性質なので)が、今のジャンルに当てはめると推理もので、要は『金〇一少年の事件簿』とか『名探偵〇ナン』に近いのです。

作中で「ある異変」が生じて、その「犯人」を探し当てるのが大まかな筋書きなので、結末(=犯人の正体)が分かってしまうと途端に面白くなくなるのです。

なるほど、先生が結末まで教えなかった意味が分かったぞ。当時の私は先生の教え方が上手だな、と思いました。

と同時に、『オイディプス王』という作品が二千年以上も残り続けている事実に驚きもしました。

以上、ここまでで昔話は終わり。

今の私はこうしてカクヨムで作品を公開しているわけですが、時折『オイディプス王』を読み返しています。そして、自分の作品と比較し、

「私の作品は足元にも及ばないよ(涙)」

と何度嘆いたことか。私の作品は1年どころか、数日で忘れ去られるような代物だぞ……と本気で思ったりしています。

私は特定の人物に肩入れすることはしないようにしているのですが、ソポクレスだけは別です。創作界の神様と(勝手に)崇めております。

で、ですね。

結局、私がタイトルに挙げている「欲しい才能」とはなんなのさ?

それはずばり「簡潔に作品をまとめる才能」です。実際に創作をしている身としては『オイディプス王』のような簡潔で、分かりやすく、くどさを感じさせず、そして「結末まで読んで良かった」と思わせられる作品を書くことが如何に難しいことか……。

たった百ページと少しのページ数で面白い作品を創る。今の私には出来ない芸当です。でも、毎日の努力で技術を磨くことならばできるかもしれない。

それがいずれ、出版という夢に繋がるかもしれない。

夢物語だと感じてはいます。ですが、自己を磨かない者に良い結果は現れません。だから、私は諦めないのです。

どうか、このような未熟な私でよければ応援よろしくお願いします。

それと最後に。

『オイディプス王』を読んだことのない方は、是非手に取って読んでみてください。千円以内で購入できて、値段分以上の価値があります。何度も読み返した私が言うのですから間違いありません(笑)。

創作の足掛かりになるかもしれない名作ですから。

1件のコメント

  • 「エディプスコンプレックス」の基となった話ですから
    世界中の、それ以降の小説家、いやもうそれ以外にも多大な影響を与えているのがギリシア神話です

    それに感嘆できて、しかも取り入れようとするだけでもすごい才能です!
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