「転生したら平民でした。〜生活水準に耐えられないので貴族を目指します〜2」
本日発売となりました❗️
皆様のおかげで二巻が発売できたこと、とても嬉しく思っています。本当にありがとうございます。そしてこれからもよろしくお願いいたします。
二巻発売を記念してSSを書きましたので、楽しんでいただけたら嬉しいです。タイトルは『お兄ちゃんがいない朝』マリー視点のお話です。ではどうぞ!
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「マリー、早く起きなさい。朝ご飯できてるわよ?」
「うぅ……まだ、眠い」
「ほら、起きて顔洗いに行きなさい!」
……まだ眠かったのに、母さんに抱き上げられて無理矢理ベッドから降ろされた。もう一度ベッドに戻りたいけど、後ろでは私がちゃんと起きるか母さんが見張ってる。
「分かった、起きる……」
私は靴をちゃんと履き直して部屋から出て、目を擦りながら階段を下りた。そしてリビングに入っていつものようにお兄ちゃんのところに行こうとしたら……
「お兄ちゃんがいない」
顔洗ってるのかな? そう思って中庭に出てみても誰もいない。私は仕方なくお兄ちゃんに会うのは諦めて、井戸から少しだけ水を汲んで顔を洗った。そしてリビングに戻るとそこには父さんがいた。
「父さん、お兄ちゃんは?」
「マリーおはよう。マリーは本当にレオンが好きだねぇ。レオンは昨日から公爵領に行ったからいないよ」
そうだった……お兄ちゃんは今日からいないんだ。いつ帰ってくるのかな、三回ぐらい寝れば帰ってくるかな。早く帰ってきて欲しいな。
「お兄ちゃんは何回寝たら帰ってくるの?」
「そうだね……十回以上は寝ないとダメかな」
十回って、両手の指の数? こんなにたくさん寝ないと帰ってこないなんて……今すぐもう一回寝なきゃ!
「私もう一回寝てくる! 父さんおやすみ!」
「え、ちょっとマリー?」
「べふっ、いたぁ」
リビングのドアを開けて外に出ようとしたら、ちょうど中に入ってこようとしていた母さんにぶつかった。鼻が痛い、潰れた気がする……
「ちょっとマリー、危ないじゃない。ちゃんと前を見て歩きなさい。それにもう朝ご飯よ」
「ううん、私朝ご飯いらない。お兄ちゃんが早く帰ってくるようにもう一回寝るの」
早く寝なきゃってことしか頭になくて、急いで母さんの横を通り抜けて廊下に出ようとしたら……母さんに腕を掴まれて止められた。
「マリー何言ってるの? ジャン、どういうこと?」
「さっきマリーがレオンはあと何回寝たら帰ってくるかって聞いてきたから、十回以上って答えたんだ。そしたらもう一回寝てくるってリビングを出て行こうとしちゃって」
「はぁ……そういうことね」
母さんは大きなため息をついて私のことを抱き上げた。そして椅子に座らせられて顔を覗き込まれる。
「マリー、十回以上寝たらっていうのは、夜が十回きたらってことよ。だからマリーが寝ても意味ないわ」
「じゃ、じゃあお兄ちゃんは……?」
「心配しなくてもそのうち帰ってくるわよ。昨日は普通にレオンを送り出してたのに、急に寂しくなっちゃったの?」
だっていつもはお兄ちゃん、お出かけしても一回寝たら帰ってくるから。父さんもいつもはもうすぐ帰ってくるよって言ってくれるから……
「マリー、おいで」
私はなんだか凄く寂しくなって、両手を広げてくれた父さんの腕の中によじ登った。隣のおじさんの方が大きくて力持ちで好きだけど、父さんも優しくて温かくて好き。頭はもう少し強く撫でて欲しいけど……
「マリーもしっかりしてると思ってたけど子供なのね。最近はレオンがあまりにも大人びてるから、子供がどういうものか忘れかけてたわ」
「ははっ、レオンはね。一般的にはかなり例外だよ。僕にとっては可愛い息子だけどね」
「私にとってもよ」
……私も子供じゃないもん。そう言いたかったけど、父さんの膝の上にいる状況ではさすがに言えなくて、父さんのお腹に頭をぐりぐりと押しつけてみた。ちょっと楽しい。
「父さん、お腹柔らかいね」
「ちょ、ちょっとマリー、くすぐったいって。ははっ、はははっ……ロアナっ、助けてっ」
「ふふふっ、私はマリーの味方よ」
母さんは楽しそうにそう言うと、私の頭の横に腕を伸ばして父さんをくすぐり始めた。
「ちょっと、ロアナっ、ひどいよっ……」
私と母さんが父さんへの攻撃をやめる頃には、父さんは息を切らして苦しそうだった。でも顔は笑顔だから嬉しかったんだと思う。……父さんってくすぐられるの好きなのかな。これからもやってあげよう。
「さあ、朝ごはんが冷めちゃうわ、食べましょう。マリーも動いてお腹空いた?」
「うん。美味しそう!」
さっきまでは全然お腹なんて空いてなかったのに、今はぐるぅぅとお腹が鳴りそうだ。お兄ちゃんがいなくても寂しくなんかないもん!
「じゃあ食べましょうか。いただきます」
「いただきます!」
うぅ〜ん、やっぱり母さんと父さんのご飯美味しい。お兄ちゃんと屋台で串焼きを食べることもあるけど、うちのご飯が一番美味しい!
「すっごく美味しい!」
「そう、良かったわ。そういえば今日は、良いお肉が手に入るかもしれないのよ。ステーキ一つ分はお店に出さないで、私たちのお昼ご飯にしちゃいましょうか」
ステーキ! しかも良いお肉! ずっと前に良いお肉食べた時、ほっぺたが落ちるぐらい美味しかったやつだ!
「私食べたい、楽しみ!」
「じゃあそうしようか。お昼に父さんが最高に美味しく焼いてあげるよ」
「やったー!」
お兄ちゃん、早く帰ってこないと私がお兄ちゃんの分も美味しいもの食べちゃうからね! ……私のステーキ一切れあげるから、早く帰ってきて欲しいな。
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SSはどうだったでしょうか。マリーが可愛い! と思っていただけたら嬉しいです。私も同じ気持ちです笑
ちなみに今回のSSは書籍二巻に収録されている、レオンが公爵領に行くお話の、レオンが出発した日のマリー目線です。マリーは凄くしっかりしていて、レオンの方が兄弟愛が強いと思われがちなのですが、実はマリーもお兄ちゃんのことが大好きです。
そんな側から見たら可愛い兄弟の様子が楽しめる書籍二巻を、ぜひお手に取って楽しんでいただけたら嬉しいです✨
かなりの量の加筆修正をしましたので、オリジナルストーリーがたくさん収録されています。web版にはない神界での神達のお話や、レオンとマルティーヌがお祭りを楽しむ様子、さらに入学試験でレオンがやらかす? お話も楽しめます!
また番外編も収録されていて、そちらはマルティーヌ視点となっています。王女様の一日の様子や、マルティーヌのレオンに対する気持ちなどが分かりますので、ぜひそちらも併せてお楽しみください!
そしてイラストは、今回も赤井てら先生に描いていただいています。ほんっとうに可愛いイラストばかりですので、ご購入された方は私と一緒に楽しみましょう。私のお気に入りはミシュリーヌ様です。何回も見返すほど可愛いです。
一巻をまだ買ってない……という方は、ぜひこの機会に二巻まとめて楽しんでいただけたら嬉しいです。
いつも私の小説を読んでくださってありがとうございます。皆様のおかげで書き続けられていると言っても過言ではありません。
これからもよろしくお願いいたします。
蒼井美紗