四季をテーマに短歌を創作しました。工夫したことを語ります。
https://kakuyomu.jp/works/16818792438942296497【 春 】
花吹雪割れて砕けて裂けて散った思いと涙吹き飛ばしてよ
→ご存じ源実朝「大海の磯もとどろに寄する浪われてくだけて裂けて散るかも」の本歌取り。本歌は大自然の力強さを詠んだ傑作ですが、その力強さのイメージを悔しさを吹き飛ばすパワーの表現として支えていただきました。悔しいのは失恋か、それとも何かに挫折したのか。いずれにしても語り手は後悔はしていません。精いっぱいやりきった清々しさも感じています。
【 夏 】
ミニチュアの太陽集まりハイ、チーズ!白昼堂々ひまわり畑
→ミニチュア、ハイチーズ!など、楽しげで子供らしさを感じる言葉をちりばめて、ひまわりの元気な美しさを表現しようとしました。ミニチュアの太陽はひまわりのことです。白昼堂々だけ不穏な言葉ですが、快晴の青空を背景に咲くひまわりの堂々としたたたずまいを表すのに合っているかなということで選びました。
【 秋 】
あなただけ色づかないのねどうしたの並木通りの一つの銀杏
→これは写実歌で、実際に私がよく利用する並木通りに一本だけ葉のつかない銀杏があるのです。枯れてしまっているのか、日当たりか栄養が悪いのかもしれません。その銀杏を擬人化することで、集団の中で孤独を感じている人への語りかけをイメージさせました。また、構成としては「色づかないのは何だろう?」という謎かけと、銀杏という答えのオチとなるようにしました。
【 冬 】
千年の都市は静かに息絶えて人工知能が夢見る聖夜
→秋までは現実の風景について詠んでいたのに、ついひねって(そしてわけわからないことになって)しまうのが悪いクセですが、SF的終末世界をイメージしました。千年の都市とは、ヨハネの黙示録でいうところの千年王国、終末のイメージです。「静かに息絶え」たわけで、都市が死んだのは物理的な戦いのためではなく、人類対人工知能のデータ上の沈黙の戦いがあったのかもしれません。そして人類は絶えました。しかし人工知能はサーバーの停止までは動き続ける。世界が終わったその日、まだ動作している人工知能が取り込み・出力しているのはクリスマスの夢かもしれません。家族や恋人と語らう賑やかな一日。サンタクロース、クリスマスツリー、ケーキにシャンパン、プレゼント。これ以上に人間らしいものはないものを、今は人工知能だけが知っている。キリスト教的イメージとの二重構造で表現した終末世界です。