青空の下の群青のエピソードを更新しました
・価値のない電車
・姉への思い、自分の役割
・私だけの譲れないもの
・番外編:浪漫の探求者
さて、今回は209系について解説したいと思います。
作中の解説にもありましたが、209系は国鉄民営化を果たしたJR東日本が最初に独自開発した、通勤形電車です。1992年に試作車の901系が登場した後、1993年に量産車である209系が導入されました。
209系のコンセプトは「価格半分・重量半分・寿命半分」です。価格半分とは、従来車よりも消費電力を抑えている、言わば省エネを意味しております。他にも部品の発注・調達方法を変えたり、機器を効率化したりすることによるコストカットも、実現しました。
重量半分はそのままの意味です。従来車よりも軽量のステンレス車体をを使っていたり、搭載機器を小型化していたりするので、とっても軽いです。
そして寿命半分というのが、インパクトが強い分ややこしく、鉄道ファンの間でも誤解して覚えてしまう人が多いです(私も作品を書くまで誤解していました)。
209系における寿命半分とは、鉄道車両の減価償却(一括計上ではなく、固定資産の耐用年数に応じて計上する会計処理のこと)が13年であることから、13年経ったら廃車するか、大規模な車体修繕を行うかを、判断するというものです。
※本来の鉄道車両の寿命は30〜40年程度です。
そこから逆算して、『13年で廃車されても大丈夫』という設計思想となり、209系が生まれたのです。最初から『13年で209系を廃車する』と決まっていたわけではありません。209系も修繕を行うことで、13年以上走ることが出来ます。
鉄道ファンたちはそんな209系を、当時流行っていた使い捨てカメラ『写ルンです』をもじって、使い捨て電車である『走ルンです』と呼びました。先述の通り、「使い捨て」という表現は誤っているのですが……
当時の鉄道ファンたちは、国鉄民営化を経て生まれた常識破りの電車を、受け入れらない所があったのかもしれません。でも209系は、『国鉄の常識は世間の非常識』という言葉から発想を得た車両なので、こうした意見が出る事はある意味当たり前でした。
ただ、限界ギリギリを詰めた性能と、コストカットで粗末化したサービス面において、課題を多く残すことになりました。初期車の故障によってダイヤが乱れたり、乗客が危険にさらされてしまうなんてこともありました。それだけ209系は虚弱体質だったのです。
こういった経緯から、209系は万人受けする車両ではありません。しかし、発車・到着時に鳴る独特の音(未更新車の三菱GTO-VVVFインバータ)は、鉄道ファンの間で大人気です。公式が売りにするほどの人気っぷりなので、是非聞いてみてください。万病に効きます。
余裕を切りつめて限界に挑戦した電車でしたが、これまでの鉄道車両の常識を覆す事に成功しました。209系から得たの教訓が、現在の鉄道車両達にも影響を与えたと言っても過言ではないでしょう。
ではまた次の更新で。