バディものについて質問を頂いたので、私なりの解釈を展開してみたいと思います。質問してくださった夷也荊さん、ありがとうございます。
バディ、と聞いて一番に思い浮かぶのは、ミステリーにおける探偵と助手の関係性です。探偵は非常識で破天荒、型破りな人物であることが求められます。常識人な探偵がいても良いかもですが、人間的魅力には欠けることでしょう。
対して、助手は常識的な、世間一般的な価値観を有していることが求められます。十戒だか二十則だか忘れましたが、「助手役は読者に自分の考えを隠すことなく提示しなければならない」といったような記述がありまして、これは要するに、ワトソン役が物語への導入役を果たしているってことなのです。「読者と同じ視点に立つ」ってことですね。探偵と助手は、物語において別な役割を持ちながら、奇妙な共生関係を築いているってことです。
ここから敷衍して、良いバディ物の条件とは何か?
それは、二人の間にある「ギャップ」だと思います。溝、隔たり、価値観の相違と言ってしまってもいいかもしれません。
例を挙げて考えてみましょう。バディの二人ともが「頭の良い天才キャラ」「経験のない初心な童貞処女」「戦闘狂で好戦的」だったら?
似たような二人が並んでいても、「似てるなあ」で終わりませんか? それで終わればいいのですが、同じような人間同士でつるむと、高確率で喧嘩になるか、こっぴどく関係がこじれたりします。決して実体験ではないですが、実際に「同族嫌悪」って言葉があるくらいですからね。似ているが故に相いれない、というか、本来の魅力が引き出せない、というか。キャラ被りの危険性もありますし、わざわざバディとして描くのではなく、いっそ敵キャラに据えた方が良いかもしれません。
僭越ながら自作(
https://kakuyomu.jp/works/1177354054885814119)の人物から①周くんと葉月ちゃん②御厨翼と悪魔ルサールカを例にとって挙げてみます。
①葉月は優れた身体能力を持ち、序盤では正義の味方のような役回りを演じますが、次第に負の部分が明らかになっていきます。精神的にも弱く、過度な乙女脳。これはギャップですね。その変化を見届けるのが周くんです。彼はまあ、色々とある方ですけれども、能力的には葉月に及ばないながら彼女よりも幾分か精神的には強い。肉体面と精神面で、強さと弱さを補い合っているわけです。
②翼とルサールカは上の二人よりも大分わかりやすいと思います。翼は冷徹で、計算で物事を押し進めていくタイプ。何処か厭世的で危うい雰囲気の少年です。対してルサールカちゃんは戦いの最中でも常にお気楽、ふわふわとした掴みどころのなさが特徴的です。だが何も考えてないわけでなく、翼が取り乱している時には冷静に鋭いツッコミを入れたり、みたいな。意図的なズレが覗えます。
以上のことから言えるのは、バディとなる二人の性格や気質、生い立ち、人物造形はなるべく離しておいた方が良い、ということです。それでいて二人の差異が巧く伝わるようにし、価値観のギャップが察せられるとベターかと。互いが互いの魅力を引き出し、影響し合い、相補的な関係を築く、ということです。仲が良過ぎてもアレなので、時には差異を際立たせたるようなイベントを入れたり、それに伴う和解を仕込んだりして、二人で前に進んでいる感じを出してあげるのもアリかも。
長くなりましたが、少しでも参考になれば幸いです。