今日だけはチャンスなのよと送る母 門限守る意味わからなくなる
唯一のやっすいコスメ顔に塗る 気に入らなくてもこれしか無いし
夜の9時 こんな時間に外にいる 夢が解けるまでアン・ドゥ・トロワ
髪結ってドレスも着ちゃって城の中 この瞬間は自認”ヒロイン”
大広間 たまたま会った友人が「一度は入ってみたかったよね」
夏の夜のシャボンみたいなこの夢は 弾けて消えるってこと知ってる
知らないで憧れ続けた王子様 女の顔見て「この人はやだ」
円舞曲 あの子もその子も踊ってる 私の王子はどこにもいない
がりりとカクテルの氷を噛み砕く 不満も噛んで溶かして飲んで
欲望と打算を映すシャンデリア 頭の上から落ちてくるかも
私にも選ぶ権利があるのよと 差し出された手を払ってみたい
見切りとも意地悪だともとれぬ声「王子はあの子が好きなんだって」
悪びれず 親の権力 ルッキズム あの娘になりたい?ちょっと嫌でしょ?
すぐにでも割れ砕けそうなあの靴で歩くことなど夢のまた夢
私にも魔法使いがいればいい 靴もドレスも身体も顔も
夢の消費期限を告げる鐘の音 落ちさえできずに摘まれていく恋
転んでもたったひとりで帰路につく ヘアメを崩す風が冷たい
無理をして履いてた靴で擦れた傷 昨日が全部夢ならよかった
急に来て靴を試して行くらしい 誰もがそれを拒まないらしい
王子様、私の家にも来るのかな 外から従者の喜びの声