https://kakuyomu.jp/works/16818093084162038139/episodes/822139843808043309
タイトル通りです。
4/12更新予定の内容に関わっています。
以下が加筆した内容となっておりますので、一読していただけると幸いです。
◆
『もし、そこの方?』
「え、は、やば。てか、俺?」
浮いている女がいた。
いや、物理的にではなく雰囲気が。
『……まさか、英語が話せませんの?』
「えぇ……? 道とか聞かれてんのか、これ? あー、アイムノットスピークイングリッシュ。日本語オーケー?」
というより、その容姿がと表現するべきだろうか。
具体的に言うなら、縦ロールの長い金髪に白い肌。
それだけでも、この日本という国ではよく目立つ。
更に目立つのはその衣服。
漆黒のゴシックドレスに、やたらと高いハイヒール。
これだけなら、都会の方であれば偶に見かけることもあるだろう。まあ、ここは田舎なので特にフォローにならないのだが。
しかし、実際に彼女を見た時に最も気になるのは、衣服や髪の色ではない。
最も特徴的なのは、傍に控えた老紳士だ。
それも、まるで執事のように――というか、執事にしか見えない――日傘を差し、女を日差しから守っている。
『はぁ…………なんですの。その聴くに堪えない発音は』
「な、何の溜息……? あ、そうだ翻訳。ちょっとスマホ出しますね」
どう見ても時代錯誤。
タイムスリッパーか、はたまた異世界からやって来たと言われても信じられる見かけだった。
『いえ、もう結構』
失望したように目を細めた女が、鋭く細い腕を突き出す。
「おぐっ!?」
その見た目からは想像できないほどの強さで、女の手が男の首を掴んだ。
『爺《じい》』
『こちらに』
老紳士が差し出したのは、一枚の写真。
『この方に心当たりは?』
「あっ、ぐ……し、知らないそんなやつ!」
『……なんと答えているのかしら?』
『否定でしょう。知っているようには見えません』
『ふぅん。なら良いですわ』
パッと手を離し、女はくるりと男に背を向ける。
げほげほと咳込む男など、もう眼中にもない。
不快そうにハンカチで手を拭い、女は深く溜息を吐く。
『全く……わたくしの婚約者様はどこに行ったのかしら?』