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横須賀戦士 須賀イザー

#1:堕ちてきた男

何が落ちてきたって、大概のモンには驚かない。鳩のフンは厄介だが、ゴキブリだろ~がセミの死骸だろ~が落ちてきたトコで無言で眉をひそめ、パッパッと手で振り払うくらいだ。
悲鳴を上げるまでもない。ところが、あの日、アイツが落ちてきた。正義の味方を名乗る悪魔のようなアイツが・・・・・

あの日は、真冬だっていうのに、コートが必要ないくらい麗(うら)らかな小春日和(こはるびより)だった。
昨日までは、いつ雪が降ってもおかしくないくらい凍(こご)えるような白い息を吐いていたのに、今日は少し歩けば汗ばむくらいだ。
青い空にはポッカリと雲が棚引(たなび)いていた。
雲間には、あんなに大きかったかなと思えるほど白い月が見えていた。
あたしは、そんな事などお構いなしにスマホ片手に先輩へメールを打っていた。
このトコ、先輩の事を考えない時がないくらい、ヤバいのだが・・
なにしろ先輩は、イケメンで、その上、成績優秀、生徒会長で非の打ち所がない・・・
唯一のネックが身長が低いコトだろうけど、そこは愛嬌(あいきょう)。
先輩本人は、コンプレックスらしいが、カレの可愛らしさをより強調してるようだ。
あたし的には背の高さは気にならないのだが、どうやら先輩は背の高いスレンダーなモデル系の彼女が好みらしい。
あたしと言えば、どっちかって言えば、その逆のタイプ。
背は低いし、お世辞にもモデル系とは言いがたい。
ま、顔は、ソコソコって感じだと思うけど・・・・
そりゃ~、先輩とは釣り合わないってコトは重々、承知してるンだけどね。

その時、上空に何か光る物体を発見。道行く人たちも
「え~?何アレ~、流星~?」
皆、青い空から落ちてくる火の玉のような物体を見て驚いていた。
あたしも急いで写メで撮影しようとしたが、
「何アレ~?隕石・・・それとも・・・・」
その時、確かに写メに映る物体を確認した。
「恐竜だ~!!」誰かが素っ頓狂な声を張りあげた。確かに映画に出てくる翼竜(よくりゅう)・プテラノドンに形は似ているが、アレは、ど~見ても・・・・、
「宇宙船よ~~!!」
そう間違いない。怪鳥のようなカッコの宇宙船が雲を突き抜け落ちてきたンだ。しかも、船体の後ろから火を噴き、こっちの方へ落ちてくるようだ。マジか~~!!
上空をギュ~~~~ンと音をたてて高層ビルを掠めるように落下していった。かなりの大きさだ。全長10メートルくらいは、あるかもしれない。そのまま低空でビルの影に消えていったかと思った瞬間、ドッド~~~~ンと地鳴りのような激突音が響きわたった。
「キャ~~~~~!」強烈な爆風であたしの髪がなびいた。
ヤバい・・・・あっちはマジであたしン家(チ)の方だ。
野次馬たちも指を差し、
「あっちに隕石が落ちたぞ~!」「隕石じゃね~って、宇宙船(ufo)だって・・・・」「あのワケのわかンね~研究所に落ちたぞ~!!」大騒ぎで駆けていく。ったく、他人ン家だと思って勝手なコトを・・・・だが、あたしが家へ駆けつけると思わず足が止まった。
唖然とした光景だ。あり得ないコトに、研究所の4・5階部分に怪鳥プテラノドン型の宇宙船が斜めに突き刺さっていたのだ。
マジ~~!早くも遠巻きに野次馬が集まり、騒然としていた。
意を決し、あたしは野次馬を掻き分け、研究所へ入ろうとした。
だが、無駄にセキュリティが万全だ。生体認証をし、暗証番号を打ちカードロックを解除しないと中に入れない。
「も~、ヤッカイなんだから~・・・」
「やめろ~。中に入るのは危険だぞ~!!」
野次馬の誰かが叫んだ。そんなコト取り合ってらンない。
やっとの事で所内へ入り、エレベーターで上の階へ向かった。
取り敢えず、エレベーターは動くようだ。外から見た感じでは、4・5階あたりに突っ込んだようだ。
迷わず、5階で降りると、
これは・・・・!!思わず目を見張った。
天井や壁を突き抜け、翼竜型宇宙船はクチバシのあたりまで突き刺さったままだった。
あたしはゴクリと固唾を飲んで見つめていると、何やら、その翼竜型の口のような所が、ウンニュ~ッとばかり開いて、ポロッと人間大の大きな赤い玉があたしの方へ転がってきた。
運動会で使う玉転がしの玉ほど大きくはないが、大人ひとりは入れそうだ。あたしは、驚きで動くことも出来ず、コトの成り行きを見ていると、その赤い玉が目の前でパ~~ンと破裂した。思わずビクッとしたが、もっと驚いたコトに中から真っ赤なモヒカンの男が飛び出してきた。
え~~~!!何~?宇宙人?エイリアン?コレって第何種接近遭遇なの~~?
も~あたしの頭はパニック寸前。大きな目が飛び出すくらい見開き、悲鳴を上げそうになった。だが、驚きのあまり声にならない。
息も出来ないほどの驚愕だ。見た感じは人間の男のようだ。
しかもそのエイリアンは素っ裸で、グロテスクなモノを隠そうともせず、あたしに何か伝えようと大げさにジェスチャーをし、パクパク声を掛けているようだ。
しかしあたしには、キンキンと超音波のような耳障りな音声にしか聴こえない。
「う、何言ってンの・・」両手で耳を塞いでも甲高い超音波が脳髄に響いてくる。冗談抜きで頭が痛くなってきた。やがて、何とか聞き取れるようになり、
「あ~?あ~、ね~、コレなら通じる~?」
エイリアンは波長を合わせるように発声しているようだ。
「え・・・・あ、うん・・・、って、ど~でもい~から、そのグロいモン何とかしなさいよ~!!」
あたしは悲鳴を上げるように、そっぽを向いた。
「あンだ~!!オレ様は、誰の命令もきかね~❗」
「って、何様よ~!!アンタ~!!」
「オレ様か。正義の味方代行業のモンだ。」
「正義の味方・・・・代行業・・・・マジで・・・」いや、ど~見ても怪しい。
格好からして真っ赤なモヒカン、絶滅寸前の田舎の暴走族か。
ビジュアル系をマネたヤンキーかって・・・・
「その正義の味方が、何で家の天井に突っ込んできたのよ。」
あたしは努めて冷静さを装(よそお)った。
ま、ぶらり途中下車って、ヤツかな~・・・・」
何それ~?ふっざけてンの~」
「ま、ちょっとばっか厄介になるけど、よろしく~。」カレは余裕の笑みを浮かべ、手を差し伸べてきた。
え・・・・?あ、ど~も・・・・」あたしはパニクった頭で思わず握手をした。だが。思えばコレがいけなかった。
こうして、正義の味方と名乗るワケのわからないエイリアンが我が家に居候するコトとなった。















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