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横須賀戦士 須賀イザー

#プロローグ:正義の味方

「キャ~~ーーーー」背後でキンキンするような悲鳴が上がった。
先生も何やら大声で喚(わめ)いているが、振り返っている時間はない。
ドッド~~ンと近くに落雷が落ちたような衝撃音が響きわたった。
一瞬、怯(ひる)んだが、そのままあたしは構わず教室を飛び出し、廊下の窓から飛び降りた。
スカートが翻(ひるが)えるのが気にはなったが、この緊急時だ。誰も気にしちゃいね~さ。
また女子中学生たちが悲鳴をあげた。ゴキブリが出たのとはワケが違う。生きるか死ぬかの瀬戸際だ。も~教室中、パニック状態だ。
「ルン~~~!!」
背後であたしを呼ぶ声が聴こえた。だが、あたしは一目散に自転車置き場に駆けつけた。
何しろ一刻も早くあのバカの元へ行かなきゃなンね~ンだ。
梅雨(つゆ)の合い間、まとわりつくようなウットウしい雨雲は一切なく、青空には昼間だっていうのに、やけに月がハッキリ見えた。もちろん、月見をしてる余裕もなきゃ、ヒマもない。
何しろ緊急事態だ。
なのに、この切羽詰まった緊急時に、こっちから掛けてる緊急通報は繋がりゃ~しねー。
こんな時こそ、あのバカの出番だっていうのに・・・・
仕方なく、あたしはママチャリに飛び乗り、自宅の横須賀研究所へ向かった。
「やめんか~。そっちへ行くな~!!」用務員のオッちゃんが喚(わめ)いてる。そんな事、わかってるさ。忠告されるまでもない。
けど、ど~しても、あっちへ行かなきゃなんね~ンだよ。

思い出すだけで、ムカついてくる。
あのバカは事もあろうに、あたしに向かって、
「正義の味方だ!」ってホザいたンだ。いや、正確には、
「正義の味方代行業だ!!」って・・・・
けど、そんな細かい事はこの際、どっちだって構わね~。
代行だろうと正社員だろうと、ブッチャケ、正義の味方なら、贅沢(ぜいたく)は言ってらンね~!
何しろ東京湾から巨大怪獣が現れたンだ。
それも、横須賀に・・・・、
ズッズ~ンと五臓六腑(ごぞうろっぷ)まで響き渡る地響き。
悲鳴を上げて逃げ惑う人々。あたしはその間隙(かんげき)を縫(ぬ)ってママチャリを駆って突き進んだ。
信じられる~。巨大怪獣は、大体、首都東京に上陸するはずジャン。
何しろ、東京には都庁もあれば、東京タワーもある。
さらに、ごきげんな事にスカイツリーも新国立競技場も出来た。
そりゃ~、怪獣が暴れ回るには、もってこいのシチュエーションだ。
これみよがしに、スカイツリーをぶっ壊せば観客も盛り上がるってモンだ。
けど選(よ)りによって、なンだって横須賀くんだりに上陸するかね~。
普通、考えないでしょ。何がある。観客が喜びそうな巨大施設なんて・・・・
ロボットに変形する都庁もね~ンだ。
ペリーの記念館か、ソレイユの丘か。38階建ての新ランドマークタワー・横須賀リブレか。
言っちゃ~悪いが、巨大怪獣がぶっ壊すには、かなり小振(こぶ)りだ。
かように、緊急事態なんで、自己紹介は手短にしておく。
あたしは、横須賀研究所に住む横須賀みはルン。通称・ルンルン🎵
横須賀新成中学の2年生。ついでに、彼氏募集中。
趣味は・・・って、そんな呑気(のんき)にプロフィールを紹介してる時間はなかった。
何しろ、ついさっき、巨大怪獣は、ここ横須賀に上陸してきたンだ。
ったく、っで、あのバカの登場だ。
半年前、研究所に変てこな宇宙船で、研究所に突っ込んできた風変(ふうが)わりな真っ赤なモヒカン野郎!
自称、正義の味方代行業だと言うポンコツ・エイリアンだ。
ま、エイリアンって言っても肌が青かったり、メタリックな装(よそお)いで人間狩りを企画(くわだ)てるような危ないヤツじゃない・・・・。
もちろん、口から硫酸をまき散らすほど危険な事もしないのだが・・・・
一応、見た目は田舎(いなか)の暴走族風ヤンキー。
しかも真っ赤なモヒカンが嫌でも目につく。
万が一、街でアイツがナンパしてきてもソッコー、シカトしてるだろうけどね。
これまで、全くと言って良いほど使い物にならなかった、グダグダのポンコツヒーロー。
夏はクーラの効いた部屋でゴロゴロ、冬はコタツでゴロゴロと・・・
やってる事はテレビウォッチャーにゲーム三昧、売れない地下アイドルの追っかけと・・・・正義の味方と言う名のニートまっしぐら。
けど、今日こそ、アイツの出番だ。正義の味方ってヤツのね。

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