https://kakuyomu.jp/works/16818792439733010416/episodes/822139840537347925文久三年、年の暮れ。
旅籠の娘トミは突然、婚約を破談にされる。
理由はただ一つ。
高貴な公子の侍女として、隠れ家へ連れて行け”――藩からの命令だった。
泣き叫ぶ母。うなだれる父。
逆らえば一家が処罰される理不尽の中、
トミは家族を守るため、ひとり駕籠に乗る道を選ぶ。
辿り着いた先は、長府藩が密かに守る謎めいた隠れ家。
そこには春・夏・秋・冬と呼ばれる侍たちが潜んでいた。
彼らは皆、ある危険すぎる人物を匿っているという。
怒号が響く。
癇癪、暴れ、外出の命令――誰も逆らえぬ公子の声。
決して顔を見せるな。
決して問いただすな。
決して名前を名乗るな。
そう忠告されながらも、トミは逃げ場のない運命へと踏み込んでいく。
小雪舞う幕末の下関で、
町娘と、潜伏中の公子、そして四季の名を持つ侍たちの物語が始まる。