本当はこの作品、「5分で読める短編小説」として執筆しようと思ったのですがやめました。その代わり、近況ノートで載せたいと思います
タイトル「日記」
私の母は日記を毎日つける習慣があった。
私が覚えている限りだが母は私が幼い頃もずっと書いていたので
約23年以上書いていたことは見積もれる。
とある日、母は癌になった。
余命はそう長くないとのことだった。
私は一人っ子で、父は既に他界していた。
なので、私以外、母の見舞いに行ける人がいなかった。
ある日、私の仕事が大変長引いてしまって、
母の病院の面会時間に間に合わず、そのまま家に帰宅した日があった。
私は疲れていたこともあり、部屋の電気をつける気力もなく、
トボトボと木製の床を歩いていた。
すると、私の足はいきなり止まった。
止まったのは、母の部屋の前だった。
なぜかはわからないが、私の足は母の部屋に歩み寄ろうとしていた。
疲れ切っていたせいで、何も考えずにひたすら母の部屋に入ろうとしていた。
母の部屋には、クローゼット、ちゃぶ台、押入れくらいしかなかった。
私の視線は、ちゃぶ台に移った。そこには、ノートが置いてあった。
私の手はそれを取り、ページをめくる。
それは、日記であった。その日記は、2003年、つまり私が生まれた年から
始まっていた。
しばらく読み進めると、つい最近の日記が目に入った。
―私は癌になった。もう、あのこのそばにいられないかもしれない。
もっと生きたかった。花嫁姿を見たかったのに。―
そのようなことがここ何日も書かれていた。
めくっていくと、今までずっしり書いてあった日記が突然3,4行ほどの
文章に変わっていた。そこには、「ゆいこへ」と書いてあった。
なんだろうと思い、読む。
―このページを見ているということはちゃぶ台に置かれていたから見たのよね。
文章で申し訳ないけどごめんね。あなたがこれを見ているということは、私はもうこの世にはいないわ。今までありがとう。生まれてきてくれてありがとう。―
それだけ書いてあった。
私は涙が止まらなかった。母が私に連絡をしなかった理由はわかっている。
昔からそういう人だから。私は私宛の手紙にこう書いた。
―お母さんへ
今まで私を育ててくれてありがとう。―
そう書くと、なぜか母と繋がったような気がした。