• 現代ファンタジー

3期のあとがき

※これは他投稿サイトで6/2に投稿した活動報告です。





 こんにちは。ゆきかさねです。皆様お久しぶりです。

 執筆から三年半、和菓子屋たぬきつね第三期『勇者に捧げる咆哮』が本日無事完結致しました。かなりの期間を要したにも関わらず今作も最後まで読んでくださった皆様、ありがとうございます。
 思い返すと三年半本当にたくさんの事があったように思います。2019年当時の日記を見ると、体調不良などを理由に六年暮らした東京を離れ岡山の実家に戻ったのが丁度第三期の一話を投稿した頃でした。それからコロナ禍が始まり、兄夫婦が結婚し、モンスターハンターライズにのめり込み、十年ぶりにパソコンを新調し、大好きな数々の漫画作品が素晴らしい完結を迎え、半年前には姪が産まれて叔父になりました。
 最近また記憶力の低下を感じていますが、それでも体調は少しずつ少しずつ回復していっているように思いますので、今後も書ける限り本作の完結を目標に生きていきます。どうぞ長い目で引き続き私の作品にお付き合い下さい。





 …………。


 三年半も掛けた作品ですし、こんなあとがきだけでは味気ない気がしてきました。
 なので第三期で登場させたキャラクターの話なんかもここでしようかと思います。

 ※以下はネタバレを多く含むので、まだ読み終えてない方はお気をつけください。



 まず『勇者に捧げる咆哮』のメインキャラクターとして第三期で初登場した夜不寝リコ。『官舎ひづりとはどうあっても仲良くなれないが、それでも共通の視点を持ち、和菓子屋たぬきつね三期では大いに話の流れに関わって来る、ひづりと同年代の少女』を役割として作ったキャラでした。

 実は二期が完結する直前まで、三期で彼女を登場させる予定はありませんでした。そもそもキャラクターとして考えてすらいませんでした。三期は凍原坂春路、《フラウ》、《火庫》、この三人がメインキャラクターで、ですから三期の構想を練り始めた最初の頃は現在の半分以下の内容で完結する予定だったと記憶しています。
 ですがやはり三期執筆をするにあたって「二期の後に書くのがこんな短い話でいいんだろうか……?」という気持ちになり、急遽「凍原坂家と関わりのある、ひづりとは不仲のクラスメイト」と、更にそこから「ちよこが《めいどぱにっく☆る~む》で企てていたこと」を追加する事になり、一気に内容の密度が濃くなりました。書くのが一気に大変になりました。最初の頃それでちょっと後悔しましたが、今となっては「これで良かったな」と満足しています。

 ちなみに名前に関して、お察しの方もいらっしゃるかもしれませんが、官舎ひづりが「甘蔗」、味醂座アサカが「味醂」、奈三野ハナが「浪の花」と、綾里高校の生徒の名前は基本的に料理に関するもので決めていまして(綾里=りょうり=料理、ってことです)、夜不寝リコの苗字も「米酢」が元になっています。
 彼女の養父であり血縁上の伯父である夜不寝克の実家(夜不寝本家)が一族で病院を経営している、という設定は、この「夜不寝」という苗字を考えた際、「夜も眠らず患者たちを看病する医師の姿」を連想出来そうだな、と思ったところから決めました。

 『ひづりと真正面からぶつかる同年代のキャラクター』として作り上げたキャラクターでしたが、しかし「この二人はいわゆる『喧嘩ップル』みたいな関係にしてしまうと話が全くつまらないものになるだろうな」という気がしていましたので、「ひづりとリコは互いに出来れば話もしたくないくらい嫌い合っている、くらいの距離感にしよう」と決め、同級生、同じく妹という立場、職場の同僚、そして凍原坂たちの事を心配する者同士……といくつも共通項を持たせながらも、それでも『絶対に何があっても友達にはならない二人』として描く事にしました。二人には凍原坂や百合川といった共通の知人がこれからも居るわけですが、それでも『ひづりとリコが二人で遊びに行く』というようなイベントは、住む場所が離れる事とは関係なく、恐らく今後一生無いでしょう。



 次に、第三期四話でひづり達が明治大学へ赴いた際に登場した凍原坂の旧友、渡瀬奉文。実は彼も三期執筆時には考えていなかったキャラで、何なら三期四話を書き始めた時点でも居ませんでした。この回では『大学での凍原坂が普段どんな様子なのかをひづり達に軽口交じりに語る、凍原坂の同僚の中年男性』という脇役のキャラクターを出すつもりでいたのですが、しかし話の形を考えていくうちに「なんだかそれだとつまらないな……」と思い、濃い味付けのキャラを出したくなりました。
 その結果出来上がったのが、『酒と女にだらしなく、凍原坂に対してとんでもなく大きな感情を抱いていて、《火庫》の悩みについて何か知ってるかもしれない《妖怪の専門家》』である、この渡瀬奉文でした。『わがままで自分勝手で周りの人間関係を引っ掻き回す、作者にとって使い勝手のいいメタ的なキャラクター』である吉備ちよこが三期ではあまり出せない話の流れになっていたので、一時的に彼女の代わりとして渡瀬を登場させたのは正解だったと思っています。
 とはいえ、百合川もそうですが、《和菓子屋たぬきつね》を百合作品として書いている以上は登場させる男性キャラクターについても色々気を付けようと思っていましたから、『軽薄さを持たせつつも渡瀬の感情の根幹的な部分は常に凍原坂に対して向けられている』という部分は一貫させ、百合の間に挟まる事故だけは避けるよう安全運転しました。

 ついでに、渡瀬がやたらと凍原坂に固執している理由についてもここで書いておこうと思います。
 学生時代、好きだった女の子がどうやら凍原坂を好きらしい、との噂を耳にした事や、背が高くていつも女受けが良かった事などから、渡瀬は一方的に凍原坂に嫉妬していました。それから数年後、婚約者を亡くした凍原坂がある日突然「妖怪について教えて欲しい」なんて言って渡瀬を頼って来ます。大嫌いだった相手からいきなり自分の得意分野についての助力を切に求められた事で、この日から渡瀬の凍原坂に対する感情は酷くおかしなものになり、現在のような不思議な距離感が形成されていきました。渡瀬がヘテロセクシャルの男性でありながら凍原坂に対してだけは「もっと俺を大事にしろ」という恋人のような態度をとるのはこうした経緯によるものです。凍原坂が悪いです。

 ちなみに渡瀬は私が三期で一番気に入っていたキャラクターでした。以前ツイッターでも少し呟いたのですが、彼は三期を書くうえでの大きなモチベーションで、彼を登場させるたびにわくわくしていました。様子のおかしい中年男性を書くのは本当にとても楽しく、今のところ予定は無いですが、出来れば何かの機会にまた登場させたいと思っています。




 キャラクターの裏設定など書き出そうとするといくらでも書いてしまいそうなので、今回はこの辺りで終わりにしようと思います。


 ここからは次作、《和菓子屋たぬきつね》四期についてお話しします。

 最終話を読んで頂いた通り、三期は《和菓子屋たぬきつね》で初めて次期へと繋ぐ終わり方をしました。

 新たに登場した《魔女》のロミアと、《保守派》を名乗る《天使》、《イオフィエル》。
 そして天井花イナリが途中まで言いかけた、ひづりの《紫陽花の様な防衛魔法陣術式》。

 四期では主軸になるテーマと並行して、これらのキャラクターや要素についても重要になっていきます。

 ただ四期はまだ細かい構想が決まっていないのと、三期完結を機に書きたいと思っていた別の小説が二つほどあるため、四期のスタートは少しばかり遅くなるかもしれません。それでも出来る限り急いで形にしていこうとは思っていますので、今後も投稿サイトや活動報告やツイッター等をチェックして頂ければと思います。


 ではあとがきもこの辺りで。雑多な書き散らしになってしまいましたが、皆様にとって三期を読んだ後のちょっとした余韻になれば幸いです。

 改めてもう一度、《和菓子屋たぬきつね》三期を読んでくださった皆様、ありがとうございました。
 また文字でお会いしましょう。ゆきかさねでした。



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