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ホタテの小噺

 近況ノートをお読みいただき、厚く御礼のほど申し上げます。皆様いかがお過ごしでしょうか。

 昨今、猛威を振るっている、ウィルスなんかもございますが。皆々様の頑張りのおかげさまで、少しずつでも収束に向かっているようでございます。
 持病をお持ちの方やお年を召した方は大層危ないんだそうでございます。命に関わる事でございますからねぇ。さらに、咳だの熱だの、症状が出るまでに2週間かかるんだそうでございます。自覚症状のないまま、知らず知らずに周りに移してしまうってのが、また恐ろしいところでございますけども。
 自然界のものというのは、全く侮れないものです。軽く見てはいけませんね、痛感致しました。
 
 先日、わたくしも身近でも自然のもの凄さというものを鼻で感じました。肌ではないんですよ、打ちミスではございません。
 別に、病気だぁ何だと命に関わるようなものではないんでございますがね。

 会社の帰り際にホタテを頂きました。ありがたいことに採れたてでして、帰宅してすぐ、砂抜きをいたしました。家事だ炊事だのをしている間に、ホタテも噛み飽きたのか砂をペッペと吐きまして。二、三時間が経ち、さぁ取り出して貝殻を洗っていますと、まぁすごい臭いがするんですよ。磯と生臭さが入り混じったような。あまり好き好んで嗅いでいたくはないですな。嫌いな奴に嗅がせるにはもってこいですけどもね。
 採れたてのいただき物ですので、ありがたいとは思いつつ、一通りの下ごしらえを終えますと、夜も更けていましたので、その日は床に就きました。
 しかしながら、これがなかなか寝付けないんですよ。台所はもちろんでございますが、家中がひどく生臭いんです。臭い消しや換気には気を付けたんですが、風呂、茶の間、寝床、果ては戸を閉めていた便所に至るまで。これで便所の芳香剤いらなくなったぁ、なんて馬鹿を言っちゃいけませんがね。
 一人で食べるには十分すぎるくらいはございましたが、こんな量でも家中、しかも翌日いっぱいまで臭うとは、自然のものはなかなか侮れないと、鼻で感じました。

 こんな時、配送やなんかでお客様が来ようものなら、勘違いされますよ。
「なんか。そこいらじゅう生ぐせぇな。お前さん、貝殻ん中にでも住んでんのか」
「人をカタツムリかヤドカリみたいに言いやがって。まぁ、そう言われても仕方ねぇやな。宣言が解除されたとはいっても、こっちはずっと、籠って生活してんだ」

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