春は素晴らしい。 鼻孔をくすぐる沈丁花の香りに弾む君の笑顔を、桜が讃える。 夏が待ち遠しい。 僕の名を呼ぶ君の声に、蝉時雨も蚊帳の外へと消える。 秋が待ちきれない。茜色の空を眺める君は灯火のように儚く、美しい。 冬は 「お前、何気持ち悪い文章書いてんの?」 はんじょう!? え、どうして?いつの間に? 「いや、ここ楽屋だろ。台本読んでんのかと思ったら気持ち悪りぃ。春だの夏だの、お前引きこもってるから分かんねえだろ。」 はんじょう、それは文学に対する冒涜だよ。 「好きな子でも出来たのかよ。」 そ、それは。 「まぁいいや。ほら、リハーサルの時間だから行くぞ。」 楽屋から去る背中に言葉は出ず、溜め息と共に紙は丸めて窓から投げ捨てた。 春風に乗り紙屑は青空を舞う。 2人の恋の行方は、捨てられた紙屑はどこへ向かうのか。 おにやの本当の気持ちを唯一知る紙屑にもその行方は分からない。 冬は忘れない。はんじょう、君が産まれた季節だ。
とある尊敬する御大が、この世を去ってからもう5年の月日が過ぎました。 先日、その作家様が残した架空の戦記を本当に久しぶりに読みました。 御大の作品と初めて出会ったのは、若いというより幼いほんの子供の頃。 歳を取り、改めて読んでみるとまた違う物が見えてくるものです。 気がつくと、自分でも何か書いてみたいと思うようになっていました。
小説を読むのが好きすぎて、ついに書く側にまで回ってしまった人間です。「きのめ」って読みます。 『聖騎士になったけど団長のおっぱいが凄すぎて心が清められない』にて書籍化デビューすることができました。 勘違いもの、一途な恋愛ものが特に大好物ですが、どうぞよろしくお願いいたします。